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らく@創作企画TRPG
2024-12-22 00:07:26
1903文字
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未森凪/ロストSS
今まで通過したシナリオネタバレ特になし。
ロスト探索者の創作設定に沿った一次創作小説です。
※KPに確認してもらって大丈夫といわれたので公開しときます。
探しています。
赤い文字で大きく書かれた見出し、その下に掲載されている写真は外国人の血を引いていると思わせる少年が写っていた。カメラに向かって屈託なく笑い掛けるその顔は、大半の者が一瞬、足を止めて目を向けるくらいには魅力があった。
探しています。
視線を下に持って行くと名前と年齢が記載されており、その数字は、目を向けた者の足をさらに止めさせるだろうと思えた。
未森 凪(23)
生まれも育ちも日本だが、母方の祖母がドイツ人だった。年齢詐称できる奇跡の二十三歳男児としての外見を持つ未森 凪という男は、飼い猫のにゃんぴゅうと安いアパートで一人暮らしをしていた。尊敬している探偵先生に数年前より弟子入りするも、探偵として行動するにはあまり適正があるとは言い難い目を引く外見と心許ない体力面により、探偵先生の助手として何とか日々の生計を立てていた。頭の回転はよく、機転も利く方だったので、代わりのお使いを頼まれるようになるくらいは役に立っていた。
すべて過去形だ。
知り合いの伝手を頼んで作って貰ったその紙を、男はもう小一時間は眺めていた。
眺めていたからといって、何も変わらないのに。
事務所用に契約しているスマホが鳴った。
「はい、もしもし、お電話ありがとうございます。こちら石神探偵事務所。ああ、違います。石神と書いて、『しゃくじ』と読むんです。はは、そうでしょう、珍しいでしょう」
低くしゃがれた声が愛想良く笑って答える。定型文通りのやりとりを終えると、たまに相手を気遣うような声を出したり、親身に聞こえる相槌を打ち始める。
「はい、はい
……
そうですか。改めてお名前を
……
」
胸ポケットからボールペンを取り、メモを取ろうとして手元にいつものメモ帳がないことに気付く。男は、長年染みついた習慣で狭い事務所にいるであろう助手の姿を探した。探してしまった。
手元には、紙はある。
『探しています。』
男は、勢いよく一枚裏返して電話の内容を乱暴に走り書きする。
「はい、はい。ええ、少しでも進展がありましたら、ご連絡します」
そして、スマホを切った。
裏返してメモ代わりにしたそれを石神が手に取ろうとすると、助手が飼っていた猫のにゃんぴゅうが、と、と机に登り、取らせまいとその紙の上に丸まった。
「にゃあー」
まるで抗議するような鳴き声だ。
石神は嫌そうな顔をすると、しっしっとにゃんぴゅうの首根っこを掴み床へと降ろした。
「仕方ねぇだろうが、見つからねぇんだから」
探している。
無断欠勤が続き、アパートに行き、にゃんぴゅうを保護し、それからずっと連絡を待っている。代わりの助手を雇うほど困ってはいない。元々一人で回していた事務所だ。目も当てられないくらいに落ち込んでどうしようもなかった少年だった頃の未森凪が、どうしてもと言ってこの探偵事務所に居座ってから何年経ったろう。すぐに音を上げると思っていたのに、いないと目で探してしまうくらいには事務所で世話をすることになっていた。
根性がある。大きな挫折をしたことがある故か、馬鹿を見るほど他人の面倒を見ようとしてしまう節があった。時折、何か事件に巻き込まれたりしていたことは知っていた。その度にけろっと戻って事務所に顔を出すから、過度な心配はしてこなかった。
未森と石神の約束事は、三日経って事務所に顔を出さなかったら、にゃんぴゅうの世話をすることくらいだった。ここの探偵事務所は、未森にとって会社というよりも家に近い。家族仲が悪いわけではない。石神の助手であった未森凪はどちらかといえば人懐っこく、知り合いも友人も多い。家族とも定期的に連絡を取り、よく遊びにも行く。学生の一時期、荒れに荒れていた時でさえ、未森の周りから人は途切れなかった。
それでも、未森を立ち直らせてくれたきっかけは石神で、だから未森は、石神のいる探偵事務所が一番好きだった。
何だかんだと探偵助手として雇う前から、この事務所に入り浸っていた。
先ほど取ったメモに目を向けながら、石神は不愉快そうに鼻を鳴らした。
「お前の消息を尋ねる電話、これで何度目だと思ってんだよ」
遺体の一つも上がれば諦めも付くだろうに、情報の一欠片すら寄越さない。
営業妨害もいいとこだ。
ここは探偵事務所だ。時効になっても、きっと探すことをやめることができないだろう。そういう場所だ。
「気をつけろっていったろうが、クソガキがよ」
ただ時間が過ぎていく。探偵助手はいないまま。
帰ってくることだけを信じられて。
未森凪/ロスト 追悼SS
※こちらのテキストは妄言でもあり、フィクションでもあり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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