花雲
2023-04-02 21:00:02
1195文字
Public 高銀
 

ふぬけた面もさらし合おうぜ

短いお花見の話。完結後高銀+ヅラ+ずや。

「飲みすぎないでくださいよー?」
社長からのありがたい忠告に、銀時は気だるく返事した。神楽は定春とともに桜並木をお散歩中だ。花びらを拾い集めては空に放ち、桜吹雪を楽しんでいた。
「銀ちゃーん見て見て! こんなに空中キャッチできたヨ!」
駆け寄ってくるや否や、手のひらに溜めてきた桜を銀時の頭上に降らせる。
何枚かはふわふわの銀髪に絡まって残ったようだ。
「おー、すげぇすげぇ。周りの奴らまで巻き込まねぇようになー」
あいあいさー!!と元気よく走っていく後ろ姿を見送りながら、銀時はほとんど空になった酒瓶を抱え寝転がる。見上げてみれば、青い空を背景に桜が生き生きと咲き誇っていた。花見日和だなぁ。自然とこぼれた声に、隣で杯を傾けている男が応える。
「あァ、綺麗だな。」
春の陽だまりのようにたおやかな視線は、案の定銀時に向けられていた。
胸やけしそうなその眼差しに、桂の表情は歪む。
「ハァ~…… 今日くらいは見逃してやるか
「誰もテメェは呼んでねェんだがな」
「そうやってすぐ除け者にする! お前達は昔から本当にもー!」
即座に不快そうに言い返す高杉。どうにか宥めようとする新八。
いつも通りの、騒がしい応酬が始まった。
「ふふっ」
眠りかけていた銀時が小さく笑った。なじり合っていた高杉と桂は一時休戦する。
眠たげな目を3人に向けてはいるが、微妙に視線が合わない。その意図をしりたくて、銀時が口を開くのを待った。
高杉コイツがたッかい酒を持ってきたんだ、飲み尽くすぞォ銀時!」
「テメェは黙ってろ。どうした?銀時」
返答しようと開かれた口が、迷うように動きを止める。
今更こんなこと、言っていいのだろうか。それは己の願望に過ぎないと、言うまでもなく解っていた。それでも、今だからこそ、ここでなら良いのかもしれない。
短い逡巡の末、再びふにゃりと口元がゆるんだ。
寝ぼけているのか、高杉がそう尋ねかけたところで、ゆるゆると手が動き始める。
酔った勢いも借りながら伸ばした指がさし示したのは、幼馴染2人のあいだだった。

「 ……いまなぁ そこに、松陽がいたよ 」

2人は無言で後ろを振り返る。当然ながら、そこには誰もいなかった。
「 やっと飲めたなぁ 」
そう囁いた銀時は、幼い子供のようにやわらかく微笑んでいた。
どこか懐かしいその表情に、ちくりと胸が痛む。
寝そべったまま、緩やかに2回まばたきをする。再び目と目が出逢ったとき、それは一変していた。とろけそうだった彼の瞳は、一瞬で確かな煌めきを取り戻したのだ。凛とした芯のあるまなこが2人を捕らえて放さない。
先程とは違う、明瞭な口調で問いかけられる。

「長生きすんのも、悪かねぇだろ?」

そのまっすぐな眼差しに、少しだけ息をのんだ。
けれど、もう否定する理由なんぞありはしない。
2人の答えは、ひとつだけだった。


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