ちよど
2024-12-25 21:50:28
828文字
Public ビマヨダ
 

枝下の約束

ビマヨダ アドベントカレンダー企画に参加させていただいたもの。クリスマスのビマヨダ

 シャンシャンシャーン、シャンシャンシャーン。 
 定番の音楽が通りに流れていた。華やかにクリスマスに彩られた街はプレゼントで溢れている。
 両手一杯の荷物と軽やかな音楽に背中を押されるような心地がするが、ビーマはあえてゆっくりと歩いていた。
 それは隣を歩くドゥリーヨダナのためである。
 ビーマと違って荷物を持たないドゥリーヨダナの歩行は速くはない。出会った当初はともかく今ではビーマはそれが足が悪いためだと知っている。しかし気遣うとドゥリーヨダナが烈火のごとく怒るため荷物が重いふりをしているのだ。
 それだけでなく。恋人同士になったとはいえ、外聞を気にする恥ずかしがり屋の恋人とこうやって出かける機会はめったになく少しでもこの時間を引き伸ばしたいという欲もあった。
 そんな願いでドゥリーヨダナの横顔を見ていたビーマは彼が立ち止まったのでその足を止めた。
 ドゥリーヨダナが上を向く。そこには葉が落ちた木が枝を伸ばしていた。
「バンダだ」
 懐かしい故国の言葉。枯れた枝から生える緑の葉にビーマは心得てドゥリーヨダナに顔を寄せる。
 その気配を感じたのだろう、振り向いたドゥリーヨダナとビーマの唇が重なった。
 軽い口づけをして、離れたビーマにドゥリーヨダナが眉をぎゅっと寄せる。
「なんのつもりだ」
「キスして欲しかったんだろ」
 直接的に言わずにわざわざ故国の言葉を口にしたドゥリーヨダナは顔をしかめて前を向いた。
「──普段は察しが悪いくせに」
 薄く頬を染めたドゥリーヨダナがずんずんと歩き出す。その背中をゆっくりと追いかけながらビーマは笑った。
 バンダは日本語で宿り木と呼ばれている。宿り木の下で恋人同士がキスを交わすと結婚の約束をしたことになるという。
 もちろん、ちゃんとしたプロポーズはするつもりだが受け取ってくれる意思があると確認出来たのはありがたい。
 ビーマの荷物の中でドゥリーヨダナ好みの豪華な指輪がことりと揺れた。


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