バラ肉
2024-12-20 16:09:34
2732文字
Public
 

二世のアタブロR15

二世のアタブロ(続)

*****


次の日の朝。

「なんだ、早いな……
「ん? ああ」

今日は先に起きていたのか。
キッチンに立つブロッケンJr.は、遅れてやってきたアタルに視線と共に朝の挨拶を投げた。その手にはレードルが握られており、昨日の約束通り本場仕込みのスープを作っていたのだろう。

「おはよう。キャプテン。ちょうどさっき出来たところだぜ?」

腰に巻いた黒字のエプロンを外しながらアタルに近づく彼は、やや気恥ずかしそうに眉を下げた。もちろんそれは、昨日の今日で早速実行した自分の簡単さ——へ向けたものでは無い。

「おはよう、ブロッケンJr.……しかし、その声は」
「ああ、これ?」

アタルが言う通り、己のしゃがれた声について居た堪れ無かったからだ。
(指摘されるとは思ってたけど、こんなに早く気付くなんて)
目敏い男にやれやれと両手を上げる。
元々酒焼けしてはいるものの、今日のブロッケンの声は明らかに枯れていた。
「大丈夫か?」
……まあ、なんとかな」
んんッと喉を鳴らす様子からして、本人としても喉の異変に自覚があるようだ。
ケホッと空咳をして調子を整えようとするものの、その程度で戻るわけもなく。
「少し無理をさせすぎたか?」
心配そうに顔を覗き込む男に、ブロッケンは何とも言えない笑みを浮かべることしか出来なかった。

(まあ、あれだけヤればな)

少し、という表現は引っかかるものの、アタルの言った言葉は概ねあっている。

なぜなら、昨夜も含め、再会してからこの方、ブロッケンは目の前の男に毎日のように寝室で鳴かされているのだ。
むしろ今まで無事だった方がおかしいというべきか。




再会してから、初めてベッドを共にすることにした夜。

『もう良いオッサンなんだ。声は極力聞かせたくない』
そう宣言したブロッケンに対し、アタルは決して「うん」とは言わなかった。
むしろ、そんなことは許さないとばかりに即座に押し倒す流れはまさに傍若無人で。さながら嬌声を上げさせることを目的となっていたのでは?と思うほど、その後の愛撫も激しかった。
弱点と知っている乳首を腫れ上がるほど弄り、イきたいと泣きじゃくるペニスは泣いて懇願するまで射精を許さず。そして後孔を突き上げる熱杭は、昔と同様に遠慮知らずに胎内を攻め尽くしていく。

「もう嫌だ」「無理」「やめてくれ」 

その度に、若かりし時分に吐いたのと同じ泣き言を何度吐きそうになったことか。
いくらブロッケンに行為へのブランクがあったとしても、アタルの歳を感じさせない猛攻はくたびれた体には些か激しすぎた。
実際、彼の逞しい両肩に担がれた足は、いつ攣ってもおかしくないほど与えられる快楽にビクビクと痙攣したものだ。
敏感な内壁を長大な屹立がかき混ぜる。ズルズルと引き抜き、ズンっと勢いよく擦り上げる。それらは長いこと男の味を忘れていた体には辛く、きつく。

(このままでは死んでしまう)

本人の意思とは関係なく、蹂躙を受ける体はひたすらヒィヒィと悲鳴を上げていた。
そもそも長らく超人レスラーとしての看板を下げていたブロッケンと、泣く子も黙る超人警察を従える男。両者の力の格差は昔以上に歴然。

「んっ、ぐっ……ぅんん゛ッ!」

痛いほどに掴まれた腰は逃げを打つ力さえなく。

「あた、ル……ッんぉ゛!」

律動に合わせて腹の上のペニスが揺れ、互いの腹筋を白濁混じりのカウパー液が汚していく。

もう本当に、止めなければ。

グジュッ!と最奥目掛けて押し込まれる亀頭に、一体幾度目の前が真っ白になったか分からない。

しかし、見上げた先にある碧眼の中に自分の姿を見つける度に——彼は静止を紡ごうとする唇を、乱暴に噛みしめたのだ。

この男と繋がっている。
その事実に痛いくらいに胸が高鳴り。

『ブロッケン……!』

鼓膜を揺らす低い声が、己の名を呼び、求めてくる。汗だくになり、一つになろうと躍起になる。

『ンァッ......! ハッ……、あ、ぐぅぅッ……

何度夢に見ただろう状況を、どうして否定することができるだろうか。

結局、口に出さないどころか、逆にもっとと強請るよう、甲高い嬌声を上げながら相手の太い首へと腕を絡めたのは、最早彼への愛としか言いようがない。
この健気さには、きっと生娘さえ逃げ出すだろう。

特に昨夜は……セーブすると言っていた割に、興がのったのか。
一際激しい攻めに、喉はもちろん後孔の方もヒリヒリと腫れ上がっている。あたかも未だに彼が残っているような違和感に、腰がぎこちなく揺れる。

(だから、すぐに目が覚めた……って言ってたらどんな顔をするだろうな?)

そんな悪戯な事を考えつつも、ブロッケンは自分が体を庇っていることがバレないようにシンクに手を着いた。
実際は、心配なんてかけさせたくないから。

体がどんなに悲鳴を上げようと、痛いほど求められる度に心は「嬉しい」と、「満ち足りている」と叫ぶから。



「ブロッケン……
気遣う眼差しに、ブロッケンは静かに顔を左右に振る。

「オレは平気だ。だから……

気にせず、このままずっと愛してくれよ。

照れくさそうに微笑む顔の奥に潜めた思い。

「っ!」

それが、痛いほどアタルの胸へと突き刺さる。
背後の窓から差し込む朝日に照らされたブロッケンの顔は、若かりし頃からは想像できないほどに老いた。だが、儚さと清廉さを纏う空気と煌めく瞳は相変わらず、見惚れるほどに美しい。

(言われずとも、日を追うごとにお前への愛が大きくなる)

多くを語らぬ男は、ブロッケン同様、敢えて眼差しだけでその思いを送った。
どうせ声に出したところで、きっと伝わるのは一部でしかない。まだまだ、互いの思いを擦り合わせるには時間は必要だ。

ならば、自分達に合った方法で確かめよう。
かつてと同じように、目と目で通じ合おう。

「ククッ。……相変わらず熱烈だな、アンタの目は」

そんな憎まれ口を叩く相手に、アタルはフンッと鼻を鳴らすのだった。

「まあいいや。……少し早いが、とりあえずは朝飯にでもするか? アンタとオレの一日の始まりとして」

昨日の自分と同じ言い回しで朝食を託す相手に、ますますのめり込んでいくのを感じながら、彼は心底楽しそうにマスク下の口元を緩めた。


(嗚呼、今夜も容赦できんかもしれんな)


なんて。

チュッ
可愛いリップ音と共にいけない大人達の一日が始まる。

「愛している」

どちらともなく呟く告白は、甘く。
新婚さながらに、二人のとろけるような蜜月の日々は、まだ始まったばかり。