三毛田
2024-12-29 12:33:54
1075文字
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56 056. 水しぶきの向こうで

56日目
君が別人に見えた

「丹恒との待ち合わせって、ここだっけ?」
「あの噴水のところ! 穹、急ごう!」
「なの。走ると、飲み物零すぞ~」
 俺の言葉に、なのは走り出そうとしたのを思いとどまり。
 だけど、早歩きに噴水の方へ。
「穹、これ持ってて!」
「おわっ。急に何だよ」
 噴水の前にたどり着くと、彼女は持っていた飲み物を俺に押し付け。
 そして、カメラを構えて写真を撮っていく。
「でっか」
 遠くからでも目立っていた噴水は、近くによるとその大きさに圧倒され。
 思わずそんな声が漏れた。
「大きい~! ってか、噴水のこの彫刻とかもすごい!」
「三月、はしゃぎすぎだ」
 水が大きく噴き上げ、落ちていき。たまっていた水へ落ちて水しぶきが上がる。
 その向こう側、呆れたような表情の丹恒が現れて。
「ん?」
 一瞬だけ、彼の姿が飲月に見えた。
「だって、こんな大きな噴水初めてだもん!」
「この街のシンボルだという話を聞いた。ここ出身の芸術家が彫って、デザイナーが設計したらしい」
「丹恒詳しいね」
「お前たちがなかなか来ないから、観光ガイドを買って読んでいた」
 丹恒らしいなぁ。と思いながら、二人に歩み寄る。
「なの、俺が転ぶとお前の飲み物噴水に放り投げそうだから、もう自分で持って」
「ごめん! 持ってくれてありがとう」
 カメラをしまうと、なのは慌てたように俺から飲み物を受け取って。
「はい。丹恒の分」
「ありがとう」
「少し冷めちゃったけど、大丈夫か?」
「ああ。これくらいなら、飲みやすい」
 口を開け、一口飲んでからほっとした表情。
「ご飯も買ってきたから、食べちゃおう。丹恒もおなかすいただろ?」
「そうだな。ちょっと待て」
 俺に飲み物を押し付け、彼はベンチにハンカチを三枚置く。
 どうしてそんなことをするのか。というより、なんで三枚も持ってるんだよ。という疑問が先に沸いた。
「これで良し。穹、いきなり押し付けてすまなかった」
「ううん。これ、なんで?」
「服が汚れないように、だな。いらなければ、どかして構わない」
「丹恒、さすがだね……穹の恋人じゃなかったらウチでも惚れてたよ」
「そうか。食事にするのだろう?」
「うん! 穹、出して!」
「はいはい」
 中身の違うバゲットサンドを紙袋から取り出し、なのと丹恒に渡す。
「いただきまーす! んん~! 美味しい!」
「いただきます。ん。確かに、美味いな」
 一口ずつかじりつき、美味しいと口にして。
「いただきます。うん。流石俺」
「穹、一口」
「じゃあ、丹恒のもちょうだい」
 と、交換。