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mineml
2020-08-24 12:38:36
1003文字
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【SS】庭師現×未× 小山
習作
目覚まし時計が鳴る直前に、目が覚める。
音が鳴り出す前にスイッチを切り、ほとんど無意識のルーティーンに従って寝室を出ると、ダイニングテーブルに花が活けてあった。
カーテンに遮られた薄暗い中で、そこだけ少し明るいように咲いているのを見て腑に落ちたような心地がする。普段通り、あえて言えばもっとも穏やかな部類の出勤の朝だが、昨夜彼女はここにいたのだ。
球形をしたガラスの花瓶は、彼女の領分である。彼女が来れば花で満たされ、来ない日が続けば空になって待っている。
共通のスポーツジムにたまたま通っていたのが縁だった。零課が発足してしばらく経ち、案件の数が少し落ち着いた頃のことだ。久しぶりに身体を動かした帰りに、同じことを考えたらしい彼女とばったり出会った。
零課で同じ所属になるまで、顔を知っている程度の仲だった。いい機会だから、とそのまま食事をしたのだが、まさかその後、彼女ががっくりと寝てしまうとは思ってもみなかった。
今にも眠りこみそうになるのを励ましながらひとまずこの部屋へ連れ帰り、よく休むようにとメモを残して翌朝は出勤した。それが帰宅してみれば、恐縮した様子の彼女が夕飯を作り終えていたのだから驚いた。
そのときに持ちこまれた花瓶である。彩りにとわざわざ買ってきたというのだから、当時はつい笑ってしまった。その夜以来、彼女はこの部屋のほんの一部を占めているのだ。
可憐な白い花は、迂闊に触ると傷めてしまいそうで、それよりは強そうな葉を指先でそっとこする。しっとりと吸いついてくるような手触りがする。ふたりとも花の名前は知らない。折々に彼女が腕に抱いてくるその姿かたちだけ、記憶が積み重なっていく。
夜間の呼び出しも休日返上も多い仕事だ。仕事の合間を縫うように来て、昨夜のように慌ただしく帰っていくよりはいっそ同居を、と思わなくもない。けれど、職場に知られるのはちょっと、と顔色を褪せさせた彼女の様子を思うと、簡単に提案するのも躊躇われた。ここ最近の悩みである。
肩に触れる体温もやわらかく力の抜けた表情も、つい数時間前まで隣にあったというのに、ふと懐かしいような気分になる。
(離れて暮らしていても、安らいでいるなら良いけど)
休日の名残を胸の奥に飲みこみ、スーツをハンガーから外す。何も知らないふりをして、「小山警部」と笑顔を向ける彼女に再会するまではそう間もない。
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