三毛田
2024-12-26 17:09:54
1090文字
Public 1000字2
 

53 053. 贖罪の花

53日目 手向けの花を

 それは、何に対する、誰に対するものか。
 目の前で救えなかった者たち。
 俺のせいで犠牲になってしまった、無辜の民。
 どれだけ贖罪しようとも、起きてしまった過去は変えられず。
 死を受け止めることも許されず、ただ前へ進むのみ。
 忘れたことはない。忘れたくとも、忘れられず。
「うーん……丹恒がそうしたいなら、それでいいとは思う」
「そうか」
「でも、無理に全部背負う必要はないと俺は思うんだ」
 そんな穹の言葉が染み込むまで、かなりの時間を要した。
 俺の周囲は、それを許さなかったから。
 前世の罪を、俺が償うのは当たり前だと。
 償わなければいけないと押し付けてきた。
 自分たちは、転生したら前世の罪をなかったことにするのに。
 そんな思いもあって、怒りも込めて槍を投げた。多分。
「お前が背負おうとしてるもの、俺も少し持つから」
「いや」
「刃に追いかけられていたとき、巻き込んでしまった人たちのことを背負うなら、俺も貰う。これなら、どうだ?」
 お前と出会う前のことなのに。
 そう答えたかったのに、口の中が乾いて上手く言葉にできなくて。
「仲間なんだ。それに、俺は丹恒が好きだ。好きな人が背負いすぎて倒れるくらいなら、一緒に背負いたい。駄目?」
「わから、ない」
 きっと、これが一番近い。
 わからないのだ。
 何が正しくて、間違っているのかも。
「じゃあ、少しずつ知っていこう。その為には、俺がどれだけ丹恒を好きなのか、教えるから」
 手を繋ぎ、抱きしめられ、頬や指先にキスをされ。
 じんわりと、穹からの好意に染められていく。
「好き」
 そう言ってもらえるのが当たり前になっていき、気づけば
「穹、好きだ」
 想いをを返せるようになっていた。
「嬉しい」
 指先が頬を撫で、唇を撫で。
 それから、そっと口づけられる。
 熱い。
 彼の熱で溶けてしまいそうだ。
「丹恒、顔真っ赤」
「お前も赤いだろう」
「本当だ。勝手にキスしたけど、平気?」
「ああ」
「嫌じゃない?」
「嫌じゃない」
「嬉しい」
 首を横に振ると、またキスされた。
「花を手向けたい」
「何処に?」
「列車に乗る前、巻き込んでしまった人々のために」
「場所は覚えてる?」
 頷く。
 当然だが、アンカーを設置しているわけではないから行くのは大変だ。
 それでも、花を手向けることで少しでも心が軽くなるのならと、穹は付き合ってくれて。
「ありがとう」
「どういたしまして。せっかくだから、観光して帰ろう」
「構わない」
 差し出された手を、そっと握る。
 少しは前に進めるだろう。