Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
しちろ
2024-12-20 22:39:02
5352文字
Public
コラボLOM小説(ごちゃLOM)
Clear cache
Export ePub
ジュンくんとシオン 6
コラボ小説第六話。男主二人がだらだら恋バナしてるだけ。
点けられているのは最低限の明かりだけ。深夜のキッチンに浮かぶ影。
調理台に並ぶのは複数の小瓶。クローブ、スターアニス、シナモンなど
……
。料理好きの家主が常備している香辛料である。
「黒コショウはどうしよう
……
入れちゃうか」
声の主
――
寝間着姿のジュンは片手鍋をコンロに置き、瓶を取り上げながらブツブツ言っている。しばらく悩んだ挙句、瓶の中身をいくつか、鍋にぽとぽと放り込んだ。まぁ、多少失敗したとしても、被害を被るのは自分だけなのだから、たいした不都合はないはずだ。
かまどに小さく火を起こし、鍋を弱火でじわじわ温める。
その間に、ちょっとしたおつまみもご用意。保存食のナッツやジャーキーを適当に小皿に乗せておく。
そのうち、鍋の底からふつふつと泡が出はじめて、熱せられた鍋からじりじりと音がしてくる。湯気とともに香気が立つ。この瞬間がたまらないと思いつつ、ジュンは秘蔵の逸品を取り出した。
「そして、とっておき! いつもならフィッシュフルーツのところ、本日に限り
……
! なんと
……
! ぜいたくにサンタリンゴを使っちゃいます
……
! もうすぐクリスマスだからね!」
バーン!
果樹園の恵みの中ではそこそこ貴重な林檎を、得意げに掲げる。繰り返すが、深夜である。ギャラリーは誰もいない。ジュンは沸騰寸前の鍋にカットしたフルーツをくわえて、おたまでゆっくりかき混ぜ、火を止めた。
「甘味はどうしようかなぁ。砂糖でもいいけど、ここはやっぱり蜂蜜だよねぇ」
綺麗なスプーンで黄金色の蜂蜜を瓶からすくい取り、鍋に入れてよく混ぜる。
そうしてできあがった、冬の飲み物。赤ワインを使ったグリューヴァイン。
一人悦に入りながら、ジュンは出来上がったばかりのホットドリンクを、あらかじめ用意しておいたカップに注ぎ入れた。赤ワインで煮られた林檎がいい色に染まっている。
「大人の秘密だよねぇ。双子は子どもだし、シオン君はどー見てもお酒飲める歳じゃないし」
酒はそれなりに嗜むジュンだが、他の家族に気を使ってマイホームではあまり飲まない。最低限の照明は、ほんのわずかな後ろめたさの証である。
切り立った山脈を背に、大陸の端にある、マイホームの冬はとても寒い。珍しく深夜に目覚めてしまい、そのまま寝つけなくなってしまったのは、遠い空の下にいる恋人を想って床に入ったからだろうか。愛しい彼女と、暖炉で暖まりながらお酒を飲めたらいいだろうなあなんて考えながら、トレーにカップと小皿を乗せる。このまま居間で飲むか、それとも自室でこっそり楽しむか。
思案しつつキッチンを出ようとしたジュンは、暗がりから視線を感じた。
気配はゼロ。喉の奥からひぃっと声が出た。何度も言うが深夜帯である。悲鳴だけはかろうじて堪えた。いつの間にか、階段の下に白い影がぬぼーっと立っている。
「
……
ズルい」
「
……
し、シオン君!?」
あまりにも心臓に悪い。シオンは白い寝間着を着て、肌まで色白なので、暗闇に幽鬼のように浮かんでいて余計に怖い。しかもぼそぼそ喋るし。
「ジュンくん、こんな時間に一人晩酌?」
「あ、あの、これはね! なんとなく目が覚めて、寒くなっちゃったし、なにか温かいものでも飲もうかなぁ~なんて」
やましいことをしているわけではないのだが、なんとなく決まりが悪い。もしかして物音で起こしてしまったかとジュンが訊いてみると、そういうわけではないと返事があった。ジュンと同じで、ふと目が覚めてしまったのか。底冷えする真冬の居間で、上着もひっかけず突っ立っているシオンはやたら寒そうに見えた。
「あ、そうだ。シオン君も飲む? グリューヴァイン。このままじゃダメだけど、火にかけなおしてアルコール飛ばせば」
本来は沸騰する寸前で仕上げるワインだが、しっかり火をかけて酒精を飛ばし、ジュースをくわえれば彼でも飲めるはず。
さっそくジュンが回れ右して、ワインを火にかけなおそうとすると、シオンが止めた。
「そのままがいいんだけど」
「と言われてもこれ、一応、お酒でね
……
」
