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しゃどやま
2024-12-30 23:25:45
3738文字
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ドカメンCPなしSSまとめ
リプでお題セリフをいただいたやつです。
タワエン(高塔兄弟)
ジャスラ(しおんくんと蒲生慈玄)
スラデ(ランスとQ)
マドガ(阿形と為士)
雨竜「兄さん、次はテニスで勝負です!」
雨竜は盤面を覗いたまま硬直する。将棋の駒は数が既に少ないのに、動ける場所が少なすぎる。将棋盤の向こうに座った戴天は、ゆったりと微笑みながら雨竜を見ていた。雨竜の玉将はどちらにも逃げられず、戴天の王将は堅牢に守られている。
背筋を伸ばす。息を吐いて、深々と頭を下げた。
「
……
参りました」
「当機立断。正しい判断です」
戴天は満足気に目を細める。そして、自軍の駒を一つ手に取り裏返す。
「雨竜くんが急に「将棋で勝負がしたい」というので驚きました。いまの君では、私に勝つことは難しいですよ」
裏返した駒には、竜王の文字が黒ぐろと彫り込まれていた。
「しかし、勉強するのはいいことです。これからも精進してください」
「はい
……
」
雨竜は顔を上げる。握りしめた拳を膝に置き、真っ直ぐ戴天の顔を見た。
「兄さん、次はテニスで勝負です!」
「は?」
戴天は即座に時計を確認する。雨竜は戴天が二の句を告げる前に手帳を取り出し見せつけた。
「ウオーミングアップ、着替え、シャワーその他準備の時間を含めても問題ありません! 一試合ならいい気分転換になるかと思います」
「
……
それなら構いませんが
……
雨竜くん、いったい何を考えているのですか?」
雨竜の真剣な顔に、戴天は問いかける。突然理由無く遊びに誘うような少年ではないと、戴天は信じていた。雨竜は変わらない真っ直ぐさで言う。
「兄弟は喧嘩していくうちに仲を深めるものだと、先日読んだ本にありました。僕たちはもっと対話をする必要があると思います」
「どんな本を
……
いえ、そうですね」
戴天は眉間を揉む。覚悟を決めると、将棋の駒を片付けながら笑った。
「ふふ。兄として、打ちのめしてさしあげます」
雨竜は目を輝かせる。負けません、と頷いた。
おしまい。
深水「え、でも美味しいよね?」
「今日は豆腐のお鍋にするね」
そう深水が言った時、俺は気を引き締めた。鍋をやるのならば、気合をいれなければならない。
――
鍋奉行になりすぎないように。
以前から伊織に「鍋奉行が出た!」などとからかわれていた。なにより、深水は料理をするのが好きだ。あまり口を出されすぎるのも、気を病むだろう。俺だって趣味の読書をしている時にあれを読めこれを読めと口に出されては気分が良くない。
料理を作ってくれる深水に感謝しつつ、ありのままをいただく。無我の境地に至るべきだ。かの伊達政宗公は「朝夕の食事はうまからずともほめて食うべし」という言葉を遺している。深水の料理に不満はないのはもちろんだが、受け止める度量を鍛えるべきだ。
「できたよー」
深水が台所から声を上げる。鍋敷きを持ってやってくる。俺は立ち上がり、二人分の食器とポン酢を配膳する。深水は小さく首をかしげる。
「このお鍋にはポン酢かな? 醤油ベースでもいいかも」
「ん? いつもと違うのか?」
俺はポン酢と土鍋を見比べる。変わった鍋ではない。タジン鍋やジンギスカン鍋ではなかった。
「とりあえず見てみて欲しいな」
嬉しそうに微笑み、ミトンで鍋の蓋を掴んであける。ふんわりと昆布出汁の香りのする湯気が立ち上った。
「
……
は?」
そこには真っ白な液体があった。なめらかな乳白色で、表面が微かに揺れている。鍋と聞いてイメージする白菜や椎茸の存在は無い。湯豆腐にしても、こんな鍋いっぱいの巨大な豆腐は買っていないはずだ。
「えっと
……
重曹豆腐鍋だよ。重曹をいれると豆腐がトロトロに溶けるんだ」
深水は少し心配そうに説明する。俺は目を丸くしたまま訊ねた。
「重曹? あの掃除に使っている
……
?」
「食用のものだから心配しないで! トッピングに味の濃い肉味噌も作ったから、ご飯も進むと思う!」
「いや
……
これは
……
変わった鍋だな」
脳内の武将が言う。「朝夕の食事はうまからずともほめて食うべし」。今、その心が試されている。
背筋を伸ばして座り直し、おたまで掬う。どぅるん、と豆腐の塊を感じた。角は無く、ほろほろと溶けている。なんなんだこいつは。椀に控えめによそい、ポン酢を軽くかける。
「いただきます」
「
……
いただきます」
深水は躊躇なくレンゲで口に運ぶ。目を輝かせた。
