雪華
2019-11-27 23:02:25
2986文字
Public オルサイ
 

【オルサイ】硬いところを柔らかく

イチャイチャしてるやつ。ブツは出てないけどちょっとだけえっちな雰囲気はあります。サ先生って体硬そうだよね~って思って浮かんだネタです。

その晩は、お誂え向きに全ての条件が整っていた。日中の旅程はさほど険しくなかった上、きちんと宿も取れ、湯船に浸かってしっかりと体を温めた。そして極めつけは恋人と相部屋という点。実に理想的な夜だった。

……ではオルベリク、よろしく頼むよ」
「ああ……無理をさせるつもりはない。辛かったり、痛みを感じたらすぐに言うんだぞ」
「うん。上手く出来るかどうか分からないが頑張ってみるよ」
「はじめのうちはぎこちなくて当然だ。慣れてくれば簡単にこなせるようになるだろう」

互いに宿の寝間着を身に纏い、二人きりの部屋で立ったまま向き合う。真剣な声色のサイラスに釣られるように、オルベリクも神妙な顔で頷いた。
そっと分厚い手の平がサイラスの肩に触れる。湯上がりだからか、衣服越しでもその手がいつもより温かく感じた。サイラスを見下ろす瞳はどこまでも優しい色を湛えている。

「そうだといいんだが。何しろ、一朝一夕で身に付くものでもないだろうからね」
「こればかりは日々の積み重ねだな。ではまず、足を肩幅に開いて指を組んでくれ」
「こうかい?」
「そうだ。手の平を天井に向けながら両腕を上げ、体を伸ばして――
「ん、んー……

言われるがままに体を伸ばすと、ぱきと肩の関節が小さく鳴った。上げた腕が耳に付くように、両の腕を外側からオルベリクが抑える。ぐぐっと伸ばして、ゆっくりと戻し、また伸ばす。

「息を詰めるな。ゆっくり吸って、吐いて……そうだ。腹は軽く凹ませて、ああ、腰は引くなよ」
「うっ、」

手の平でお腹を押され、つい引いてしまった腰をぱしんと軽く叩かれる。痛みはないが慣れぬ触れられ方に思わず声が漏れた。腰や腹筋を刺激し体の血行を良くするためだとオルベリクの話を聞きながら、これまた慣れぬ動作を繰り返す。

――さて、何故サイラスがこのようなことをしているのかというと、話は数日前に遡る。
紆余曲折あり心も体も結ばれた二人は、時折秘密の閨事に勤しんでいた。行為には幾らか慣れたはずだが、最中に必ずと言っていいほどサイラスは痛いとこぼしてしまう。オルベリクの規格外とも言える大きさの性器を受け容れることに――ではなく、足を大きく開かされ体を曲げられるような体位が辛いのだ。
そしてとうとうとある晩、オルベリクは心配半分、そして呆れ半分と言った顔で呟いたのだ。『お前、少々体が硬すぎるのではないか』と。

自分の体の硬さなど今まではさほど気にしていなかったが、愛し合う行為の障害になってしまうとは如何ともし難い。更に体が硬いと怪我をしやすいとも指摘され、いよいよこの問題を捨て置けなくなった。そしてオルベリクに体を柔らかくするためのストレッチの指南を頼み、今晩に至るというわけだ。

「ん……っはぁ、これだけでも結構効いている気がするよ」
「普段いかに筋肉を使っていないかよく分かるな。よし、次は床に座ってくれ」

言われるがままに大人しく床に座ると、サイラスの後ろにオルベリクも座る。まるで後ろから抱き締められるように腕が伸びてくるとドキリと心臓が跳ねた。

「両足の裏を付けて、踵を自分の方へと引き寄せろ」
「う、うん」

大きな手がサイラスの足を掴み引き寄せる。そうなると自然と、オルベリクの体がぴたりと背に重なってくることになる。その身から石鹸の香りが漂ってきて妙に胸の鼓動が速くなった。

