でかい身長の男がべっちゃりと机の上に広がって伏せて居る。その邪魔な腕を雑に広げて自分のカップを落ち着けて向かいに座った娘は、なんならその男に見向きもしない。
「別れたい……」
「はいはい。それ前言ってたのは、いつだっけ?」
娘にどこか縋るように唸った男に、当の娘はゆっくりとカップに口を付けてから、ゆっくりと相槌を打った。
「先月の……夜に……」
「夜ね。」
はいはい、とまた娘は訳知り顔で、否、何も知らないと、悪戯っぽくカップに口を付けながら相手をして遣る。
「今回は、なんでまた?」
「あの男が連絡を寄越さない……。直近の遣り取りがわたしで終わってるなんて、生意気な……!」
思い出し怒りして居る。
と言っても、その件の人物が連絡を取れないのは、仕事で身動き取れない状況だからだ。本人も不本意であろうし、なんなら当人が一番不安定も顕に苛立っているかも知れない。彼は仕事人間のようでいて、その実かなり、この男のもとに帰ることを望んでいるので。
怒り狂っているのは案外向こうのほうかも知れない。こちらの男はただぐずぐずと不貞腐れているだけだし。
けれど待たされて拗ねる気持ちが娘には分かった。
「ならその儘、連続の連絡として、別れる内容を送ったら?」
そうして相手を揺さぶって遣れば、この目の前でひしゃげている男の溜飲も下がるだろう。
娘はそう思ったのだが、連絡を送る前に、その男はぴんと上体を起こし、いつものすっと通った背筋を伸ばした。
「そんなことしたら、あいつ壊れちゃいますよぉ。」
そう言った声色はにまにまと漲っており、もっと酷いことになるかも知れないと思ったが、面倒な男の相手は、これでお役御免なので、一先ずカップからもう一口飲んだ。先月買ったアップルティーだ。
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