この世界では、成人は18歳から。明らかに未成年とわかっていて、飲ませるわけにはいかないジュンである。
すると、シオンがちょっぴり不服そうに言った。
「俺、たぶん、あなたが思ってるよりずっと歳上だよ」
「そう、なんだ?」
「
……
別に、信じなくてもいいけど」
いつものジュンなら、またまた、とか言って笑うところだ。瑠璃や真珠姫のような珠魅ならそれもあり得るが、目の前の少年はどう見ても普通の人間である。
だが、ジュンは手にしたトレーとシオンを何度か見比べて、アルコールの乗ったトレーをそのままテーブルに置いてしまった。
「うん、今日はいいや! 夜更けだし、僕以外誰も見てないし。こんな日くらい、うるさく言うのナシナシ! もうすぐクリスマスだしね!」
「あなたらしくないね」
「なんだよ~、シオン君が自分から言ったのに」
台詞とは裏腹に、ジュンの表情はどこか楽しげだ。シオンがこういうわがままを言うのは珍しい
……
というより、初めてだったから。
ジュンはシオンを椅子に座らせて、キッチンからカップをもう一つ取って来、彼の前に置いた。熱い鍋の中身を注いでやり、自身は彼の向かい合わせに座る。
「あ、そうだ。シオン君、はい、乾杯~!」
思い出したようにテーブルに身を乗り出し、シオンに強引に乾杯を促してから、カップに口をつけた。ワインと蜂蜜の甘い風味、香辛料がいい塩梅に合わさって、ほっと温まる味わいが冷えた身体を内側から温めてくれる。
「うーん、いいよねぇ。僕、これ好きなんだ~。瑠璃とかには、スパイスが嫌だとか甘すぎるとか言われるんだけど、ぽかぽか温まるし、味も香りも冬っぽくて。シオン君、大丈夫そう?」
シオンは感想を言わないが、黙々と飲んでいるあたり悪くはないらしい。おつまみもあるよと勧めたジュンだが、シオンはそちらには手を付けずカップを口に運んでいる。
「ジュンくん、時々、夜中にこんなことしてんの?」
「えーと、今日はたまたまかな。その、なんとなく目が覚めて」
「
……
。ふーん」
基本的には寝つきが良く、一度眠りにつけば朝までぐっすりのジュンである。彼女に会いたくなってさみしくなっちゃった、とかは、さすがに恥ずかしくて言いたくない。
と思ったら、シオンがズバリ聞いてきた。
「手紙が原因?」
「え?」
「昼に、誰かから手紙来てたろう。あれから、なんか変かなって」
「
……
。あ~
……
」
ジュンはつい、天井へと視線を反らしてしまった。鋭い。
『ジュンさん、ゆーびんゆーびん♪ 今日はとっても遠くの町からのお届けで~す』
郵便ペリカンが届けてくれた、繊細な模様の施された綺麗な封筒。
差出人は、ジュンの恋人ユノだった。
旅芸人の一座に生まれたユノは、決まった家を持たず、踊り子として旅とともに生きている。各地を冒険し、聖剣を手に入れたジュンは、自分と同じように世界を旅し、冒険の末に聖剣を手に入れた彼女とマナの聖域で運命的に出会い、恋に落ちた。二つに分かれていた聖剣は二人の出会いによって一つの剣となり、ジュンとユノはマナの女神と対峙した
……
と、これは誰にも、親友の瑠璃にさえまだ話していない、ジュンの裏話である。
シオンに、手紙は旅先のユノからのものだと答えたジュンは、こんな時間に目が覚めた理由に思い至った。ああ、だから会いたくなったのか。恋しくなったのか。遠い空の下から届く手紙は、恋人への愛しさと会えない寂しさをいやでも募らせてしまう。
それにしても
……
。
つまみのジャーキーをかじって考える。シオンは、他人のことなど興味なさそうにしているようで、よく観察していると思う。さっきの手紙のこともそうだし、ジュンの武器のことや、ジュンが隠していた実力を見抜いたこともそうだった。
「ユノさんって、どんな人?」
シオンがぼそっと聞いてきた。
「ユノちゃん?」
シオンに聞かれたのが少し意外で、おうむ返しにしてしまう。
だが、恋人の顔を思い浮かべるうち、ジュンの顔は自然とほころんだ。
「年齢はね、僕と同じなんだ。19歳。さらさらの綺麗で長い金髪で、いつも頭に珍しい形の棒飾り付けてて」
「金髪に
……
棒?」
「そう。変わってるでしょ?」
「
…………
」
シオンは黙って聞いている。
