mineml
2020-12-18 19:15:25
573文字
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【SS】ベラドンナネタバレなし、自陣×

通過前、HO4

ほころぶ


 小鳥が鳴き交わしている。
 多栄の眠りはちょうど途切れたところだった。スマートフォンのアラームはまだ沈黙を保っていて、部活の朝当番もなく、まだしばらくまどろんでいられるもっとも優雅な朝である。
 それだけではなく、何か、幸せなことが、と残り香を噛みしめるように、また眠りこんでいこうとする頭で考えて、胸を満たす幸福感の理由、さっきまで見ていた夢、たった今の数秒だけ忘れていたそれらのことを思い出す。
 英美里が星の子、凛が月の子であるとするなら、あの子はさながら太陽の子なのだ。
 くるくると輝く瞳、伸びやかな手足、張りつめた肌は幾たびもの夏に染めつけられた色。どんな風に世界が見えているのか、あの生き生きとした手足で水を掻くのはどんな心地なのか、指先まで命が通っているのはどんなにか気持ちが良いだろう。知りえない事々、けれど、短く切り揃えた髪は本当に陽の匂いがするかもしれないし、頬をつけた素肌は思い描いたとおりに熱いかもしれない、それらならば、もしかすると。
 ごめん、とぽつりと思う。あと数時間もしないうちに食堂で、彼女とトレイを並べることになるのはわかっているのだ、きっとまた罪悪感で味のしない朝食になる。
 それでも、甘い甘い多幸感に抗えるものではなく、花の浮かぶ水に沈んでいくように、とろとろと意識は溶けていく。