雪華
2019-10-09 23:02:58
1672文字
Public オルサイ
 

【オルサイ】食事の摂り方

オルサイがイチャイチャしてるだけの話。食事のとり方とセックスの仕方って共通するってよく言いますよね。

「あーお腹空いた! さぁ、食べるわよ!」
「ふふ、相変わらずお元気ですねトレサさん」
「食べれる時にちゃんと食べておかなきゃね! それじゃぁ、いただきます!」

旅人たちの夕餉は外で調理をすることもあれば、こうして町で摂ることもある。今日は後者で、小さな町ながらも活気付いている酒場に入り、注文した料理が運ばれてきたところだった。
――旅に出て初めてサイラスは料理というものをするようになったが、知れば知るほど奥深い。そして座って注文するだけで食べられる美味しい食事の有り難さを再認識した。

(奥深いと言えば、そうだな……

丸いテーブルを囲むように座った仲間達の顔をぐるりと見渡す。オフィーリアはまずは温かいスープを口にし、プリムロゼはサラダを、ハンイットはメインディッシュの豚の香草焼きをフォークとナイフで解体に掛かり、トレサはパンを齧りながら期待の眼差しでそれを見つめる。同じ食卓を囲っていても食べ方は様々だ。
ちらりと右隣に座るオルベリクを見遣る。彼は食事時もどちらかというと寡黙だが、全てをその身の血潮にすべくよく食べる。肉も魚も野菜も偏りなく胃に収めながら、大皿に残って少し冷めた料理を片すのもいつの間にか彼の仕事になっていた。
見ていて清々しいくらいの食べっぷりだが、その食事風景は美しいものだ。魚の骨などは骨同士が繋がったままきれいに外すし、口元を汚したりもしない。命に敬意を払い、乱暴に食すのではなく一口一口をとても丁寧に味わう。

……サイラス? ぼーっとして、どうしたんだ?」
「ん?」

正に視線の先にいた人物に話しかけられ、はたと気が付く。誤魔化すようにスープを一口すすると想像していたより温度が低かった。ぼんやりとしていて完全に手が止まっていたサイラスを咎めるように小言を呟き、オルベリクは眉根を寄せる。

「考え事は良いが、食事はきちんと摂れ。明日に響くぞ」
「ああ、ありがとう……っと、そんなに食べられないよ、あなたとは違うのだから」
「む、そうか。お前は食が細すぎるんだ」
「あなたとは運動量が違うのだから当然だろう? 心配してくれるのは嬉しいけれど、食べ過ぎも体に悪いからね」

大皿からどさどさと肉料理を取皿に盛られ、山になる前にそれを制した。サイラスとて成人男性並みには食べるのだが、やはり体が資本の騎士と頭脳労働の学者では認識が少々違うらしい。苦笑しながら柔らかい肉を口元へと運んだ。

――和やかに食事を終え宿へと向かう。今日は二人部屋を取ることになり、いつからか決まった組み合わせでスムーズに部屋割が行われた。皆におやすみと挨拶をして部屋の扉を開け、部屋の奥の寝台にサイラスは腰掛ける。

……で、お前は一体、あの時何を考えていたんだ?」
「夕飯の時かい? そうだね……我々は食べ方だけ見てもそれぞれ違っていて面白いと思ったのが一つ」

オルベリクが隣に座ると、少し寝台が沈む。こてりとその逞しい肩に頭を載せたのは体が傾いたからか、それとも彼に腰を抱かれたからか。どちらだとしても、これから行うことに比べたら些細なことだ。

「他には?」
「もう一つは、読んでいる本に興味深い話があってね。食事の仕方と性行為には共通するものがある、という話なんだ。それで気になってあなたを観察していた」
……お前は皆の前で何を考えているんだ……

ため息をつきながら、そっとオルベリクの指が頬を撫で、耳の形をゆっくりとなぞる。くすぐったくて小さく身を捩ると太い指が唇に触れた。

……それで、どうだったんだ? 共通していたか?」
「そうだね……よく食べるということは性欲が強いとも置き換えられるだろう。それから、あなたはいつも丁寧に食事を摂るだろう? 私のことも……その……
「そうだな。いつもお前に夢中で、一欠片でも残せんからな」
「ふふ……今晩も私を美味しく頂いてくれるかな」

返事はなかった。重ねられた唇だけが答えで、熱いくらいの彼の体温が愛おしくて貪るようにその身を強く抱き締めた。




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