三毛田
2024-12-18 22:22:28
2893文字
Public アドベント24
 

18. 目と目があったら

18
君と触れ合う合図

……
「丹恒、それウチが狙ってたご飯!」
「早い者勝ちだ」
「あ〜! 穹!!」
「へへーんだ」
「うるさいと追い出すぞ」
 パムがジトッとした目でこちらを睨んでくるので、大人しく席に着く。
 今日はパーティー車両で、ブュッフェスタイルご飯。
 食材を注文したら、想定よりも多く届きすぎたらしい。
 どうやら、廃棄するしかない規格外? の食材が入っていたという。ちなみに料金は変わらないという。
 まあ、味に問題がないなら、使おうというのがパム。自分用のご飯に回すには多いけど、ナナシビトの俺たちに提供する分にはいいかと考えたらしい。が、頷いたら次から次へと届けられたらしく。
 処理するよりは心は痛まないけど、手間が増えてるんだよな。
 保存が利くものは保存できるように加工して、それ以外のものを使ってパムがたくさん作ってくれた。
 姫子以外は手伝いました。任せたら駄目だと、本能が告げていたので。
 シャラップも手伝ったらしい。詳しくは知らない。
「三月ちゃん、まだあるからそちらを食え」
「うう……車掌さんがそう言うなら、そっちにする」
「丹恒、あーん」
「あ。美味いな。ほら、穹」
「あーん。うん! これも美味しい!」
 丹恒と二人、持ってきたご飯を少しずつ食べさせ合う。
 普段の俺なら選ばないものを丹恒が選び、彼が選ばないものを俺が選ぶ。
 そうして、二人で食べさせあうのだ。
 そんな俺たちの様子に慣れているなのは、若干恨みを込めた視線を向けながら俺たちの隣に腰掛けて。
「ウチが狙ってたご飯を二人でそうやってイチャイチャしながら食べるの、ウチに悪いと思わない?」
「思わないな」
「気になるなら、別の席に行けばいいじゃん」
「うう……穹、一口!」
 どうしようかと思って丹恒を見ると、彼もまたこちらを見ていて。
 目と目が合って、ちょっと恥ずかしい。
「そこ、見つめ合って照れないの!」
「だって、丹恒が美人だから」
「お前は可愛いな、穹」
「いちゃつくなら、部屋に戻れ」
 と、スープを届けてくれたパムから、意外と辛辣な一言をもらってしまった。
「あー、美味しかった。お腹いっぱい」
……
「丹恒先生、無言で俺のお腹撫でるのやめてくださーい」
「食べる前よりも、膨らんでいると思ってな」
「食べすぎちゃったからさ。丹恒のお腹だって同じじゃない?」
 と、シャツの上から撫でてみるもいつも通り腹筋の凹凸が並んでいるだけ。
「あれ~?」
「お前の半分くらいしか食べていないからな。満足したか」
「あーん……丹恒のお腹が膨らんでいるの、見てみたかったのに……
 胸に顔をつけて服の上からおへそをつついてみたり、もう一回上から下へとお腹を撫でてみる。
「穹」
「なーにー?」
 招くように手を動かしたので、顔を近づけてると。
「お前のが入っている時は、意外と腹が膨らんでいる」
「ひょわっ」
 耳元で、そんな艶のある声で言われたら元気になっちゃう。
「た、丹恒せん、せい?」
「お前のが入っていた後は、暫く食欲が落ちる。知らなかったか?」
「し、知りません……
 声はだんだんと尻すぼみに。おまけに、顔は熱い。耳まで真っ赤になってる気がするんだけど。
「こちらの準備はもう万端なのだが、抱かないのか」
「俺、満腹ギリギリだから、運動したら吐く」
「それは困るな」
 ふむ。と頷きながら、俺の顎を撫でて。
 そういう動作も本当ならやめて欲しいところである。
 何故? 大変にえっちだからですね!
「腹が落ち着いたら、抱いてくれるか」
 というか、今日の丹恒積極的すぎない?
「丹恒先生、変なもの食べた?」
「お前と同じものしか食べていないが」
「じゃあ、食べ合わせが悪かった? それとも、持明族にだけ利くものでも入ってた?」
「何をブツブツ言っているんだ、お前は」
 そう言いながら上着を脱ぎ、俺を仰向けにさせると腰の上に乗ってくる。
 そして前後に動き出して。
「たん! こう! せん! せい!!」
「お前は動かなくていい。俺が動くから」
「だから!」
 毒とか食べてないよね!?
 というよりも、持明族にとって媚薬みたいな効果になる食べ合わせってあるの!?
「きゅう」
 あー……これは、一発抜くまで納得しないパターンですね。ハイ。
「じゃあ、一回だけだから」
「ああ」
 嬉しそうに笑みを浮かべ、いそいそと俺の服を脱がし。
 その後、自分の服を脱いで。
 一回だけって言ったのに、結局飲月の姿でもノリノリだったので二回しました。
「うへ……吐くかと思った」
 すやすやと、穏やかな寝顔を浮かべて眠っている丹恒の髪をそっと撫でる。
 気が緩んでいるのか、一度戻ってからずっと飲月だ。
 ほっぺを引っ張ってみる。ちょっとだけ柔らかい。
 大きく伸びをして着替えてから、階下へ。
「パム、なんかさっぱりするものない?」
「かんきつ類で作った飲み物でよいなら、すぐに提供できるぞ」
「お願いします。ところで、今日のご飯の食材の一覧って合ったりする?」
「飲み物を出したらかき出すから、ちょいと待て」
「はーい」
 尻尾を軽く振りながら、パムは楽しそうにジュースを用意してくれる。
「今日のご飯、どれも美味しかったよ」
「それはよかった。オレも初めて作ったものがたくさんあったからの。口に合ったようでよかった。惚れ、出来たぞ」
「ありがとう」
 うん。甘いけれど、口の中がさっぱりする。
「美味しい。これも通常メニューにして欲しいくらいだ」
「オレもそうしたいところじゃが、その果実は今回のみなんじゃ」
「それは残念。でも、また入手出来たらお願い」
「うむ」
 俺がお願いすると、パムも気に入っていたのか小さな手でメモを取って。
 果実の名前、砂糖の量、作成手順。
 作る時、この手順なら俺も手伝えるだろうか。
「丹恒はどうしたんじゃ」
「お風呂入って寝てる」
「珍しいの」
「俺はまだちょっとお腹いっぱいだから、さっぱりしたものが欲しくって」
「そうか」
「手伝うことはある? 腹ごなしにちょっと動きたいからさ」
「ある程度片付けてあるから、後はもう大丈夫じゃ」
「そっか。ジュースありがとう。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
 手を振ると、小さく手を振り返してくれて。
 階段を上り、自室に入って服を脱ぎながらバスルームへ。
 とりあえず、湯船に浸かるのはよしておこう。
 髪を丁寧に洗い、体も洗う。
 歯磨きもして、部屋に戻ると丹恒が起き上がっていた。
「おはよう」
「ん」
 毛先をいじりながら、頷く。
「お風呂、入る?」
「汗を……
 と言いながらも、怠いのか眠いのか瞼は閉じたり開いたりと忙しい。
「きゅう」
「どうした?」
「眠い……
「じゃあ、そのまま寝ちゃおう。お風呂は、明日の朝に入ればいいから」
 見つめるけれど、眠すぎるようで見つめ返してくれない。残念だ。
 ぱたんとまた枕に突っ伏して。眠ってしまう。
 もう一回って言われなくてよかった。