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い
2024-12-22 18:33:09
1145文字
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甘い煙に惑う
万理さん夢/喫煙描写あり
吸ってもいいよ、と呟くと、万理さんは少しだけ後ろめたそうに、や、流石に一緒にいるときは
……
と眉を下げた。
喫煙できる場所が限られたこの世の中で、全席に灰皿が置いてあるお店はほとんどないと言っていい。映画館の裏にあるこの喫茶店が数少ない喫煙可能店であることをわたしは知っていて、だからわざわざここを選んだ。
万理さんはわたしの前では煙草を吸おうとはしないけれど、わたしとしてはそんな遠慮なんて早くなくしてほしいのだ。
べつに本当は駅前の喫煙室で全身に白い煙を浴びながら万理さんの一服を待ったってよかった。でも、この人はそれを申し訳なく思うだけの良識と常識を兼ね備えた人だから。
「家族がみんな吸ってたから、慣れてるんだ。わたしがパフェ食べ終わるまで暇でしょ?」
「うーん
……
そういうことなら、一本だけ」
「うん」
鞄の中から煙草とライターを取り出し、ギターを弾いて固くなった指がそれを挟んで火をつけるまでの仕草を、細長いスプーンで掬った生クリームを口の中で味わいながらうっとりと眺めた。
薄めの唇から煙が吐き出されると、万理さんは先ほどまでの申し訳なさも一緒に失ったかのようにリラックスした顔でこちらを見る。
「ごめんね、なんか。いやー、いつもはあんまり気にならないんだけどね
……
誰かが吸ってると俺まで吸いたくなっちゃうんだよね」
「それ、姉からも聞きます。漫画とか、映画の中でも吸ってる人がいると吸いたくなるとか」
「あー、わかるなあ。前に見た映画の主人公もすごいヘビースモーカーでさ、見終わるまでずっと我慢してて」
「あは、みんなそうなんだ。
……
でも、わたしといるときに我慢する必要、ないですよ。自分では吸わないだけで、匂いとかも本当に気にならないから」
「そう? でも、服とかについちゃうよ。せっかく可愛くしてきてくれてるのに」
その言葉に思わず、可愛く、と脳内でリフレインしてしまう。可愛くしてきてくれてると思っていることが、嬉しい。何より。だから匂いなんてどれだけついても構わない、それなのに。
「そうだ、良かったらあとで洗ってあげるよ。うち浴室乾燥あるから、明日までには乾くし」
「えっ」
「あ、クリーニングとか出したい
……
?」
「や、そうじゃないです、そうじゃなくて
……
。えっ
……
、えっと、じゃあ
……
お願いします
……
」
お願いされます、と短くなった煙草を片手に、煙と戯れながら万理さんが笑う。
今日ちゃんと可愛い下着履いてきてたよね、と今朝のことを思い出しながら溶け始めたアイスクリームとそれに埋もれるように沈んでいく苺をスプーンに乗せて、口に運ぶ。それってこれから一緒にいるときに煙草を吸うたび同じことをしてくれるのだろうかと、わたしは勝手に期待する。
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