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雪華
2020-01-19 21:41:19
4097文字
Public
テリサイ
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【テリサイ】動揺×すれ違い【女体化】
※サが先天性女体化です。自然と女性であるという前提で話が進みます。テリがうっかり先生にラッキースケベしちゃったら……っていう自分の妄想ツイートを具現化しました。話の大半はラッキースケベシチュエーションを作るための言い訳です。
「では、今日はここで野営にしよう」
時刻は日暮れ前、リバーランド地方の川の畔でハンイットがそう宣言した。
一行の旅はいつだって楽なものではない。町できちんと宿に泊まれる日もあるが、当然そうでない日もある。今日は道中思ったより魔物の数が多く、予定していた距離を踏破できなかった。
「では、俺はテントの設営をしてくる」
「わたしは少し食料の調達をしてこよう。干し肉もだいぶ少なくなっていたからな」
「じゃ、俺は野草でも採ってくるか。テリオン、手伝ってくれよ」
「
……
仕方ないな」
野営というのも慣れたことだ。元より旅の経験が多いオルベリクたちは、さっさと自分の役割を見つけて取り掛かる。去っていった四人を見送り、小さくオフィーリアが挙手をした。
「では、わたしはお料理当番を
……
」
「そうね、一緒にしましょう。サイラス、火だけもらってもいいかしら」
「ああ、そうだね。ランタンを貸してくれるかい」
「どうぞ」
プリムロゼからランタンを受け取り小さく呪文を唱え火を灯す。火起こしというのは大変な作業らしく、魔法で灯せるだけでも随分違うそうだ。
「それなら、先生はあたしと魚釣りね!」
「魚釣りか! 初めての体験だ。是非ご教授願うよ、トレサ君」
「ええ勿論。箱入り娘の先生に教えてあげるわ」
「ふふ
……
お手柔らかに頼むよ」
トレサに連れられるまま、川の畔を少し歩く。得意げに語る彼女曰く、海釣りと川釣りは少々違うが基本は似ているそうだ。いる魚の種類や、水深の違いにより仕掛けや餌を変える必要があるのだろう。この辺りがいいと足を止めた彼女に倣い、サイラスも立ち止まる。
トレサは手近な木の枝を拾うと、大きな鞄を降ろしその中から糸と鉤爪状の針を取り出す。針を糸に結わえ、それを木の枝の先端に取り付けた。
「餌はどうするんだい?」
「虫を使っても良いんだけど、こういうのはどうかしら。今日戦った時に拾ったのよ」
「魔物の羽根か。おもしろいね」
「でしょ! はい、こっちは先生のね」
「ありがとう」
派手な魔物の羽根を付け完成した即興の釣り竿を受け取り、トレサの隣に座って川に糸を垂らす。彼女の言う通りアトラスダムでそれなりの貴族の娘として育てられたサイラスにとって、旅は初めてのことの連続だ。初めて戦う魔物、初めて出会う人
――
それから、初めての恋。全てが新鮮で楽しい。
トレサを真似て釣り竿を揺らしていると、くんと軽く引かれたような気がした。おやと思う間に、今度はもう一度強く引っ張られる。
「先生、引いてるわ! 引っ張り上げて!」
「ああ
……
っしかし、かなり強い力で引かれているんだが
……
」
「踏ん張って! あたしも手伝
……
っあ、ちょっと待ってこっちにもアタリが
……
!」
「ットレサ君
……
! っだ、だめだ
……
あ、」
慌てて立ち上がって踏ん張ろうとするが、引く力のほうが強い。ずるりとサイラスの足が滑ったのと、ぷちんと釣り糸が切れたのはほぼ同時だった。そして引っ張られる力のままに、サイラスはそのまま川の中へと転落した。
突然身を切るような冷たい水中に投げ出され、慌てて藻掻く。ゆらりと魚影が逃げていくのを見ながら手をばたつかせていると、草を掴んだ感覚があった。掴んだ草を手繰り寄せるように体を持ち上げると、あっさりと水の上へと上がれた。
「先生! 大丈夫? ごめんなさい、あたし自分の釣り竿に夢中で
……
」
「っげほ、いや、いいんだトレサ君
……
私が無理をしすぎたんだ
……
」
無理だと思ったら堪えずに手を離していればよかったことで、完全にサイラスの判断ミスだ。軽く咳き込みながら、トレサに腕を引いてもらい川から上がる。水を含んだ衣類はずっしりと重たく、風が吹くだけでまた水に浸かっているのではないかと思うほど寒い。
「すまない、針を無駄にしてしまったね」
「それくらい良いの。大丈夫? 風邪を引く前に着替えたほうが良いわ」
「しかしそれでは夕飯が
……
っくちゅん」
「大変、早く! 釣果の方なら気にしないで、あたしが帳尻合わせておくから!」
はい!と鞄の中からタオルを出し渡され、ぐいぐいと背中を押される。そこまで言われたのなら、お言葉に甘えて先に着替えてこよう。どちらにしろずっとこのままでいるわけにはいかないのだから。
濡れたローブがずっしりと肩にのしかかって重い。そう思いながらテントへと戻ると、設営中だったオルベリクがぎょっとした顔でサイラスを見た。
「サイラス! どうしたその格好は
……
」
「トレサ君と釣りをしていたのだが、川に落ちてしまってご覧の有様さ。着替えたいのだが、テントはもう使えるかい?」
「片方はな。とりあえず荷物もテントに入れておいたから、着替えはそちらですると良い」
