雪華
2020-02-09 20:05:02
2877文字
Public テリサイ
 

【テリサイ】無自覚×話し合い【女体化】

※サが先天性女体化です。自然と女性であるという前提で話が進みます。前に書いたテリが先生にラッキースケベしちゃった話(https://privatter.net/p/5404330)の続き的な感じです。お題箱からのリクエストでした!

普通だとか一般的だとか、そういった言葉で表される常識的な感性などテリオンは持ち合わせていない。そういった事を教えてくれる役割のはずの、両親だとか家族だとかいう間柄の人の存在は記憶にない。厳しい世界でたった一人で生き抜くために手段を選ばなかったテリオンと、当たり前のように両親が居て育てられた人物では感性が異なるのは当然だ。
ただそれでも敢えて今晩はその言葉を使いたい。テリオンは机に頬杖を付き、喋りながら椅子の周りを歩く女の姿を横目で見遣る。

『今晩、キミの部屋に行ってもいいかい』

昼間の彼女の台詞を脳内で反芻する。一般的に、男の一人部屋を訪ねるということがどういう意味を持つのか。しかも恋人という間柄ともなれば、答えは明白なはずだった。しかし、どうやらテリオンはサイラスという人物を甘く見ていたらしい。

「そうだね、まずは魔法という言葉の意味について説明しておこう! 我々学者が使う魔法とは、文字通り法なのだよ。より効率的に魔力を行使するために研究が続けられ、その叡智の結晶を私達は――

訪ねてきてからサイラスはずっとこの調子だ。学者の象徴である金の刺繍の入ったローブを翻し歩きながら、興奮気味につらつらと捲し立てている。
どうして彼女が突如魔法について説き始めたかだが、心当たりはある。今日の昼間、テリオンが碩学王の力を借り学者の真似事なんぞしたことが原因だろう。仲間たちからも概ね好評だったが、なかでもサイラスはやけに嬉しそうだった。それは一向に構わないのだが、あいにく授業を受ける気はなく柔らかい声が左から右に流れてゆく。

……ということだ。ここまでで何か質問はあるかな? テリオン」
「それなら……一ついいか」
「ああ! 一つと言わず、幾らでも聞いてくれ。分からないことが多いのは決して恥ずべきことではないよ。寧ろ、そう感じることが理解への入り口だと言えるだろう」

大きくため息を吐いて立ち上がると、サイラスは不思議そうに首を傾げる。一歩足を踏み出して距離を詰めても変わらない。

「テリオン?」
「あんた、こんな時間に男の部屋を訪ねるということがどういうことか……知らないのか?」
「えっ――あ、っわ……

細い肩を掴み、軽く力を込めるだけでサイラスの背はシーツに沈む。瞬きも忘れてぽかんとテリオンを見上げる丸い瞳に少し溜飲を下げた。指先で頬に触れるとじわりと赤く染まり、教師の顔から恋人の顔へと変わってゆく。

……それは……知ってはいたけども」
「旅の仲間ならそんなことしないと思ったか?」
「いや、そうではないよ。ただ……キミは、私のことをそういう風に見ていないと思っていたから……
「は?」

思わず漏れた低い声に早朝の空を思わせる瞳が曇る。まさかこいつ、テリオンが枯れているとでも思っているのだろうか? それともおとぎ話みたいなただ綺麗なだけの関係を望んでいた? 早く続きを言えと親指で柔らかい唇を押すと、おずおずと――先程よりも随分自信なさげにサイラスは唇を開く。

「もしかしたらキミはもう忘れてしまったかもしれないが……その、以前、私の体を見たことがあっただろう?」
……ああ、あったなそんなこと」

何でもない風を装って、少し間を置いてそう答えた。今でもはっきりと思い出せるほど鮮烈な光景で、幾度か世話になったのだがそれを言うわけにはいかない。それがどうしたと問いかけようとして、彼女の次の言葉に目を剥いた。

「あの時キミは全く動揺していなかったものだから、私の体なぞには性的興奮のようなものは覚えないのかと思っていたのだが……
……本気で言ってるのか?」
「ああ。……八つも年上で、キミと同じ年頃の女性ほど綺麗ではないからね。当然だと思うよ」

動揺を見せたくない故の行動だったが、まさかサイラスがそんな風に受け取るとは予想外だった。これはテリオンが悪いのだろうか? この色恋事に鈍い箱入り娘に、端からきちんと説明しておくべきだったか。再びため息をつくと彼女は不安げにテリオンを見上げる。

「すまない。キミを不快にさせてしまったかな……
「謝るな。はっきりさせておかなかった俺が悪い。……俺はあの時のこと、はっきり覚えている。あんたの服の下は、想像していたよりずっと……綺麗だった」
「テリオン……ひゃっ!」
「いつかあんたの許しが得られたら……今度は俺の手で脱がせたい」

指先で脇腹をなぞり下ろすと、ひっくり返った悲鳴が上がる。あんまりにも色気のない声が愉快で、満足しながら体を離す。まぁこれくらい脅しておけば、サイラスも軽率な行動は慎むだろう。一応テリオンはそういった行為に及ぶなら合意でと思っているのだが、無自覚に煽られるのは堪らない。

……いつかって、いつでもいいのかい?」
「あんたの覚悟ができるまで待つ。……今の所はな」
「考えておくよ。しかし、順番は守ってもらわないと……

身を起こして指先で髪を整えながら、サイラスは唇を小さく尖らせた。彼女の言葉を口で転がし、態とらしく渋面を作ってみせた。

……まさか婚前交渉は嫌だとか言わないだろうな……これだから貴族ってやつは……
「ち、違うよ! そうではなくて……
「冗談だ。キスが先、ってことだろ」
「分かってるじゃないか……からかうなんて人が悪いな、キミは」

二人は先日思いを打ち明けあったばかりで、恋人らしい触れ合いは未だ抱擁止まりである。行儀よく順番を守ってやっているのは誰のためだと思っているのかと問い詰めたくなったが、止めた。

……で、それはいつになったらいいんだ?」
「それは……ええと……い、今、とか?」
…………
「あっ、勿論その、キミが嫌でなければだがね!」

苦虫を噛み潰したような顔をするテリオンに、慌てて真っ赤な顔で彼女は釈明する。テリオンが気に食わないのは誘うタイミングではなく、彼女のペースに巻き込まれて掻き乱されているということだ。初心で警戒心などないかと思えば次はこれなのだから、全く悩ましい。

……サイラス」
「なんだい?」
「いいんだな、今で」
……うん」

寝台に座ったままのサイラスの肩を軽く掴むと、顎を上向かせ瞼を閉じた。――サイラスとテリオンは見えているものも、感じているものも違う。そんなサイラスに振り回されるのを少し楽しいと思っているのだから、自分でもどうしようもないやつだと思う。
長いまつ毛が透けそうなほど白い肌に影を落とす。その影を見つめながらゆっくりと顔を近づけ、唇を重ね合わせた。

……どうだ?」
「ふふ……キミをとても近くに感じて、ドキドキしたよ」

触れるだけで離れて問うと、サイラスは目を細めて微笑んだ。その紅潮した頬を両手で挟むと少し照れたように視線をそらす。きゅ、と胸が締め付けられるような気持ちは、サイラスに教えられた。

「テリオン、キミは――

問いかけの言葉が途切れたのは、雄弁な唇を再び塞いだからだった。




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