バラ肉
2024-12-25 20:41:53
3377文字
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いいこのプレゼント【テリスグ】

スグとテリーが子供時代、クリスマスに出会っていたら…


運命的な話が好きです。
すぐの子供時代の悲惨さは考えると泣きそうになります。だからこそ、きっと幸せな記憶を持ってほしくて……な妄想。

テリーがちょろいです。

「良いな」

目の前でプレゼントを渡される子供の姿を見て、スグルは知らないうちにそう呟いていた。



*****



いつもは一人寂しく過ごすクリスマス当日。
しかし今年は『近くの大通りで盛大にイルミネーションを行う』と聞いた彼は、まあ折角だし、そう言い訳をして会場へと足を運んでいた。
たまには自分だって楽しいイベントに参加しても良いだろう。
そんな単純な好奇心が、普段は重い足を動かした。
しかし———それが間違いだと気付くのに、そう時間はかからなかった。

イルミネーションは確かに綺麗ではあったが、それ以上に集まった人々は楽し気で、賑やかで。家族連れやカップルの中、一人見窄らしい格好をした子供は場違いにもほどがあった。
挙げ句の果てには、自分と同年代の子供が両親に囲まれ、楽しげに笑い合っている姿まで見せつけられるなんて。
それは孤独を生きる彼には余りにも遠い存在で。
余りにも暖かそうで。
堪らず、ギュッと拳を握った。

(来なきゃ良かった)
そう思って、踵を返そうとしたとき。



「おいおい、そんなに寂しそうな顔をしなくても、良い子にはちゃんとプレゼントは貰えるゼ?」

不意に聞こえた声に、弾かれたように顔が上がった。まさか、誰かに話しかけられるなんて。
いつもは遠目で笑われることが多い分、直接掛かった言葉に驚きを隠せない。
ましてや、こんな自分だけが取り残されたような明るい場所だ。

「だれ?」

恐る恐る声の主を探すと、「やあ」という明るい声がその居場所を知らせてくれる。
「あっ……
いつから居たのか。思ったより近くに立っていた少年に、スグルは目をパチパチと瞬かせた。
イルミネーションの光を浴びてキラキラ輝く金色の髪は、まるでツリーの上のお星様みたいだ。慣れない色に思わず見惚れてしまう。
このイルミネーションの噂を聞きつけやってきたのか。
名も顔も知らない彼は、きっと見た目からしてどこかの国から来た観光客の一人だろう。

それにしても……スグルにこんな優しい声を向ける人間は珍しい。
見た目はもとより、公園で一人寂しく過ごしてきた彼にこんな温かい微笑みをくれる人は滅多にいない。向けられるのはいつだって嘲笑か憐れみと相場が決まっていた。
だからか、拙い日本語が彼の心に不思議と響いた。

……だったら、いいな」
小さく呟いた声は、まるで空から降る粉雪よりも頼りなく。しかし、臆病な彼にとっては精一杯勇気を込めた返事だったはずだ。
だって、“良い子”なんて自分から思ったことは一度もないのだ。

一方、そんなスグルの気持ちに気づいたのか。

「Hey! そんな弱気じゃダメだ! ちゃんと自分は良い子だって胸を張らなくちゃ!」
でないと、プレゼントが逃げても知らないぞ?

もっと自信を持って! そうウィンクすると、目の前の少年は手早く自分の巻いていたマフラーを外した。そしてそのまま、今度はなぜかスグルの首へとグルグル巻きだす。

「なっ、ええ!?」

数秒後には、顔の半分がマフラーに埋もれていた。突然何を! 慌てて問い返す前に金髪の少年はさも誇らし気に口角を上げて見せる。

「ハハッ! オレは良い子だからな。寒そうなBOYに温かさのお裾分けぐらい、なんてことないのさ!」
言いながら、急に寂しくなった己の首元を誤魔化すよう肩をすくめる。どんなに空が明るくても今宵は雪夜だ。寒いのは分かりきっている。

「それに今日はクリスマスだ。『大切なものを誰かと分かち合うと幸せになれる』って、聞いたことがある」

ニコッと笑う顔は、相手を安心させようという優しさが滲み出ていた。その反面、防寒着をなくした鼻が見る見るうちに赤くなっていく。
「ちょっ」
その様に、スグルは慌ててマフラーを返そうと手を伸ばした。しかし、外そうと掴んだ途端、その柔らかな感触に「ふああ」と力の抜けた吐息が漏れる。
こんな柔らかく温かい物、スグルは今まで触れたことがなかった。出会うことがなかった。
ほんの少しだけ。
すぐに返すつもりで、もう少しだけそのぬくもりを味わうよう、無意識に目を閉じる。

