ガイベル
2024-12-21 00:30:03
6007文字
Public お話
 

白銀に染まる

冬の二人と雪と捏造昔話。
当たり前のように同棲している。
本文4200字程度。
+1300字ほどは余談。

とても冷えた朝の日。
ゆっくりと伸びをしてから静かにベッドの中から抜け出し、カーテンを開く。
外は雪が降り積もり、白銀の世界だった。
窓は部屋の内と外の気温差で曇っている。
どうりで、寒いわけだ。

*****

「さむ……
少し冷えた空気を感じた後に聞こえたバジルの声に、うつらうつらと夢の世界からサニーの意識が浮上する。
…………バジル………
「あ、ごめんねサニーくん。起こしちゃったかな」
…………寒いなら、戻ってきなよ……
ムニャムニャとした眠気混じりの声を出し、毛布から少しだけ出された手が何かを探すように動く。その様子がおかしかったのか、バジルが少し笑いながら近くに戻ると、サニーは砂地獄よろしく彼をベッドの中に引きずり戻した。
「わぁ……!」
「もうちょっと、ゆっくりしよ……
……仕方ないなぁ」
そう言いながらも、どこか嬉しそうな声のトーンが隠せていない。サニーは腕の中でふふ、と含み笑いをする気配を感じて目をあけた。
……?どうしたの」
「ううん。…………いるなあ、って」
…………
バジルがそうして何かを噛み締めるような言葉を、サニーはあまり深くは追及しないことにした。
ただ、少しはにかんだように笑うバジルの顔は、昔と同じようにかわいいと思った。


───あの町で、みんなで一緒に過ごしていた時のこと。
喜ぶバジルの顔が見たくて、サニーは時々公園などから手近な花を摘んできては、彼に渡していたことを思い出す。
今にして思えば、その辺に咲いているような小さな花を簡単にそのまま渡されるのなんて、花に詳しい彼にとって、本当に嬉しい事だったのかどうかもわからない。
……それこそ自分だって、特に好きなものや……
詳細に区別がついて、こだわりのあるようなものほど。人から貰っておきながら"本当に欲しいものはこれじゃなかったのに"……だなんて、思ってしまうような時期もあったから。
それでも、僕が覚えている限りバジルは、いつもその花たちを宝物みたいに受け取ってくれた。時にはその花の事について、名前や特徴を説明してくれたり。ある時はそれを押し花にして、お揃いのしおりを作ってくれた。
読書も好きなバジルは、そのしおりをいつも本を読む時に使っていたようだった。彼がお気に入りの本を紹介すると言った時にも、それがページの間に挟まっていたのをサニーは知っている。

その後、家の裏庭にあるツリーハウスが完成した夏休み。集まった各々が、好きなことをする時間。
その日のサニーはふと気が向いて、前にバジルからおすすめされた本を読んでいた。
しばらくすると、いつものようにバジルがカメラのシャッターを切る気配がして、それからこちらに歩み寄ってくる。
「バジル、写真撮ったの?」
「うん。サニーくんも見る?」
「うん。」
サニーは本を膝の上に置いて、まだカメラから出てきたばかりの写真を受け取る。
撮影しているバジル以外の全員の姿が見えるように撮られたその写真は、みんなとても自然体で、楽しそうにこの時間を過ごしている事がわかる。
暖かい光が差し込む、穏やかな一日。変な場所や姿勢で本を読んだり、大袈裟にはしゃぐ様子。それを、行儀が悪いだとか咎めたり、怒ったりする厳しい大人たちもいない。完璧な空間を切り取った一枚に、自然とサニーの頬も緩んだ。
「いい写真だね」
「えへへ、ありがとう。これも、アルバムに載せる事にするよ。」
「うん、それがいいと思う。」
バジルは写真を受け取ると、目線を少し泳がせてから、何故か姿勢を少しだけシャンとさせ、再び口を開いた。
……サニーくん、ぼくが紹介した本、読んでくれてるんだ。」
「ああ……うん」
「読み終わったら感想、聞かせてね。ああ、えっと、途中まででも、全然良いんだけど。……あと、よかったら、この前あげたしおりも使ってみてね。」
バジルは特に僕の返事を待たずに『それじゃあ、邪魔しちゃってごめんね。』と言って、すぐに談笑するマリたちの輪に戻っていった。
話し相手のいなくなったサニーは、再び本を開いて続きの文字に目を落とす。本はいつもだいたいどこら辺まで読んだかを覚えてしまうのと、もともと背に紐が付いている物も多くあるから、読書にしても意外としおりを使う習慣って無いな、と思う。
……ただ、彼に訂正する事があるとすれば、バジルに言われるまでサニーがそれの存在を忘れていた……というわけでもないという所だ。

