奴田原 ミズキ
2024-12-22 22:05:19
964文字
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少女は幾重の夢を見る 1

ビマスヨ♀(ヨダ♀)
最終的にはハピエン
しばらくは重めの展開


月が、綺麗だと思った。
カーテンが風に靡く。さらさらと揺れて、月明かりに照らされ白く輝いた。
吐く息は白い。開け放った窓から流れる風は冷たい。薄着なので尚更だ。
すうと空気を吸い込むと、冷えた肺がズキリと痛む。
……ごめん。やっぱり私、だめだった」
声が震える。頬を伝う何かをそのままに、携帯の向こうに居る最愛の妹へと言葉を紡ぐ。
「私なりに、がんばったんだけどね」
でも、だめだった。ここが終点だ。先へ続く線路はない。ここで、私は終わりだ。
窓の淵に手をかける。床から離れた脚がぷらぷらと宙を舞う。
『⸺っだめ、駄目よ、おねえちゃん。待って、すぐに行くわ、おねえちゃんをひとりになんてしないから、だから』
「ううん、いいの。愛してる。私の大好きなドゥフシャラー」
『だめ、だめ、おねえちゃん、待っ⸺⸺』
通話を切って、手のひらから滑り落ちた携帯が床に落ちる。パキリと割れる音がした。

………

もう一度息を吸う。胸が痛い。思えばずっと痛かったかもしれない。
結局、優しく触れられることなんて一度もなかった。現に、先程まで強く掴まれていた腕や腰には、鬱血した手の痕が青黒く残っている。
何が駄目だったのだろう。どこでボタンを掛け違えてしまったのだろう。もし、やり直しが出来るのなら、昔に戻れるのなら。あの日、あの時よりも早く謝る事が出来たのなら、もう少しだけ素直になれていたのなら、未来は変わっていたのだろうか。手を取り合うことは出来たのだろうか。そんな風に次々と浮かぶ思考を、痛みが掻き消して行く。現実に引き戻される。
⸺そうだ。今更どうしようもない。何もかも、手遅れじゃないか。手に入れたかったものは尽く手のひらから零れ落ちて、残ったのは、罪の鎖と、全身を刻まれた傷痕だけ。何もない。何も。
私はもう、期待をするのも、がんばることも、疲れてしまった。
下腹部から伝わる鈍い痛みを振り払うように、窓に触れていた手を放して、重心を窓の外へと向ける。
反転する視界。急速に窓が遠退いて行く。
……ああ、でも。一度くらいは、嘘でも良いから)
ビーマに、好きだって、がんばったなって、言って欲しかった。




ぐしゃ。
頭の後ろから全身へ。身体がゴム毬の様に跳ねる。視界一面に広がる、赤。
そこで、意識は途切れた。