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雪華
2019-12-15 10:42:20
2204文字
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テリサイ
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【テリサイ】知らないあなた【転生現パロ】
※転生現パロです。
テリ→前世の記憶なし/先生→前世の記憶あり
先生の方が先に死んじゃって、「私のことは忘れてくれ」とか言い残した。そんなところからはじまる転生現パロテリサイ。ちなみにヒスコは記憶あり、コデは記憶なしです。
――
自分の人生というものは、大きな流れの中のほんの一粒に過ぎない。二十二年生きてきたテリオンはあるときそんな風に自分の人生を解釈した。
どれだけ藻掻いても、足掻いても、流れに影響を与えることはできずただ呑まれて溺れていくしかない。テリオンにできるのは、せめて流れ着く場所をほんの少し変えることくらいだろう。最良を選ぶと言うよりは、最悪を避けるだけ。いつしかそんな人生をほんの少しの諦めと共に受け入れていた。
働いていた店が給料も払わずに倒産し、空っぽの店の前で次の職に思いを馳せていたテリオンに声がかけられたのもまた、流れの一つだったのだろうか。
「おや、もしや職をお探しですか?」
「
……
なんだ、あんた」
老齢の男は、今時珍しい燕尾服に身を包み静かに微笑んだ。曰く自分の名はヒースコートで、執事だという。自分の大切な『お嬢様』を守るため、新たな警備員の雇用を考えていると説明がなされた。
「
……
」
「もし職をお探しでしたら、如何ですか? 楽な仕事ではありませんが、安定した生活は保証できると思いますよ」
「
……
何故、俺に声をかけた? どう見たって信頼に足る人間には見えないだろう」
すると、ふとヒースコートが微笑む。その眼差しは不思議とテリオンを見ているようで、見ていないような。
「あなたは十分、信頼に足る人物ですよ。私の話を聞いて、信じてくれたのですから」
「
……
おかしなやつだな」
その落ち着いた佇まいにはどこか既視感を覚える。いずれにせよ職があるというのなら無下にする話ではない。
――
そうしてテリオンは、レイヴァース家に雇われることとなった。
***
テリオンの新たな雇い主はコーデリア・レイヴァースという少女だ。レイヴァース家と言えば名のある名家だが、数年前に事業の半分ほどを外部に譲渡したという噂を耳にしたことがある。事情についてはテリオンの知る由もないことだ。コーデリア達がテリオンの素性について聞かなかったように、テリオンもまたレイヴァース家について問うことはなかった。
「あ、テリオンさん!」
高校の校門に背を着けて腕を組むテリオンの姿を見ると、コーデリアはぱっと顔を輝かせ走り寄ってくる。客観的に見ても目を引く容姿のコーデリアが、得体の知れない男に親しげな笑顔を向けることに周囲の生徒がざわめく。
「迎えに来てくれたんですか?」
「ああ。ヒースコートが今日は手が離せないらしいからな。歩きで悪いが」
「いいえ! 私、歩くのは好きなんです。季節の移ろいを感じながら考え事をできますから」
「
……
それならいいが」
あえてヒースコートがテリオンを迎えに寄越したのは、牽制の意味もあったのかもしれない。じろりと視線を遣ると、男子生徒達は慌てて顔を逸らした。コーデリアの手から鞄を奪い取り歩き始める。
「あっ、わ、私自分で持ちます!」
「いい。どうせ手持ち無沙汰だ」
「重たいですから
……
」
「だったら尚更だろ」
制服に身を包んだ少女は、実年齢より幼く見える。けれどその瞳の奥には孤独と、そしてそれを乗り越える強い輝きを秘めていた。
暫く歩いて大学の前を通ったとき、ちょうど門から出て来た人物がいた。男はこちらを見てはっと目を見開き、足を止める。すっと通った鼻筋に形の良い唇、一つ一つのパーツの形も位置も完璧に整った美しい男だった。
――
その澄んだ碧眼は真っ直ぐにテリオンを見つめている。
「
――
……
」
「サイラスさん!」
「
……
誰だ?」
コーデリアを庇うように立つと、真っ直ぐこちらを見ていた視線が揺らぐ。すっと視線を逸らしたかと思うと、愛想良く微笑んだ。
「私はサイラス
……
サイラス・オルブライトだ。コーデリア君とは古い知り合いでね。キミは?」
「
……
」
ちらりと背後のコーデリアに視線を遣ると、にこりと笑って頷く。どうやら知り合いというのは本当らしい。
「サイラスさんは大学教授で、以前家庭教師をしてもらったことがあるんです。専門分野は勿論ですが、色々な分野にお詳しいんですよ」
「私はただ知識に貪欲なだけだよ。ヒースコート殿はご一緒ではないのかい?」
「はい。今日は別の用があるようでして。サイラスさんは今お帰りですか?」
「ああ。ここ暫く忙しかったが研究が一段落したからね。
……
引き止めてすまなかったね。気をつけて帰るんだよ」
「ありがとうございます。是非また、ヒースコートにも会いに来てください」
軽く会釈をしてサイラスと名乗った男と別れる。翻る黒いコートの裾に視線が奪われたのは何故だったのだろうか。どこかで見たことのある光景のような気がした。
***
――
その晩、テリオンは夢を見た。虫食いだらけであやふやな夢だが、胸の痛みだけは鮮明に感じた。
『 』
誰かが寝台に横になっていた。テリオンは細い指を必死に握りながら、祈るようにその手を額に付ける。
『
――
私のこと
……
』
ざあざあとノイズが酷い。薄く開いた瞼から覗く青い瞳が、ぼんやりとこちらを見つめている。
『
……
忘れてくれないか』
ぐにゃりと視界が歪み、目を覚ます。思わず顔に手をやると頬が濡れていた。汗はでなく、涙だ。
「
……
何故
……
」
どうして自分は泣いているのか。夢の中の人物は一体誰だったのか。呟いてみても、当然答えは返ってくるはずもなかった。
***
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