『この前サニーくんがくれた花で作ってみたんだ。一枚あげるね』と言って渡された、押し花のしおり。
それを見ると、バジルがその時少し照れくさそうにしながら渡してきたことだとか、そもそもサニーがバジルにその花を渡した時の、驚いてから嬉しそうに変わっていく表情も思い出すことができる。
サニーにとっても、大切な思い出の品の一つだ。
だからそれは今も、みんなに貰った大事なものの一部と一緒に、サニーが自分の意思ですぐ取り出せる鍵付きのおもちゃ箱の中にある。そこが押し花のしおりの今の居場所で……。きっと、これから先も、変わらない。
……だって、下手に持ち歩くと無くしてしまうかもしれないし……。本に挟んだままだと、次に開く時にしか、眺められないから───



「そんなこと、思ってたな……
サニーは目を閉じながら思い出を噛み締める。そしてベッドに戻ってきたバジルにまわした腕に力を込めた。
……ねえ、そろそろ起きよう?」
そんなことは露知らず、少し身じろぎをしたバジルは、サニーの頭や頬を優しく撫でながら揺り起こそうとする。それが寝起きのまどろみには心地よく、起こしたい時には逆効果だという事を、彼はあまりわかっていないかもしれない。
サニーはその手にすり寄りながら、ふてぶてしくも延長の希望を出す。
……あと5分……
……だめだよ、今日はクリスマスマーケットにも行くんでしょ?ぼくも見たいものあるし、色々買わないと」
ぴしゃりと返される言葉にサニーは心の中でため息をついてから、渋々起きることにする。
マーケットの内容によっては、こっそり様子を見てクリスマスや他のことの為の追加もできるから、一緒に行かない、という選択肢は無い。

各々、コートを着たり帽子を被って外に出る準備をする。ふと横を見ると、耳まですっぽり覆う帽子を被り、マフラーをぐるぐる巻きにして手袋を履いた……バジル?がいた。もはや目元くらいしか出ていないのではないか。
……そんな完全防備にする?」
「寒いんだもん……
バジルというよりは、同じくらいの背丈の布の塊が答えを返してくる状態だ。ちょっとおもしろい。

外に出て息を吸うと、澄んだ空気が身体を巡る感覚がする。少しなら心地よい温度差だけれど、深呼吸でもすれば、内側から凍ってしまうかもしれない程度の寒さだった。

「ほんとにすごい雪だねえ。……あ、サニーくん、ちょっとまってて」
「?」
そう言うとバジルはぎゅっ、ぎゅっと雪を握って何かを作りはじめる。それから適当に落ちた葉を拾ってそれに付けるとほら!と言ってこちらに見せてきた。
うーん。
…………。おにぎり……?」
「雪うさぎだよ!……ちょっと今は、目に使える南天の実がないけど……
庭先にはいろいろな種類の植物があるけど、それはうちにはないみたいだ。今日行く先のどこかにあるだろうか。そんなことを思いながら、一匹でさみしくないように!と追加のおにぎりを作るバジルをしばし眺める。

そのおにぎり雪うさぎたちは家の前で留守番してもらうことにして、ようやく家の前から歩き出す。
どうにも昔から、二人でいると出かける時に想定より時間を食ってしまう。他に待たせる人がいなくてよかった。

しかし、出発したばかりなのに寒い風がピリピリと頬に痛いくらいに当たる。今は雨や雪が降っていないだけマシだが、サニーも既に暖かい室内が恋しい。
そして今日はクリスマスマーケットにあるだろうホットドリンクやソーセージ、その他魅力的な食べ物の為に朝ごはんもそこそこに出発することにしたから、既にサニーの頭の中はご飯のことでいっぱいだった。それこそ、雪うさぎとおにぎりの区別がつかなくても仕方がないくらいに。油断すると大きな腹の虫が鳴りそうだ。一粒の飴玉やチョコレートくらい、ポケットの中に忍ばせておけばよかった。エネルギーの足りないせいか、心なしか身体が冷えるのも早く感じる。

……そんな事を考えながらふとバジルの方を見ると、寒そうに手を擦り合わせ、はーっと息を当てている。というか、さっきまで手袋もしていたはずだけど……
その視線に気づいたのか、若干バツが悪そうに目を逸らされた。
……雪に触ったら、濡れて冷たくなっちゃった……
そう言って、寒さで赤くなった指先を隠すように、両手をポケットの中に仕舞い込んだ。
ゆっくり立ち止まるサニーに気付いてバジルもその歩みを止める。
「サニーくん、どうしたの?」
……はい、これ」
「手袋……?」
「ポケットに手、入れて歩くと危ないから。それ、右手にはめて。左手はこっち。」
そう言って、サニーは右手を差し出す。手袋を脱いで剥き出しになった手が、すぐにかじかんでいく。
別に繋ぐのは、どっちの手だってよかったのだけれど。バジルはいつも、わざわざ僕の視界の悪い方に回り込んで立とうとするし、今だってそうだ。だから、右。
サニー自身のことについて、思うところのありそうな彼なりの気遣いをわかっている。ただ、それに気づかないふりをするのも、意外と大変なのだ。

