Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
雪成はす子
2024-12-28 21:59:13
2003文字
Public
💛関連
その男は今、革命軍にいる
ハートのワンドロワンライ、テーマ「髪」という事で🐬がジャンバールの髪を切る話
タイトルがほぼネタバレなのですがどうかお気になさらず
誕生日並びで個人的に好きなコンビです✨
無断転載・AI学習・コピペ・自作発言禁止Repost is prohibited
「よっ
……
っと」
ガシャ、と梯子を降ろし、てきぱきと組み立てていく。梯子を上り、俺の髪を俺用の櫛で梳いていくその手際は鮮やかなものだ。俺用の櫛はシャチには大きいだろうに、それでも普段の櫛と変わらぬ手つきで扱う手腕は大したものだと思う。
「それじゃ、長さを整える感じでいい?」
「ああ、お前に任せる」
「オッケー。じゃ、とびきり男前に仕立ててやるからな!」
「それは楽しみだ」
鋏を取り出し、シャチはシャキシャキと子気味の良い音を立てながら俺の髪に鋏を入れた。リズミカルな音は耳に心地良く、シャチに散髪されている間にうたた寝をしてしまうクルーが多いのも頷ける。
俺の体は他のクルーより大きい分、カットの手間も数倍かかる筈だ。それでも俺の申し出に快諾してくれたシャチには感謝しかない。鋏を動かしながら、シャチはふんふんと鼻唄を歌っていた。シャチの様子は見えないが、その鼻唄からはとても楽しそうな様子が伝わってくる。
「楽しそうだな、シャチ」
「楽しいよ。正直、俺の天職だとは思うし。ま、海賊稼業も悪くねえけど、やっぱ俺の手でカッコ良くなったり美人になったりしていくのを見てくのって気持ちいいじゃん?」
「そういうものか?」
「そういうモンだよ、俺にとっては。でもジャンバールってさ、最初にあった時もそんなに見苦しい髪型してなかったよね」
なんで? とシャチが首を傾げる。確かに、あの天竜人が奴隷の為に髪結いを雇うような真似をしないのは確かだ。シャチはそこを指摘してるのだろう。
「
……
奴隷仲間に、かつて髪結いを生業としていたという男がいてな。奴隷たちの髪はその男が切っていた。その男は女の奴隷をより美しくする技術に長けていたからか、天竜人の間をうまく立ち回ってギリギリ奴隷の中では過酷な肉体労働は免れていたな。まあ、他の奴隷より多少は労働の負担が少ないという程度だったが」
「そんな奴いるんだぁ。でも案外、どんな場所でも上手く立ち回れる奴って見かけるよな。要領がいいっつーか」
「無論、彼があくまでも奴隷だったのは変わりはないし、過酷な労働は免れていたとしても万が一女奴隷の髪型が天竜人の気に召さなければ鞭で打たれる事もあった。それでも腕だけは傷つけられなかった」
「なかなかやるなぁ、ソイツ」
ヒュウ、とシャチが口笛を吹く。
「恐らく今も生き延びているとは思うが
……
今は、知る由もないな」
誰にともなく、呟く。あの日、天竜人の乗り物として連れ出されたのは本当に僥倖だった。
あの日、あのヒューマンショップで俺を含めた大勢の奴隷が解放された。だが、あの日マリージョアに残っていた奴隷の方が多いのも事実。助けられたのは、あくまで偶然が積み重ねられた結果でしかない。
あの男はきっと、今でもあの地獄にいるだろう
―――
そこまで考えてふと、俺の前に回って前髪を整えているシャチに目が行った。
「どしたの? あ、前髪あんまり弄らない方がいい?」
「いや、話してて思い出したのだが
……
その男。まるでお前のような男だったな」
「
―――
へ!?」
素っ頓狂な声を上げて、シャチは鋏を落としそうになった。慌てて鋏を握り直し、シャチはえっと、と続ける。
「それって、俺に似てたって事?」
「容姿は似てないが、纏う雰囲気が少し似ている。仮にお前があの場にいたとしたら、お前もあの男のように立ち回っていたのかもしれないな」
「そうかなぁ、俺はそこまで上手く立ち回れねえ気がするけど」
「その場の空気を呼んで、最善を選ぶことができる聡さがお前にはある。似てると評したのは、そういう部分だ」
「買い被りすぎだって。それに、俺はそこまで頭良くねえよ」
長さを整えながら、シャチはナイナイとばかりに手を振った。最後に顎下に回り、髭を整えていく。
切った髪を落とし、ケープを外してシャチは梯子を下りた。
「完成~! うん、最高に男前になったぜ!!」
「ああ、ありがとう」
シャチの背丈ほどに
堆
うずたか
く積まれた髪を纏めていく。シャチが持ってきた姿見を見れば、すっきりと短く髪を整えられた自分が映っていた。俺のように大きな者相手でも、やはりシャチは手際が良い。
「ありがとう。幾分か頭が軽くなった」
「いいって事よ。いやあ、我ながら最高の男前にできたぜ!」
ぐっと親指を立てて俺に向ける。その様に、はは、とつい笑いが込み上げてきた。
やっぱり似てるな、あの男に。
そう言おうとして、止めた。似ているが、シャチはあの男じゃない。シャチは奴隷になった事は無いのだから。
ふと、遠くの空を見つめる。マリージョアのあった方角には、見渡す限りの空と海しかない。
ここからかの地の様子を伺う事はできないが、せめてと願わずにはいられない。
偶然の幸運に辿り着けた自分が言える事ではないが、それでも。
どうか、何処かで逃げ延びて生きていて欲しいと願う。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内