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三毛田
2024-12-23 22:19:47
3403文字
Public
アドベント24
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23 03. 戸惑う
23
珍しい表情を
23 03. 戸惑う
「
……
」
「穹、怖い顔してる」
「別に。なのの目が悪いんじゃない」
「ウチに八つ当たりしないでよ」
「これは八つ当たりじゃない」
「ウチがそう感じたら、八つ当たり。というか、助けに行かなくていいの?」
「情報収集もしてるんじゃない。知らないけど」
無口でクールで。人当たりはそこまでよくないけれど、少し離れて鑑賞するだけならば、ちょうどいい。
という評価をされる俺の恋人。
困ったような表情で、俺たちをチラチラ見てくる。
ふいっとそっぽを向くと、戸惑いの表情を浮かべて。
「穹。それはさすがによくない」
「わかってる。なのが迎え行って」
「ウチが行ったら、余計拗れるって! ほら、行った行った!」
と、背中を押されて。
ため息をついて頭をかきながら、丹恒の方へ向かい。
「丹恒」
名前を呼ぶと、ほっとしたような表情に変わる。
「行くよ」
「あ、ちょっと!」
「何。元々彼と約束してたの、俺たちなんだけど」
呼び止めるような声がして、思わず威嚇するような声が出た。
それに丹恒は驚いているし、声をかけてきた方も驚いていて。
「それじゃあ、行くから」
丹恒の腰を抱いて、歩き出す。
「きゅう」
戸惑いのこもった心細そうな声で、俺を呼ぶ。
「あー
……
ごめん」
「何で謝るんだ」
「さっきの人に、八つ当たりした。丹恒に不快な思いをさせたと思うからさ」
「別に不快な思いはしていない。お前が来てくれて助かった」
「
……
それならいいんだ」
みっともなく嫉妬して、なのにちょっと八つ当たりした自分が情けないと思うと同時に酷く醜く感じる。
「穹。手を繋ぎたいんだが」
「珍しいじゃん」
「腰だと歩きにくいからだ」
「はいはい。わかったよ」
丹恒が望むのならばと、手を繋ぐ方へ切り替える。
少々冷たい手。でも、ちょっと心地よい。
「丹恒、大丈夫?」
「何に対してだ」
「女の人に囲まれてたからさ。嫌そうっていうか。困ってる感じだったから」
「そうだな。確かに、用もないのに囲まれて困っていた」
その言葉に、ちょっと強めに握る。
「穹?」
「別に」
拗ねた声が出た。二人から、戸惑いと呆れの目を向けられて。
「もう。穹ってば」
「だって。丹恒は、俺の恋人だし」
「はいはい。丹恒、欲しい情報は得られた?」
「ああ。列車に戻ったら、共有しよう」
「わかった。ほら、いつまでも不貞腐れてないの」
「いてっ」
ちょっと強めに、なのに背中を叩かれて。丹恒は、その叩かれた個所を優しく撫でてくれる。
「丹恒でも、戸惑った表情を浮かべることがあるんだね」
「どういう意味だ」
「別に~? クールで無口で格好いい人でも、そういう顔するんだなって。でも、そのせいで穹が大変だったんだから」
その言葉に、丹恒は俺を見て。
「なの、余計な事言わないでよ」
「だって、穹の様子がおかしいと丹恒が心配するでしょ? ちゃんと理由を説明しておかないと」
「穹」
「見るなって」
丹恒からの視線に耐えられなくて、思わず手で顔を隠す。
「嫉妬、したのか」
「それは
……
」
なのが目を輝かせて、こちらを見ている。彼女に走られたくないという、くだらないプライド。
「俺の部屋でなら、教えるけど」
「そうか。それなら、後で教えてくれ」
「うん」
「残念~」
と、肩を落として。
「じゃあ、買い物して帰ろうよ。パムから、製菓材料を買ってきて頼まれてたでしょ?」
「ちょっと多めに買えば、しばらくそっちの買い物をしなくてもいいか?」
「予算をオーバーしなければ、大丈夫だろう」
「じゃあ、ウチが選ぶね!」
「「なの/三月は、全部選ぶな/選ばないで」」
思わず言葉が被り、顔を見合わせた後笑い合う。
笑ったら、さっきのことなんかどうでもよくなった。
「二人ともひどい! こうなったら、先に行って選んでやる!」
と、張り切って歩いて行ってしまう。
「丹恒、食べたいもの自分で選ばないと」