バジルは驚いたように目を丸くした後、手袋を受け取ると小さく呟く。
「サニーくんの手、真っ白だね」
……確かに自分の手は健康的、と言う色合いと肉付きではないかもしれない。少し成長はしたけれど、どちらかというと細くて骨ばっているし。
そこまで柔らかいわけでも、男らしく、たくましいわけでもない。
…………でも、これしかない。
…………あったかくは、ないだろうけど……
「ううん。……好きだなあって」
バジルはそう言うときゅ、と指を絡ませ、手を握り返してくる。
……お互いの冷えた手同士を繋いだだけなのに、体温が少し上がった気がした。


それからはしばらく無言で歩き続けた。
新雪を踏み締める音だけが聞こえる道で、次の車道を渡るまでは、二人とも特に歩みを止めることもなかった。

……サニーくん。まって、ちょっと。車が通った雪が薄いところ、地面が結構滑る、かも」
……このまま繋いで歩くの、危なくない?と言いたげな視線と声がする。
まあ実際、僕の感覚でも機動力は半減……という感じがする。確かに安全でも、効率的でもないかもしれない。
……でも。
……ゆっくり行こうか。」

──これで滑ったら、一連托生って事で。


おしまい。


___________
加筆:2025.01.03
〜〜暖かい室内が恋しい。そして今日はクリスマスマーケットにある(略)早く感じる。〜〜
→サニーが雪玉を見た時の謎感想🍙🐇と手が白くて冷たい理由が、単純に朝飯を抜いているからという理由だったのに朝描写をカットしたままアップしていた事に気づいたので迷った挙句今更追加しました。
直し所無限湧きなのでだいたいは気づかなかった事にしますが、腹ペコサニーは入れとくかという事で。

_____
こんにちは,あるいはこんばんは。

読んでくださってありがとうございました。
ここからはあとがきみたいな余談をぐだぐだ書いています。無駄話。

最初に書いていた思い出話枠は、雪の日にサニーとケルの隣家コンビが夜中に家を抜け出し、型で雪をはさむオモチャで家の前に雪のうんこを作りまくって翌日にみんな(主にオーブリーやヒロあたり)から怒られたことあったよねみたいな捏造話でした。美しい思い出とは、なんだろう
サニーとバジルが(雪とはいえ)終始うんこの話をする内容を見たかった人は申し訳ありません。原作にヘクトールとの美しい思い出があってよかった。

今回書いた方について。
コレクターズエディションが届いて気が変わり、こっちの話に切り替えました。
描写はアルバム時系列の、バジルが読んでる本を紹介する→ツリーハウス完成→サニーが紹介された本を読むという流れをもとにしています。
最低でもフィギュア販促画像のツリーハウスでサニーがバジルに差し出している3本の花と、バジルの花のしおり両方が存在するという前提で話を進めてますが……
それぞれが別種にも見えるので、元々結構それも頻繁に、サニーからバジルに花(に類するもの)を渡すやりとりや、習慣に近いものがあったんだろう、という結論が導かれるじゃないですか(?)
もしツリーハウスで渡された花をしおりにしていたとすると、今回のバジルが本を紹介する時点での描写には出せないのですが、サニーのバジルへのあの求愛行動(言い方)が元々頻繁だった説と、その花を使った栞をバジルが作ってお返しとしてあげたという方がアホみたいにかわいい気がする上に、花の種類ブレの可能性を合わせても整合性とれるのでこの話ではそっちを採用しました。記念日にもらった花はドライフラワーとかにしてそう。

公式描写は結構サニーからバジルへのアクションが多いところが本当に好き

コレクターズエディションの特典は、そもそも何故わざわざサニーが持っているものとしてお出しされたであろう町の思い出が詰まった封筒に「バジルの思い出の品」とかいう謎キャプションの押し花のしおりが入っているんですか?単にバジルが作ったものをサニーにくれただけだったら絶対そんな書き方にならないだろ!と、オタクの脳味噌は本当に大変でした。
OMOCATから正解が出たらここら一体を桜の木の下にでも埋めてください。待ってひまわり畑の方が嬉しいかも
他の大事アイテムの経緯はそれぞれ推察できる文章とか説明がついているけれど、あのしおりだけ本当にちょっとよくわからないから本当に詳しく、、
お話、聞かせて……(病床のジェイク)アドベンチャータイム#31

バジルはサニーと何かを分け合うのが本当に好きですよね。
あれもそれも詳細は二人だけの秘密、というならそれはそれでありがたい事なんですが。

サニーの素手:これしかない。 ←かなり好き
今回言及チャンス作れて嬉しかった。

だんだん自分が何を書いて、何を書いてないかがわからなくなってきました。
あまり求められてないだろう部分も長くなりましたが、終わります。
メリークリスマス、良いお年を。

2024.12. 21
ガイベル