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雪華
2021-10-17 22:22:51
2177文字
Public
テリサイ
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【テリサイ】凍えるほど寒い夜だから
お題ガチャして見つけた『安眠グッズ扱いされる攻め』の話。たまにはこういう夜もあるし、仕返しされる夜もある。
仲間など要らないと思っていたが、人生なにがあるか分からないものだ。
ボルダーフォールで物好きな学者に声をかけられて、旅路を共にしはじめてからもう数ヶ月が経つ。それぞれの目的のために手を貸し合いながらここまでやってきて、テリオンが求める最後の竜石も目前に迫っている。ただ進めば進むほど道は険しくなり、今日も一行は疲労困憊といった様子でフロストランド地方の町を訪れた。
「はあ~、疲れたわ
……
やっぱり雪原を歩くのって苦手
……
」
「未だに慣れないわよね。雪に足がとられちゃうわ」
「その上、今日は戦闘も多かったからな。疲労がたまるのは当然だろう」
「ええ
……
元気なのはリンデくらいね」
そう言ってトレサが少し視線を下げると、雪豹のリンデは得意げに鳴いてみせた。雪国は足場も悪い上に視界も不明瞭だ。踏破するだけでも体力を消費するが、そんな状態だからといって魔物が手加減をしてくれるわけでもない。今日は食事をとったら早々に休んでしまいたい、それは誰しもが思っていることだろう。
まず一行は宿屋に向かい宿泊の手続きをした。宿は空いているようで、珍しく各人に個室が宛てがわれた。次に腹ごしらえをすべく酒場に向かう道すがら、サイラスが少し声のトーンを抑えてテリオンを呼んだ。
「
……
なんだ」
「キミが良ければだが
……
今夜、寝支度ができたら私の部屋に来てくれないかい?」
内緒話をするようにその長身を僅かに屈め、囁かれた言葉は目眩がしそうなほど甘美な誘いだった。
――
実を言うと、テリオンにとってサイラスは仲間の中でもより特別な相手だ。共に過ごす内に芽生えた恋情を、いっそ摘み取ってしまおうとしたテリオンの手を優しく押し留め、二人で育てようと諭してくれたのが彼だった。
暫し回想に耽っていたが、冷えた指先が返事を促すように手の甲に触れ思考を取り戻した。寒気のせいでサイラスの頬や鼻先は赤く染まっていて、その姿まで色っぽいと思ってしまうのだから我ながら呆れる。
「
……
テリオン、聞いているかい?」
少し拗ねたような声色がまるで甘えられているようで、悪くない気持ちにさせられる。本音を言うと疲労はあり、恐らくサイラスもテリオンと同じかそれ以上に疲れているはずだが、却ってその方が高ぶるというのは同じ男として分からなくもない。返事は一択であったが敢えて焦らすように視線を泳がせて、たっぷり間を置いてから答えた。
「ああ。
……
分かった」
「ありがとう。待っているからね」
ストールに顔を埋めて頷くと、サイラスは嬉しそうに微笑んだ。人目がなければ冷たい手を取ってやりたかったがそれは叶わない。せめて二人きりになったらゆっくり温めてやろうと思いながら、自分のかじかんだ指先を擦り合わせた。
***
その後は酒場で仲間たちと食事を摂り、深酒をすることもなく早々に宿へと戻った。そして手早く身を清めて寝間着に着替えると、テリオンは隣の部屋の扉を叩いた。すると意外にも扉はすぐに開かれた。サイラスが一度のノックで気付くとは、珍しいこともあるものだ。
「待っていたよ。廊下は寒いだろう、早く中へ」
「ああ」
笑顔の恋人に迎え入れられた部屋は、寝間着一枚で過ごすには温度が低すぎる。後ろ手に扉に鍵をかけ、手招きする手を掴んだ。テリオンのそれより少し温かい手は抵抗なく捕まり、指を絡めてくる。
「フロストランド地方の建物は冷気を遮断するような造りになっているが、それでも今日みたいな日は冷えるね」
「そうだな。
……
凍えてしまいそうだ」
「ああ、私も
……
ひとりでは寒くて、眠れそうにない」
ぎし、と寝台が軋む。サイラスが膝を乗せ、体重をかけたからだ。
「来てくれ、テリオン」
蝋燭の炎が揺らめき、妖しい微笑みを照らし出す。項の毛が逆立つような感覚に突き動かされるまま、自分も寝台に上がった。片手間に灯りを消して寝台に横たわり、綿のたっぷり入った掛け布団を被る。繋いだ手を解いて薄い体を抱き締めると、サイラスの方からもすり寄ってきた。
「ふふ、温かいね。うん
……
これなら
……
」
「サイラス
……
」
唇を合わせるとサイラスは擽ったそうに笑った。こんな時まで色気がないやつだが、そういうところが可愛らしい。寝間着に包まれた体をぴったりと重ね合わせて、サイラスは目を瞑る。
「おやすみ、テリオン」
「
……
ん? おい、」
抱いた体を揺さぶった頃には、すうすうと静かな寝息が聞こえだしていた。そこで初めて、彼が自分に声をかけてきた意図を汲み取った。つまり
――
疲れている上に凍えそうなほど寒いから、性的なことは抜きに温めて一緒に眠れということだったのか。いかにも彼らしい発想だ。
「
……
はぁ」
恋人を抱き枕扱いとはいい度胸ではないか。深く、それはもう深くため息をついて、サイラスの背中を擦る。起こす方法がない訳ではないが、あっという間に寝落ちた無防備な姿を見ているとその気も失くす。暫く寝顔を眺めた後、サイラスの額に軽くキスをして、瞼を閉じた。
――
ただ結局、寝息が頬にかかったり、寒そうに足を擦り寄せられてはなかなかに気分が昂り深くは眠れなかった。翌朝は機嫌の良いサイラスと悪いテリオンが連れ立って宿の食堂に現れたものだから、仲間たちは一様に首を傾げたのだった。
***
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