「膝をゆっくりと下げて、痛む手前で止めるんだ」
「ええと……これくらいかな」
「ああ。3つ数え終わるまでそのままキープして……よし、緩めていいぞ。これを後4回繰り返すからな」

一度意識しだすとどうにも良くない。耳元で言い聞かせるように喋る彼の声が、熱となって吹き込まれていくようでじわじわと顔が熱くなってゆく。ぴたりと重なり合った体に自分の鼓動が伝わらないことだけを祈りながら、指示されるまま柔軟体操を続ける。

「背中は丸めずにな。俺に凭れ掛かるようなつもりで、ほらもう1回」
……っん……
「力を込めすぎず、リラックスしながらな」
「う、ん……

普段使わない箇所を動かしているからか、急な運動ではなくとも額にじっとりと汗が滲む。5回やり終えてほうと息を吐き、足を崩した。

「今日は次で最後にしておくか。胡座をかいて座って、左脚を斜め前に伸ばしてくれ」
「ああ……
「両手を太腿に添えて……そうだ、息を吐きながらゆっくりと倒していくぞ。痛くなる手前で止めるからな」
「っ……痛」
「ここだな。また3秒キープするぞ」

逞しい胸板に背中を押されながら体を倒し、止める。3秒止めたら一度体を起こして、またゆっくり倒す。先程よりも足や腰、股関節に負担がかかるストレッチは決して楽ではない。しかも覆い被さってくるオルベリクの息遣いを感じると、体への負荷以上に心拍数が上がってしまう。

「んっ……?」

サイラスの膝を押さえていたオルベリクの手が、不意に手前側に滑る。薄い寝間着の上から太腿を撫でるように滑らされると、ぞわぞわと背筋が震えた。くすぐったいような、しかしそれだけでは終わらない感覚だ。足の付根に辿り着くとそのまま内腿を指先で軽く揉まれる。

「ッ、オルベリク……?」
「ほら、もう一回だ。曲げるぞ」
「ん……ねえ、指……そんなところ、触る必要あるかい……?」
「体を解しているんだ。……よし、反対側も同じようにするぞ」

一旦体を起こして、今度は右足を伸ばしてまた体を曲げてゆく。オルベリク曰く『体を解している』という指先は次第に大胆になってきて、太腿を手の平でふにふにと揉んだり、指先を悪戯に滑らせ擽る。

「っはぁ……ん、オルベリク……
「どうした?」
「集中できないよ……指もだが、その……

はぁはぁと息が浅くなり、指先がそこに近づくと期待に喉が鳴る。明らかに柔軟体操の枠をはみ出した指先と、それから下半身に押し当てられる硬いものに抗議をすべく唇を尖らせた。

……当たっているんだが」
「当てているんだ。……ほら最後の一回だ、ゆっくり息を吐いて」
「ふ……っく……
「よし。……今日はこれくらいにしておこう。お疲れ」

腰に腕を回して体を起こされた、かと思うとそのまま寝台に運ばれる。真っ白なシーツの上に押し倒されて、サイラスは態とらしく首を傾げてみせた。

……終わりではないのかい?」
「ストレッチはな。……良いだろう?」
「言っておくが、いつもこれでは困るよ。私の体が休まらない……だから」

サイラスとて同じ男だ。湯上がりの恋人とくっついているうちに『そのような気分になる』ことは分からなくもない。ただこれからストレッチを日々の日課にする以上、毎回この様な流れになると困るのも事実だ。そっと太い首に腕を回し、引き寄せながら囁く。

……今晩だけだよ?」

釘を差したつもりだったが、それは立派な誘い文句として彼の耳に届いたらしい。痛いくらいに抱き締められながら、たまになら悪くもないかと思った自分は大概恋人に甘い。
――慣れないストレッチに激しい運動と酷使した体が、翌日酷く痛んだのはまた別の話だ。


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書いてる人がストレッチには全く詳しくないので、作中のストレッチは万が一にも試さないほうが良いと思います。




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