すると、

「よかった。気に入ってくれたみたいだな」

声と共に、突然首に衝撃が走る。ドンッと力のかかった方を見れば、びっくりするほど近くに青い瞳を見つけた。
「お前も、良い子だよ」
いつの間にか首に回っていた腕が、グッと顔を引き寄せる。
「そんな顔ができるんだ。きっと、素直な良い子に決まってる」
なんて、誰もが笑うスグルのマスクに向かって、大人顔負けの気障なセリフを吐く。ついでに、チュッと丸い鼻にキスを贈って。
……あっ!そ、Sorry!」
「へ? え、あ、こっちこそ」
だが、本人にとっても最後のキスは予想外の行動だったのか。白い肌がサッと赤くなる。もちろん、原因は寒さではない。
動揺して彷徨う目は慌てふためいていて。
しかし、頭をガシガシ掻いた後、彼は伺うようにスグルへ視線を向けた。


「もしかして、YOUがオレのプレゼントだったりするかい?」


探るように、マスクの向こうの大きな青い瞳を見つめる。まるで、どこかで見かけたドラマの1シーンのように。運命の人を見つけたヒーローのように。

真剣な目で自分を見る相手に、スグルは全身の血が沸騰するようだった。

「っ!?」

だから——反射的に彼を突き飛ばして逃げたのは、決してわざとではなかった。
これ以上はおかしくなってしまう。心臓がバクバク高鳴り、飛び出してしまいそうだ。
本能が、このまま彼に捕われてはならぬと叫ぶ。



「ハアッ、ハアッ……
そうして、スグルは足がもつれる勢いで美波里公園へと走り帰っていた。
膝に手を突いて荒い息を繰り返していると、首からふわりと溢れる物が……先程の彼がくれたマフラーが解け、視界の中で揺れる。赤と青のボーダーのそれは派手で、でも、なんだかとてもしっくりときて。
……僕の、初めてのプレゼントだ」
自然と、その小さな手に抱きしめていた。

ひらひら降る雪の中。
それはとても幸せな記憶だった。



***



それから十数年後。

キン肉ハウスでクリスマスパーティを行うからと呼ばれたテリーマンは、家主が巻いている小さなマフラーに呆然としていた。

「なあ、そのマフラーって……

震える指を向ければ、当のスグルはいつも以上に満面の笑みを浮かべる。

「おお! これか? 実はの。私の小さなサンタさんから貰ったもんなんじゃ! へへっ、格好いいでしょ? どうよどうよ?」

子供の頃に貰ったマフラーはすっかりぼろぼろで、今では一巻きするのが精一杯の大きさになってしまった。しかし、これは彼が初めてもらったプレゼント。クリスマスの日は必ず出してくる宝物で。
同時に、テリーマンにとっても見覚えがある品らしく。

「いや……これ。 ミーが子供の頃……って、まさかあの時のBOYってまさか!?」
「へっ?」

自信満々に見せびらかすスグルに対し、ワナワナと唇を震わすテリーは可哀想なほどに顔を赤くしていた。
それこそサンタの服よりも真っ赤な顔は、喜びと恥ずかしさと驚きで忙しく。

「ああ……なんてことだ! さすがは、奇跡の日だな」
まさかここに来て初恋を回収するなんて……

ツリーの星と同じ色をした金髪を、ぐしゃりと掻きむしる。
逃げられたショックから、綺麗な青色の瞳しか記憶になかったが、確かにあの時の少年はこのマスクと同じ愉快な顔をしていた。
滑稽なマスクに、それとは不釣り合いな寂しい横顔は余りにもアンバランスで、危うく。
だから、ただ見ているだけでは耐えきれずに声をかけたのだ。
そして、その後に見せた蕩けそうな笑顔に心が打たれ——口説いた過去はテリーの中では忘れたい過去となっていたのに。

「まったく……、いくつになっても、“良い子”にしてるもんだな」

クスッと笑ったテリーは、あの日すり抜けた小さな背中を、今度こそ捕まえるべく……改めて、愛しい男へと手を伸ばした。

(今度こそ、手に入れても良いだろう)

あの日出来なかった抱擁を、今度こそリベンジするために。




メリークリスマス!