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huhaineet
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ホットケーキは素敵
ふかとがも
がもが反省とかするわけねーだろ
「深水、まだ読んでいるのか。そろそろ支度しろ」
「待って、蒲生くん。あともう少しだから
……
」
「その発言は十分前にも聞いた」
今日は二人でライダーステーションへ行きトレーニングをする約束をしていた。昨日のカオスワールドでの戦闘の際、大事には至らなかったものの連携ミスがあったため反省会をして連携を深めるのがねらいだ。
ところが深水は小説に夢中になり出かける準備ができていない。小説は蒲生が薦めた推理小説で、中盤からの怒濤の展開に目が離せなくなっているようだ。
「続きは帰ってからでいいだろ」
「うん、わかってはいるけど
……
続きが気になって集中できなくなりそうだから
……
もう少し待って」
もう少しと言いつつ残り三十ページはありそうだ。蒲生は呆れてため息をつく。
「
……
もういい。俺は先に行く。こんなことになるなら薦めなければよかった」
「えっ、あ、待って
……
!」
蒲生は深水が本を置き急いで支度しようとするのを見たが、制止を無視して玄関を後にした。
「お疲れ様。
……
えっと、ぼくは家に帰ろうと思うけど蒲生くんはどうする?」
「俺は本を返却しに図書館へ行く」
「
……
そっか。じゃあ、またね」
トレーニングを終え、二人は別れた。蒲生は予定通り本を返却したが、その後の行動を考えあぐねていた。日課のパトロールまではまだ時間があるから図書館で本を読んでもいい。だが深水にきつく言い過ぎてしまったことを反省しており家に帰って謝りたいと思っている。とはいえどう謝ろうか悩ましく、すぐには帰りづらい。あてもなくふらふらと図書館に隣接している公園にやって来た。
公園にキッチンカーがいた。女性店員がその場で焼いたホットケーキを販売している。蒲生は一組の親子が商品を買っているのを見て、お詫びの品を渡して謝罪しようと考えた。
丁度客が捌けたタイミングで蒲生がじっと見つめていることに気がつき、店員が声をかける。
「お兄さんもホットケーキ好き?よかったらいかがですか」
「ああ、いや
……
特別好きというわけではないのですが
……
一つください」
「トッピングはどうしますか?」
「じゃあ、このチョコバナナのやつで」
「チョコバナナですね。焼き上がるまで少々お待ちください」
店員が鉄板に生地を垂らす。ジューっと音が鳴り、綺麗に丸く広がっていく。焼いている間に会計を済ませた。プツプツしてくると店員はホットケーキをひっくり返す。もう片面が焼き上がるまで時間があり、蒲生に話しかけた。
「誰かへの手土産ですか?」
「
……
何でわかったんですか?」
「だってお兄さんホットケーキを買う人のわりには浮かない顔してるし、そもそも好きじゃないって言ってたじゃないですか。だから誰かと喧嘩して、仲直りのためにあげるのかなって思ったんです」
「だいたいそんな感じです。と言っても俺が一方的に怒っただけですが」
「なるほど〜」
店員は適当にあいづちをうちながらパンケーキを鉄板からプラスチックの容器に移す。生クリームとバナナをのせてチョコソースをかけ、蓋をした。
「お兄さんはホットケーキ嫌いですか」
「いえ、嫌いではないです。稀に食べます」
時々深水が食べたくなると、蒲生の分も一緒に焼いてくれる。先日食べたものははちみつとバターだけのシンプルなものだが、非常に美味しく、心が丸くなったような心地がした。
「じゃあ、冷めてますけど同じの一つサービスしますよ」
「えっ、いいんですか!?」
「はい、さっきお子様が注文したやつ、急に別のが食べたくなったみたいで焼き直したんです。だからこれは売れなくて困ってたんですよね」
「あなたは食べないんですか」
「私が食べてもいいんですけど、お兄さんが食べた方がいいかなって。仲直りしたいならただ渡すより、一緒に食べた方がいいと思いますよ」
「
……
ありがとうございます。大事に食べます」
蒲生が家に帰ると、深水は台所にいた。
「ただいま。
……
深水、何しているんだ?」
「おかえり。ホットケーキを焼こうと思って、生地を混ぜているところだよ」
蒲生はばつが悪い思いをする。ホットケーキを買ったが、これでは無用の長物だ。何となくホットケーキの入った袋を後ろ手に隠す。
「蒲生くん、それは?」
深水は蒲生が何かを隠したのを察知して様子を窺った。深水に隠し事はできないな、と蒲生は観念する。
「ホットケーキを買ってきたんだが
……
無駄なことをしてしまったな」
「そんなことないよ。これ、ぼくのために買ってきてくれたんだよね。
……
すごく嬉しい」
「こんなの深水のためじゃねえ。ただの自己満足だ」
「でもぼくに謝ろうとしているのでしょう?蒲生くんの申し訳なさそうな心を感じるよ」
「
…………
まあ、そうだな。時間を決めていたわけではないのに早く出ようとしてイライラしてしまった。さっきは言い過ぎた。すまない」
「ううん、約束があったのに出かけようとしなかったぼくもよくなかったよね。ごめんね」
お互いに謝り合ったことで気まずさがなくなり、場の空気が和む。深水は思わず笑い出し、蒲生は肩の力が抜けた。
深水はボウルにラップをかけて冷蔵庫にしまう。
「よかったら蒲生くんが買ってくれたホットケーキを一緒に食べよう」
「ああ。だが深水が用意した方はいいのか?」
「両方食べたらお腹いっぱいになっちゃうし、これはまた明日焼くよ。蒲生くんには焼きたてを食べてほしいからね」
「俺に?」
「うん。ぼくも蒲生くんと仲直りしたくてホットケーキを焼こうと思ったんだ」
奇しくも同じ発想をしていたのかと蒲生は驚嘆した。それに気づいた深水は蒲生に微笑みかける。
立ち話はこのくらいにして、蒲生はホットケーキが入った容器を机に並べる。まだほんのり温かい方を深水に渡そうとしたが、深水からの申し出により半分ずつ食べることになった。
「美味しいね。買ってきてくれてありがとう。どこで買ったの?」
「中央公園にキッチンカーが来ていた」
「そうなんだ。他の味も食べてみたいけど、いつ来るかなあ」
「さあな。だが俺もまた買いたい」
結果としてホットケーキはなくても仲直りはできたが、蒲生は気にかけてくれた店員に感謝を伝えたいと思った。そして今度はいい気分でホットケーキを買いたい。
翌日、深水がホットケーキを焼いた。甘いいい匂いがして、食べたら心が丸くなるような心地がする。昨日の雰囲気が嘘のように、二人の仲はすっかり元通りになっていた。
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