「いや。市販品じゃなく、パムが作ったものじゃないと」
「そうだったとしても、食べたいものをリクエストしないと、なのが食べたいものばかりになるぞ」
「流石にそれは困るな。姫子さんやヴェルトさんが食べたいものだってあるだろうし」
「パムはリクエストされると張り切るからなあ。なのが食べたいものだらけにならないように、阻止しないと」
少し先を行くなのに追いつこうと、少しだけ早歩きに。
「丹恒」
「どうした」
「俺、丹恒が好きだよ」
「そうか。俺も、お前が好きだ」
俺が好きだと口にすると、彼もまた好きだと返してくれて。
いつものやりとりで、俺たちの当たり前。
でも、これはきっと当たり前じゃないのかもしれない。
それならそれでいい。
だとしたら、俺たちの間では、当たり前にしてしまえばいいのだ。
「ただいま~」
「ただいま! 車掌さん、頼まれてたものと、それから追加でいろいろ買ってきたよ!」
「ただいま戻った」
「うむ。皆無事じゃったな」
両手に荷物をたくさん持って列車に帰ると、ラウンジでパムが出迎えてくれた。
「買ってきたものは、キッチンに運んでおく。穹、行くぞ」
「はーい。パム、買い忘れがないか一応確認してもらっていいかな」
「いいぞ。三月ちゃん、おやつはここに置いておくから、姫子とヴェルトに届けてくれ。届け終わったら、食べてよいぞ」
「わかった! 今日も美味しそ~」
一口サイズのパイとタルトが並んだ皿に、なのの目は釘付けだ。
「試作品?」
「そうじゃ。列車の客人たちに提供する前に、お前たちの意見を聞きたい」
「なるほど。コーヒーに合うもの、紅茶に合うものと様々だからな」
「一応は、どちらにも合うような味付けにしてある。じゃが、穹や三月ちゃんのように甘いものが好きな客人もいれば、丹恒のように甘いものが苦手な客人もおるのが現状じゃ。甘味は、リラックスタイムのお供になればいいと考えているからの」
確かに、美味しいものを食べておいしい飲み物を飲むとリラックスできる。思考を切り替えるのにも持ってこいだ。
「でも、論文作成中の丹恒は、甘いものを食べるよな」
「それでも、お前たちが好む味よりも、甘みは薄い。頭を使うから、糖分補給をしているだけであって、味は二の次だ」
「パム、聞きましたか?」
「聞いたぞ。オレの前でそれを言うのか」
腰に手を当て、ぷんすこと怒るパム。
流石にしまったと思ったのか、手で口元を隠すけど、もう遅い。
「まあ、よい。他の甘いのが苦手であるが、糖分補給はしたいという客人たちも、そういう反応じゃったからな。二人の分は別にとってある。後でゆっくり食べて、感想を教えてくれ」
「ありがと~! お風呂入ったら、ゆっくり食べる!」
キッチンに着いたので、パムの指示に従ってものをしまう。
なるべくパムの作業をする導線に合わせてしまったりするのがコツだ。
「今日の飲み物は、ブレンドティーじゃ。おやつに合うように、オレがブレンドした」
「茶葉のブレンドも出来るのか」
「この味を出すのに、しばらく時間がかかったから、今回が初お披露目じゃぞ。じゃが、あまり量がないから、三月ちゃんには内緒じゃ」
と、小袋を俺の手に乗せて。それを覗くと、確かに二人分くらいしかない。
ティーポットを借りて、おやつを持って俺の部屋へ。
「たーんこ。一緒にお風呂入ってからおやつ食べよう」
「いや、俺は」
「外でちょっと埃になったんだから、入らないと汚いよ。どうせ、ご飯食べたら論文だろ? そしたら、数日は資料室にこもりっぱなしになるんだ。今のうちにすっきりしとけば、案外思い通りに進むかもよ?」
と、俺が一緒に入り他だけなのだが、それらしいことを言ってお風呂に誘う。
お湯は、お風呂から出たら沸かせばいい。
二人でシャワーブースに入るのは、ちょっとだけ狭い。けど、浴槽に入れば案外広い。
「はあ
……
」
「気持ちいいだろ? いつも適当風呂だから」
「行為の時は、お前が無理やり風呂に入れるだろうが」
「それはそうだよ! 疲れた体をリフレッシュさせるには、お風呂が一番だからさ」
「お前のせいで、時々風呂に入るのが楽しみになっている自分がいる」
と不本意そうに口にする。
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