「ありがとう」
一行は男性用、女性用に一つずつテントを持ち運んでいる。設営が終わっている方のテントに身を滑らせると、彼の言ったとおり皆の荷物がまとめて置かれていた。
(着替えもそうないのだから、気をつけなければいけないな
……
)
とりあえず一番重たいローブを脱ぎ、次いでベストを。濡れて肌に張り付き不快なブラウス、スカート、それから靴下も。頭まで水に浸かったこともあり、下着までぐっしょりと濡れてしまっている。
その時、外でハンイットの声がした。オルベリクに手を貸してくれと頼んだようで、足音が遠退いていく。大物を仕留めたのか、もしくは魔物が出たのだろうか。と言っても今の格好のサイラスに手伝いはできないのだが。
「
……
は
……
っくしゅん! うう
……
早く体を拭かなければ
……
」
ラベンダー色の下着を脱ぎ、トレサから渡されたタオルで体を拭いていく。テントの中で全裸とはなんとも情けない格好だと思いながら、座り込んで自分の荷物に手を伸ばした時。それは突然だった。
シャ、と音を立てテントの入口が開く。接近に気が付かなかったのは、近付いてくる彼の足音があまりにも静かだったからだろう。はっと顔を上げるとその翠眼とはっきり視線が交わった。
「て
……
テリオンッ! ど、どうしてっ
……
!」
普段は何事にも動じることのないテリオンだが、流石に虚を衝かれたのか小さく目を瞠った。慌てて自分の体を隠そうと胸を抱き、足の間に手を入れる。カッと顔が燃えんばかりに熱くなり、体中からどっと汗が吹き出す。
――
見られた、見られたのだ!よりにもよって、好きな人に!
「ああっええとこれは、その、私、着替えをしようと。あの、川に落ちて
……
!」
「悪い」
「えっ?」
慌てて事の経緯を説明しようとしたサイラスとは対照的に、事態を把握したテリオンは短く謝罪をしただけだった。何事もなかったかのようにテントの入口が閉じられ、去ってゆく足音が聞こえる。
残されたサイラスは、ぽかんと間抜けに口を開けていた。普通異性の裸を見たら、もっと
……
『それなり』のリアクションを取るのではないだろうか。驚くとか、照れるとか、慌てるとか。けれどテリオンには全くその様子はなかった。本当に、例えば隣を歩いてうっかりぶつかったときのような謝罪だった。
(
……
もしかして、八つも年上の女の裸などどうとも思わないのだろうか
……
)
その可能性に気が付くと、羞恥で上がった体温がどんどん低くなってゆく。そうかもしれない。テリオンと同じ年頃の女性の体なら、きっともっと綺麗だろう。それに比べてサイラスと言ったら、プリムロゼやハンイットのように鍛えているわけでもない。脂肪の塊の柔らかい体、特にだらしない胸元なんてきっと彼の好みじゃない。
「
……
私だけ動揺して、馬鹿みたいだ
……
ひ、っくちゅ、」
もう一つくしゃみをし、軽く鼻をすすったのは少しだけ胸が痛んだからだった。
***
アーフェンに強引に野草取りに付き合わされ、識別を彼に任せて先に戻ろうとしたところトレサと鉢合わせた。籠いっぱいに魚を捕り得意げなトレサの大きな鞄を、先に持っていってやろうと提案したのは本当に気紛れだった。
テントの設営場所まで戻ってみれば、設営をすると言っていたオルベリクの姿はなく、テントは片方だけ組み上がっていた。地面に荷物が転がっていないところを見ると、組み上がっている方のテントに荷物を収納しているのだろう
――
テリオンがそう考え、トレサの荷物もそうしようと思い至るのは極々自然であったはずだ。
まさか思いもしなかった。いや、完全に油断していたと言うべきか。人の気配に気が付かない盗賊なんて我ながら呆れるが、テントの入口を開けた瞬間に時が止まった。
濡羽色の黒髪は本当に濡れていて、彼女の項を隠すように後ろに流れていた。普段はそう晒されることのない細い手首や、小さな肩が、握ったら壊れてしまいそうな足首までもを露わにしたサイラスがそこにいた。
思わず両者固まり、先に我に返ったのはサイラスの方であった。慌てて体を隠しながら珍しく要領を得ずに捲し立てる彼女の姿に、漸くテリオンの時は動き出し短い謝罪をしてその場を後にした。
「
…………
」
――
あまりにも鮮烈な光景だった。
好きな女の服の下くらい想像したことはあったが、実物は想像を遥かに上回った。日に焼けていない白い肌、豊満な胸元、掴みたくなるような柳腰。それから薄い下生えの、その下。抱きしめて、柔らかい肌を隅から隅まで味わいたい
――
そんな獣のような衝動に駆られた。
それに耳まで真っ赤にして狼狽していたところを見ると、テリオンのことを男として認識はしているのだろう。サイラスにとっては不運な事態ではあるが、なんとも可愛らしい反応を思い返すと口元が緩みそうになる。
「
……
ねえアーフェン、テリオンさんどうしちゃったの? さっきからぼーっと明後日の方向見て」
「知らねぇよ。話しかけても無視されっからさ」
「ふーん、なにかショックな事でもあったのかしら?」
座り込んで虚空を眺めるテリオンの姿に当然仲間たちは不審がる。しかし、極上の光景を脳内で反芻する男にその言葉は届かなかった。
***
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