ortensia
2024-11-28 13:05:04
1012文字
Public 傭リ
 

寝ているリがまだ幼い時分だったなら遠慮無く庇護欲と憐憫を向けられたのにと思う傭

独白にならずに済んだ(笑)←

 起きている間に大人の男のように紳士ぶっている身体的にも長身の相手は、寝ている間にその大きな右手を、まるで赤ん坊のように握り締めている。それを独寝を見下ろした時に見掛けてから、なんとも言いようのない感情に胸の奥から苛まれて、仕方無く、そう、非常に不本意極まり無い仕方の無さで、この男に添い寝している毎夜だ。
 それで目が覚めると、こちらの袖とか裾とか背中とか、はたまた髪が右手に握り締められているのだが、不思議と痛みが無い。ひとを傷付けることを厭わない起きている時より器用なことだと、寝顔に向かって呆れても仕方の無いことだ。
 くしゃくしゃになった布地の跡が、目に焼き付くように残る。服に跡が付くことは別に構わない、そんなことでは無いのだ。もっとこちら自身の臓腑が握り込まれたように痛む。くしゃくしゃにされたのが心臓のようでいて、そんな物質的なものでも無い気がする。何が有るとも知れないもっとその奥が、兎に角痛むようだった。
 だからこちらの手と繋がせると、確かに握り込まれてこちらの目が覚めるようなことは無いが、それはそれで遠慮されているようで、違う気がした。それこそどうして握り潰す勢いで握って来ないのかと腹立たしいようで、やっぱりきんと冷えた風が吹いたように何かを覚えたのは胸の奥だった、それでいて頭は沸騰したように熱い。
 それで初心にかえることにしたのだ。これも不本意ここに極まれり、だ。ぎゅっと握り込まれた、それが基準の形となってしまっている寝相の上から、仕方無く、本当に仕方無くこちらの手を、被せて重ねるだけに留めた。
 思い知ったのだ。どうすることも出来無いと。子供みたいに右手を握り締めて眠る相手は、もう子供じゃ無い。頼り無い右手をそれでも懸命に握り締めるのは、本当にはもう子供じゃ無い。だからこの男は今もこうして眠る眠り方しか出来無いし、こちらもそれに寄り添うことしか出来無いのだ。
「ちょっとその辺ぐるっと散歩に行くんですけれど、おまえもわたしと手を繋いで同行しなさいよ。」
「は?そりゃあ行くけれど。なんだ、手繋ぎって?」
「だっておまえ、寝てる時ばかり手を握るでしょう?」
 たまには起きてる時にも繋いでよ。
 左手がこれじゃ無かったら、両手とも握り込んでいたのかと思うと、これで良かったのかも知れないとも思う。
 もう子供じゃ無くなってしまった今のこの男の手に、それでも今も寄り添っている。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。