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溶けかけ。
2024-12-22 21:57:16
1720文字
Public
ほぼ日刊
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メメント・モリ
鍵垢でこっそり呟いていた冥婚のお話。
タイトル思いつかんかった。
鍾離先生出ますが口調は怪しいです。(未所持)
フリーナは薄暗い建物の中を縦横無尽に駆け巡る。どくどくと脈打つ心音が、弾んだ呼吸が、どこか他人のもののように感じた。
────走れ、走れ、逃げるんだ。
────どこまで?
ふとした疑問が鎌首をもたげる。逃げて、逃げて、どこに行けばいい?
「見つけたぞ!」という声がした。ついで、聞こえる甲高い笛の音と複数の人の足音。
振り返ることすら許されず、ただひたすら知らない館を駆ける。出口もなければ、窓一つ見つからない、気味の悪い館。
帰りたい。誰か、誰か、僕を見つけて。
引き千切ってボロボロになったウェディングドレスの裾をはためかせながら、フリーナは走る。捕まったら最後、待っているのは「死」のみなのだから。
「鍾離先生
……
?」
「久しいな、フリーナ殿」
赤い封筒を拾おうとしたフリーナの手を止めたのは往生堂の客卿、鍾離と名乗る男性だった。彼はフリーナの代わりに封筒を拾うと辺りを見回した。鍾離の目線の先、すぐそばの物陰に隠れていた数人の男女と目が合い、彼らは舌打ちをしながら立ち去った。
「フリーナ殿。こちらにはいつまでいるつもりだろうか?」
「え? ええっと
……
今日が最終日だよ?」
鍾離は手の中の封筒を睨見つける。以前会ったときは穏やかな人物だったと記憶しているのだが、今日は妙に刺々しい雰囲気をしている。
「では、今日が帰国ということか
……
。帰国してからも暫くは赤い封筒に気をつけた方が良いだろう」
それから、鍾離はフリーナに冥婚のことを教えた。赤い封筒には故人の写真や毛髪が入っていて、触れた者を独り身の死者の配偶者にするという璃月の古い風習なのだという。とはいえ、今は殆ど行われていないという廃れた風習なのだとか。
「恐らく、狙いはフリーナ殿だろう」
鍾離は封筒を開きながらそう言った。フリーナの背筋を冷たい者が撫でた気がして怖気が走る。
「この男は随分とフリーナ殿に懸想していたらしい」
鍾離が封筒から何かを取り出す。青みがかった見覚えのある銀糸。その正体は────。
「僕、の
……
髪
……
」
ぞわりと全身が総毛立つ。長さからして水神をしていた頃のものだろう。そんなものが何故、封筒に入っているのか。理由を察するには余り有る。
「最期の願いを叶えるため、遺族がフリーナ殿の前に封筒を置いたと考えれば辻褄は合う。沈玉の谷からフォンテーヌまでは遠くない。ならば、追いかけてくることも視野にいれた方がいいだろう」
鍾離の言葉が右から左へと流れていく。死者との結婚。それも殺される、など冗談ではない。すぐにでも対策を立てなければならないはずなのに、頭が受け入れることを拒否していて、何も考えられない。
あまりのことに言葉を失い、青褪めた顔で立ち尽くすフリーナを前にして、鍾離は考える。旅人とパイモンに連絡を取ることも考えたが、二人が何処にいるのかが分からない以上、止めておいた方がいいだろう。ならば、彼女に対して自身が出来ることは────。
「フォンテーヌまでは俺が護衛として付き添おう」
水龍の棲まう地に足を踏み入れるのは気が進まないが、緊急事態である以上、仕方がない。後ほど、往生堂経由で手紙を送ることにして、今ばかりは目の前の彼女や旅人とパイモンの語る、今代の水龍の寛容さを信じるしかないだろう。
「ありがとう、鍾離先生」
「往生堂の客卿として、今回のことは俺も調べておこう。気になることもあるからな」
フリーナがアパルトメントの中へ入って行くのを見守り、踵を返す。鋭い視線は感じるが、今のところ何かを仕掛けてくるつもりはないようだ。それよりも────。
「出てきたらどうだ?」
物陰に声をかける。現れたのは数人の人間。フードを目深に被り、その顔は窺えない。
「やはり、道士もいたか」
封筒に僅かに残っていた術の気配。大きな組織が関わっていると考えていいだろう。
倒れた人々の中心で鍾離は思案する。視線はより強くなっているように感じた。
「限界か。だが、今回のことで警戒すべき相手が俺でないことは理解出来ただろう?」
鍾離が上を見上げる。そこには人の姿をした龍が立っていた。
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