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ちよど
2024-12-28 00:00:00
1496文字
Public
わし様など
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美容を気にするわし様の話
容姿が衰えないよう努力していたわし様の話。
「わし様はちゃあんと節約しておる。──そこまでしなくてもよくなったからなぁ」
「汚れたな」
カレーの粉末が零れた衣装にドゥリーヨダナはためらいもなく霊基を編み直した。
喧騒に包まれていた昼時の食堂に沈黙がおちる。ドゥリーヨダナに非難の視線が浴びせられた。
「旦那っ! 魔力は節約しろってあれほど言われてんだろっ」
隣に座っていたアシュヴァッターマンの指摘にわがまま王子はそっぽを向いた。
謝る気がないその様子に代わりにアシュヴァッターマンが一緒に食べていた少女に頭を下げる。
「すまねぇ。これでも生前から考えれば節約してんだ」
マスターの少女はナンを千切っていた手を止めて笑った。
周回も一段落した昼。カウラヴァメンバーとマスターは食事を共にしていた。
と言ってもカルナはガネーシャ神の部屋に行っており、このテーブルにはマスター、ドゥリーヨダナ、アシュヴァッターマンの3人が座っている。
今日の食堂のメニューのインド式カレーはビーマの自信作らしい。その名前を聞いたドゥリーヨダナが相談もせず貶す気満々であっという間に三人分注文したのだ。
そのスパイスがちょっと落ちただけで払いもせずに魔力を使って霊基を編み直したドゥリーヨダナは生前から贅沢三昧の富豪王族だ。
熱々のナンから少女は手を離した。
「ドゥリーヨダナは王子様だったもんねー。一日何回も着替えたりしてたとか?」
「会う相手によって服を変えるのは当たり前だろう?」
「旦那は黙ってろ!ひでぇもんだったぜ。服だけじゃなくてオイル塗ったり布を巻いたりで毎回毎回何時間も!」
その度に待たされていたらしいアシュヴァッターマンが思い出して憤るのに、マスターは首を傾げた。
オイルを塗って布で包む。それは女性であるマスターがよく知っている作業だ。
「それって保湿だよね? そこまでする?」
マスターの疑問にドゥリーヨダナは、アシュヴァッターマンをちらりと見て。それから厨房の奥にも視線を投げた。
らしくなく静かに口を開く。
「
…
例えばこの旅が10年、20年続いたとする。おまえは自分がどうなるか分かるか?」
「どうなるかって?」
少女は思考を巡らせた。ドゥリーヨダナの言い方では自分だけが変化するように
…
。あ!
「みんな、サーヴァントだから年を取らない」
正確には数人は同じ人間がいる。だけどカルデアの大部分は霊体であるサーヴァントばかりだ。変わることのない英霊達の中で少女は年老い、衰えていくだろう。
「ねぇ、アシュヴァッターマン。半化身や半神って年を取るの?」
少女の質問の意図が分からなかったのかアシュヴァッターマンは眉を寄せた。
「あー、どうだかなぁ。カルナは変わんなかったけどよぉ」
気にしたこともないその言葉に少女は人間でしかないドゥリーヨダナを見た。その容姿は死した時で止まっている。
少女の視線を受けて、ドゥリーヨダナは口元だけを歪めた。
「わし様はちゃあんと節約しておる。──そこまでしなくてもよくなったからなぁ」
マスターはアシュヴァッターマンを見た。先程、ドゥリーヨダナが容姿を整えている間待たされていたと怒っていたこの青年は、彼の努力に気づいていないのだろう。今も。
口を開きかけて、少女は口を閉じた。
そして違う言葉を舌に乗せる。
「ねぇ、ドゥリーヨダナ。富豪王族の特別なケアってあるの?」
「あるとも!わし様しか許されないスペシャルでゴージャスなものがな。
…
ふっふっふっ、知りたいか?知りたいであろう?」
得意げなドゥリーヨダナの言葉にマスターは身を乗り出す。
突然始まった美容談義に半化身の青年だけが時に取り残されたように戸惑っていた。
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