雪華
2021-08-15 16:01:38
1568文字
Public テリサイ
 

【テリサイ】雨雲の功罪【転生パロ】

※転生パロ。記憶あり18歳のサが、記憶なし10歳のテリを拾った設定の話。17歳×25歳時の性の目覚めの話です。
前の話(13歳×21歳)→ https://privatter.net/p/7772500 前の前の話(10歳×18歳)→ https://privatter.net/p/7544224

今日は降水確率ゼロパーセント――朝の天気予報を裏切り、大粒の雨がざあざあと音を立てて降りしきっている。駅のホームに立ち尽くす人々は皆一様に空を見上げ、ため息をつく。サイラスもまた例に漏れず、空を覆う鼠色の雲を眺めた。
あいにくと傘は持っていない。買って帰るという考えも一瞬頭を過ぎったが、つい二週間前もそうやって自宅の傘を増やしたことを思い出し、諦める。せめて鞄だけでも守ろうと脱いだジャケットで包んで胸に抱え、自宅へ向かって走り出した。
幸いなことに、サイラスの自宅は駅から数分という近場だ。それでも家に着く頃には頭の先から爪先までぐっしょりと濡れていた。

「ただいま。テリオン君? いるのかい?」

しかし彼から返事はなかった。玄関には確かにテリオンの靴があるのだが、ゲームでもしていて気付いていないのだろうか。鞄を床に下ろし、靴下を脱いで素足で玄関マットを踏みしめる。
――サイラスの今の家族はテリオンだけだ。前世の恋人だった男と奇妙な邂逅を果たしてからもう七年が経つ。あの日サイラスはまだ子供だったテリオンと出会い、そのまま手元に置いておくことを選んだ。それが正しかったのかどうかは実のところ分からない。ただ、今もテリオンを愛していることは確かで、しかしその気持ちはただ穏やかで、燃えるような恋情とは異なっていた。

「テリオン君、タオルを持ってきてくれないかい?」

もう一度、今度は少し声を張ってみたがやはり返事はない。そうしている間にもサイラスの髪からは雨水が滴り、頬を濡らす。諦めてスリッパを履き、ぽたぽたと水を垂らしながら洗面所へ向かう。
視界不良の目元を拭いながら扉を開けたものだから、室内に明かりが点いていることに気付くのが遅れた。白い明かりの中の人影に瞬きをする。黒いタオルを頭から被った少年が、下着一枚という無防備な格好でゆっくりと振り向いた。

……テリオン、君」
「悪い、見ての通り俺もやられた」

柔らかな白髪が濡れている。髪の先から透明な雫が落ち、筋張った体を伝ってゆく。――数年ぶりに見たテリオンの体はもはや少年と呼べるかたちではなかった。背丈は伸び、無駄な脂肪は落ち、引き締まった体は男のそれだ。そう悟った瞬間、サイラスはよろめくように二歩後退った。
こんな気持ちは初めてだった。いや、サイラスは既に知っている。喉がひりつくように渇き、指先が震えて、叫びたくなるようなこの渇望を。

……おい、大丈夫か? 先にシャワー使うか」

下から覗き込まれてぎくりとした。エメラルドグリーンの瞳は今も昔も変わらない色をしているのに、その眼差しを向けられると何故か動機が激しくなった。それはテリオンが成長したからか、否、自分が彼を見る目が変わったのか。

「い、いや、大丈夫だ……キミが先に使ってくれ」
「そうか? 顔色悪いぞ」
「私は大丈夫だよ。じゃあ、邪魔したね」
「おい、タオルくらい持ってけ」

放られたタオルを落とさず受け取ったことが奇跡に思えるほど動揺していた。逃げるように自室に飛び込み、ベッドに座る。柔らかなタオルに顔を埋めて深く、それはもう深くため息をついた。

……最低だ、私は」

サイラスの下半身は僅かながらも確かに頭をもたげていた。いくらテリオンが大人びて見えるとはいえ、彼はまだ十七歳の子供だ。そんな子供相手にサイラスは欲情しているのか。強い嫌悪感に背筋が震え、タオルを握る指に力が籠もる。
気付きたくなかった。知るべきではなかった。テリオンに向ける愛が、時に身を狂わすような浅ましい欲望を含むものであると。

――サイラスの後悔とは裏腹に、その日を皮切りに鮮明に蘇った記憶があった。それは今まで無意識に記憶の海に沈めていた、熱くて甘い、恋人と過ごした夜のことだった。




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