「前に少し話したっけ。彼女、旅の踊り子さんでね。普段ももちろん綺麗なんだけど、踊ってるところはユノちゃんの周りだけキラキラ輝いてるみたいで特別綺麗でね、ときどき精霊まで寄ってきたりするんだよ~。彼女の楽しそうに踊ってる姿も笑顔も本っ当にかわいっくって。ユノちゃん、ドリアードの加護があるんだけど、ドリアードって精霊の中でも特にマナが強いじゃない? そのおかげなのかなぁ、魔法が上手で楽器も上手で歌まで上手で声なんか透き通ってとっても綺麗で」
「
……
うん」
「ユノちゃん、楽器は昔一緒だった楽団の姐さんたちのほうがずっと上手だったって言うんだけど、僕は謙遜だと思うんだよねえ。どんな吟遊詩人からでもあんな綺麗な音色そうは聴かないもの。で、芸事だけじゃなくってお料理も上手でね~。優しくって可愛くって思いやりがあって(以下略)」
実際には上記記述の三十倍ほどジュンがのろけた辺りで、とうとうシオンが口を挟んだ。
「ジュンくん
……
酔っぱらってる?」
「自慢じゃないけど、僕は、お酒は強いほうです! アイム素面!」
「
……
」
酒には酔ってないけど、ユノちゃんには酔っている。酒のせいではなく、本人の問題である。話が長時間に及ぶ間にシオンの視線はどんどん白けていったが、愛するユノちゃんがとっても可愛くて魅力的と言うことは伝わった気がするので、ジュンは満足している。
と思ったら、空になったマグカップを置いてシオンが小声で言った。
「
……
ジュンくん、本当に恋人いたんだな。話に聞くだけであまりに姿を見ないもんだから、最近は、頭の中だけで付き合ってるのかも
……
とか思ってた」
「ひど!」
ジュンのユノちゃん脳内彼女疑惑、実は他の仲間からも言われたことがある。ジュンののろけが激しすぎて。
ジュンはすっかり冷めてしまった小鍋を温めなおして、シオンの空のマグにお代わりを入れてやった。シオンからは断られなかったので、やはり口にあったのかもしれない。
「シオン君はさ、好きな子とかいないの?」
ジュンが尋ねると、シオンが意外そうに瞬きをした。
「あなたも
……
そういうこと聞くんだな」
「だって気になるもの。僕ばっかり喋ってもなんだしさ」
今の今までユノちゃん大好きbot化していた自覚はジュンにはない。シオンは何やら言いたげにしたが結局言わず、問いへの答えだけ言った。
「いたことない」
「え?」
「恋愛とか、したことない」
シオンは熱いマグにフーフー息を吹きかけて、二杯目に口をつけた。難しいお年頃によくある照れ隠しや誤魔化しではなさそうである。たしかに色恋ごとには淡泊そうな少年だが、まったくモテなそうという感じでもないし。
「あんまり興味ないとか?」
シオンは、また、ちょっと考えてから返事した。
「そんなヒマ、なかったから」
「
……
。そっか~
……
」
なにやら訳アリの雰囲気だ。ジュンは返答に困った。なんか、地雷踏んだかもしれない。
「
……
と、思うんだけど
……
」
「思う?」
「
……
なんだろうな。よくわからない」
最後の方は戸惑い気味にぼやいたシオンは、考え込んだ風な顔になってしまい、マグの底に残った林檎をすくってもしゃもしゃ食べた。普段は理路整然としている印象の彼からすると、少々珍しい。
「シオン君、もしかしてちょっと、酔っぱらっちゃってる?」
「
……
」
ジュンもシオンも、二杯目を空にしたところだ。大した分量ではないが、マグカップで飲んでいるから、決して少ない量でもない。
「
……
そうだね。そういうことにしておこうか」
もう一杯もらってもいい?
そう言ってカップを差し出してきたシオンは、
俺、たぶん、あなたが思ってるよりずっと歳上だよ。
先ほどの彼の言葉通りに、ジュンよりずっと大人びて見えた。
※※
巻末おまけ。登場してない人物紹介(女主人公編)
●ユノちゃん
ジュンの、脳内彼女疑惑が払拭できない美人な恋人。
旅の踊り子をやっているのは本文の通り。ブルーの衣装の2Pカラー。
ジュンよりマナの感知能力が高く、魔法に秀でている。愛に生きる愛の女。
しかし少々脳がお腐りになられているらしく、そのイメージがジュンとユノのファ・ディールにがっつり影響を及ぼしてしまっているという噂。
●カイ
シオンの、将来出会う予定の相棒。元気いっぱい。
実はシオンが旅に出る前に一度会っており、未来で会う約束をしているのだが、シオンはそれを忘れてしまっている。それでもなんとなく引っかかっている部分はあり、「なんか大事なことを忘れているような
……
」とシオン本人はずっと思っている。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内