「うん! ちょっと煮すぎたかもって思ったけど、口当たりが面白くていいね! お出汁の味と豆の味が感じられて美味しい!」
キムチなんかも合うかも、と言いながら立ち上がる。冷蔵庫の常備菜を確認するつもりだ。
「深水
……
これは成功してるのか?」
威圧的にならないよう、言葉を選ぶ。
「どうもこう
……
形が無いが」
俺は恐る恐る豆腐を掬う。口に運ぶ。深水は振り返った。
「え、でも美味しいよね?」
口の中で上品に、滋味のある豆腐がとろける。昆布出汁の旨味が、いつもよりしっかりと感じられた。ポン酢の酸味に負けないまろやかな味わいが舌の上に広がる。
「
……
うまい」
おしまい。
ランス「一体誰がこんな酷いことを
……
」
「一体誰がこんな酷いことを
……
」
ランスは慄きながら、ピザ生地を伸ばすために愛用している麺棒を手に取った。
左右に伸びた持ち手が、ラメの入ったシールや模様入りのマスキングテープで愛らしく飾られている。銀のモールで巻かれている様は、まるでクリスマスプレゼントだ。
「まぁ
……
Qに違いないけど」
ランスは眉間を揉む。酔っ払った静流は、ここまで手の込んだ真似をしない。せいぜい何かしようとして取り出して別な所に置いて、忘れるぐらいだ。ルーイが台所に入るのはお湯を沸かす時ぐらいで、そもそも麺棒の場所すら知らないだろう。完全に証明された。
「わざわざこんなシールを買ってきて
……
イタズラには本気だな」
ランスはぼやくと、麺棒を手に取る。銀のモールをほどいて、麺棒を解放していく。
星形の、偏光ラメのシール。傾けるとピンクが緑に変わる。ランスは尖った部分に爪を立てて剥がす。容易にぺろりと剥がれた。
次はハート型のシールだ。これは紙が麺棒に残ってしまうタイプのシールで、慎重に剥がしても白く跡が残った。ああもう、とつぶやく。
無心で剥がす。一体化したそれを別個体にしていく。AとBに分けていく。「飾られた麺棒」を「飾り」と「麺棒」に分別させていく。
ランスはシールの跡がべっとりと残った麺棒を、水に漬けた。
「えっ? キレイに剥がされてるんだけど! 置き手紙とかも無いし!」
Qは台所に飛び込んで、麺棒を見つけて絶句する。きちんと、新品のように美しい麺棒が乾かされていた。
「おはよ、Q。ピザあるからレンチンしな」
静流が台所を覗き込む。
「ランスがピザ作ったんでしょ? なんか
……
驚いた声とかなかったの? ボクへの恨み言とか」
「どうだろ。聞いてなかったな」
静流は首をひねる。嘘をついているようには見えなかった。
「無反応がいちばんムカつく!」
Qは拳を握って叫ぶ。
台所の屑籠には、輝くシールが捨てられていた。
おしまい。
阿形「ほとんど紐じゃないか!」
「ほとんど紐じゃないか!」
阿形は叫んだ。上半身裸で、豊かな筋肉をあらわにしながら。筋トレの後の汗が光っている。
目の前にあるのは、一抱えもある木箱だった。阿形によって開けられた木箱には、赤や白、黒の太い縄や細い紐が入っている。
「ほとんどではない。全て紐と縄だ」
神威は平然と箱に手を入れ、コンクリートの床に中身を分別しだす。色と紐の太さで美しいグラデーションを作り始める。
「俺の信奉者を名乗る男が渡してきてな
……
受け取る価値もないかと思ったが新たな着想の素になりそうなので受け取ってやった」
「そうか
……
まぁ、頑張れよ」
阿形は頷き、タンクトップを手に取る。着替えの途中だった。
「何をしている、阿形氏。これからの作業には阿形氏の存在が欠かせないのだぞ」
「は?」
神威は赤い縄を選び取ると、うっとりと撫でる。頬を染めた。
「見ろ、この丁寧になめされた縄を! 俺を縛るのにふさわしい
……
!」
神威はブツブツと呟きながら体に巻きつけ構図を決める。手際良く縛り始めた。
「お、おい! あぶないぞ!」
「芸術には危険が付き物だ、命を燃やし血で描いている!」
数分後には、体を自縛した神威が転がっていた。阿形にも手伝えと頼み、手首足首も縛られている。黒く細い肉体に赤い縄が絡みつく様は、絵に描いたような非現実感だ。
「これだ
……
! この囚われた美の被虐的な背徳感! かつ羽ばたくことを諦めない非服従の精神! アンビバレンツを内包する縛られた肉体
……
!」
「満足か
……
?」
阿形はすっかり汗の引いた体で神威を見下ろす。神威は激しく仰け反った。
「まだだ! 写真を撮ってくれ阿形氏!」
「そうか、自分からは見えないか」
阿形は上着のポケットからスマートフォンを取り出す。神威は嬉しげに頷くと、苦悶の表情を作る。目を伏せ、睨み上げる。彼なりのストーリーができているらしい。
「あらゆる角度から頼むぞ!」
「はいはい」
おしまい。
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