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ortensia
2024-12-07 14:05:58
2536文字
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その他てて
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👒🤕✂️
時空は謎。←
不調✂️←を見て混乱👒←を見て何事🤕
しまった。
エマはナワーブに肩を掴まれて目の前の光景を見て、やっとそれを自覚した。数日家を空けていたナワーブが戻って来ていることにも気付かなかった。
こうなる前、そもそもの始まりは、ジャックの不調だった。
この自称芸術家は、健康優良児でもなければ、規則正しい生活も送っていなかったが、常に機敏はしなやかで、堂々とした立ち居振る舞いの身のこなしをする男だった。なんならわざと大袈裟に動いて、相手の神経だって逆撫でしてみせる、余計な動き迄する困ったちゃんだった。
その男がふらりと立ち眩む動きをした。ひらりではない、ふらりだ。そんなベッドから起き上がれないさまは、こうべを垂れて、ふわふわと寧ろ首が座っていないようにも見えた。
どうやらふらついているのは体だけではないようで、普段は眼球がないのに目が合っていると知らしめているそこは視線をふらふらと彷徨わせ、それだけでなく、いつも突飛な作品を生み出すこともある頭の中では、なんの像も上手く結べないらしい。覚束無い言葉の端々によくよく聞き耳を立てて結び付けると、どうやらそんなようなことを言っていた。
極め付けは、普段温かさも冷たさも感じない不思議な頬が、はっきりと熱を持っていたことだ。
エマはジャックを寝かせて大人しくしているよう厳命し、病人食に取り掛かった。何か嚥下するのもつらそうだった。出来るだけ固形物じゃないものが良いだろう。そう思い、調理に取り掛かった。
つもりだった。
エマはこの時自覚なく動揺していた。そうすると当然、他には意識の頼りないジャックしかいないため、彼女のその心に気付ける者は一人としていなかった。
エマが作る病人食とは、彼女の母親が作ってくれたそれだ。
彼女が幼い頃、風邪をひいて体のだるさと心の寂しさに寝込んでいると、どこからともなくあたたかい気配が彼女のそばに寄り添い、それを食べることを手伝ってくれるのだ。苦味を知っている筈の薬でさえ、その時ばかりは飲まされてもまるでどこか他人事のようだった。
それを思い出して、料理を思い出して、母を、思い出して。エマの中は思い出が混濁していった。
「やっ
……
てしまったの。」
正気を取り戻し、自分のしでかした行いに苦い顔をする娘は、まるで自分が苦い風邪薬でも飲んだみたいだ。ナワーブはそんな彼女をみとめると、揺り動かしていた肩から手を離した。
エマの目の前にあったのは、出来立てで甘い香りを上げる、アップルパイだった。
「寝室見て来た。湿らしたガーゼを頭に当てて遣ったが。おまえ、おれに連絡して来いよ。」
「
……
そうだった。」
「
……
いいけど。」
帰宅して違和感に気付いたナワーブは、手洗いうがいを手早く、けれどしっかりと済ませると、荷物を持って寝室に入った。そこでは長身の男がその体を溶かすように寝ていた。そっと顔に触れると、慣れない温度だった。
違和感には気付いていた。普段家の中でする音や声が違った。その割には台所からするのは甘い匂いで、そんなの違和感しかない。
家には病人のジャックとエマしかいなかった。エマの考えを察せられる人物でなくとも、病人がいるのに台所で作っているのがアップルパイであれば、例え何を作っているのか分からずとも、その手順からして誰もが不審に思っただろう。他に誰かがいれば。
「水を取りに来た。薬は?」
「まだ。」
「じゃあ一緒に飲ませるからな。」
「お願い。」
はあっ、とエマは大き過ぎる程の溜め息を、投げ落とすように吐き出した。
「あんま肩肘張るなよ。」
「うん。
……
帰って来たばかりのところ、ごめん。」
「だから肩肘張るなって。
……
そのアップルパイ寄越せばチャラにしてやる。」
「それは勿論
……
」
そんな遣り取りをしていれば、かたりと扉から音がする。ジャックだ。
「大人しくしててって
……
!」
言い募ろうとするエマを片手を上げて制したナワーブは、ジャックに近寄り、自分がその体の支えになるようにそばに立った。まだかくりと首が傾いだ儘だ。
「それ、くれるんですか?」
格段に覇気のない声でジャックが言った、それ、とは、未だ香ばしいアップルパイだ。
「これは駄目よ!」
エマは咄嗟にアップルパイを遮るようにして立った。
「だめ、なんですか?」
ジャックは不思議そうに言った。エマが声を荒げる理由が分からないのだろう。その様子がエマには寂しそうに見えたので狼狽えた。しかし引くわけにもいかない。そう思っていた。
「まあまあ。良いじゃねえか、スプーンの反対で潰せば、飲み込めるもんになるだろ。」
ナワーブがそう言った。一口でも良いのだと、その一本立てた人差し指が自己主張に揺れて言っていた。そしてジャックが握り締めていた濡れたガーゼをそっとその細長い指を剥がして受け取っていた。
は、と息をついて、エマは無意識にいからせていた肩を落とした。
「
……
任せて良い?」
「当然。」
ナワーブが危なげなくジャックを引き摺って寝室に引き返す。
エマは手早く、白湯と薬、それからアップルパイを食器に用意して、お盆に乗せて後を追った。
ベッドではナワーブがぽーんぽーんとジャックの肩の上で掌を弾ませていた。エマが部屋に入ると盆を受け取った。
「おまえちょっと
……
一回ゆっくり風呂にでも浸かったら?」
ナワーブがエマを見ることもなしにアップルパイを潰しながら言った。それは帰宅したナワーブにエマが言いたいことだったのだが。
「
……
ポトフを作るの。」
「ああ、良いんじゃね?大丈夫か?」
ナワーブがジャックを見遣りながらエマに賛同する。そしてそれが可能なのか確認する。
エマは切り分けられた内でまだ原型を留めた自作のアップルパイを無造作に掴んで、その勢いの儘ナワーブの口に突っ込んで黙らせた。
「おまえは何も知らないの、良いね?」
エマが見下ろす先では、ナワーブが目だけで笑いながら咀嚼して頷くので、エマはアップルパイを自分の口にも雑に放り込んで、寝室を後にした。
程無くして、玄関にも寝室にも、甘美な目立った芳香は無いけれど、家じゅうに広がるあたたかい湯気が上がった。
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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。
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