変な約束しちゃったからその通り死んだ傭の喪主やってたリだけどドジっ子発揮してファンタジー発動させちゃううっかりっぱーが傭の内なる吸血鬼を覚醒させちゃうっぱー(?)
また納棺師がしれっと出て来る。
葬儀の仕様は捏造。
様々な不運に遭って、棺桶の蓋は落ちるわ、景気付けで持って来たワインを割って出血するわ、何故か死人が起き上がるわ、その死体と目が、合って。
「おまえの血、初めて食ったな。見たのも初めてだが。」
「そうですわたし滅多に怪我しないので、じゃなくって!」
「まさか死に水に血をくれるとは。やってくれる。やはりおまえにおれの葬儀を頼んで良かった。」
「こっちだって完全予想外ですが……!?」
そう、自分が死んだら葬儀の取り仕切りはおまえがやってくれと縁起でも無いことを頼まれて、それから勿論何年も経って、そうしてあっさり逝ってしまったので、そのちびを手づから選んで装飾迄この手で施してやった棺桶に詰めて、つつがなく、そう、頼まれたからつつがなく、送ってやろうとしていたのに。
今は目の前で元気に起き上がって意地汚くも顔に掛かったワインを舐めて居る。口振りからすると本人は、一緒に零した血のほうを目当てに舌を伸ばしているようだが。どっちでもいい。
いや、正直死体を前にしても実感がわかなくて、でもそれは当然自分側の問題だと思ったし、何より死んでいる相手に原因が有るなどとは思うまい。だからこちらの気の持ちようをなんとか落ち着かせるために死体の服を見栄え良くベルトを装飾したデザインに仕立てた。当たり前だが実用性は無いので棺桶の底に死体を縛り付ける機能は無い。そもそも当然起き上がることが予想外なので。プランの相談をしていた納棺師はマスクから覗く目で批難していたが。
しかしそんなものより、用意するべきは鎌だった。死神の鎌。起き上がった時に首が落ちる仕様にするべきだったのだ。おまえ死んだんですよ、何起き上がっていつも通りにこっち見てんですか。事前に準備しないと死神は仕事をしてくれないらしい。
「おまえが」
代わりに今も生きてる喋っている、死体に生体のような働きをさせている男なら居る。今は死神どころか自分とこの死体以外誰も居ない。手伝いの納棺師は、後は若いお二人で、とかなんとか言って式場を出て行ってしまった。職業納棺師に思うのもなんだが彼は葬式をなんだと思っているのだろうか?まさか今から冥婚でもするのか?式場違いか?いや冥婚の式場はどっちなんだ?死人が起き上がって喋りながらこっちを見ている現状を取りなす考えが何も浮かばなくて、代わりに取り止めもないことばかりが浮かんで来る。沈め。
「不死者のおれとはもう一緒にいられないってんなら、おれはおまえから離れるよ。」
「……そんな話をした覚えはありませんが。」
「そういう話なんだよ。」
「そんな話、一度もしたことないですってば。おまえが生きてる間も!」
死体の目が、驚いたようにこちらを見る。死んで甦った者にそんな目で見られる覚えは無い、一切。
「そうだったか。なら先ずは。おれが生きてる間、一緒にいてくれてありがとう。」
「死んでから言うな。」
「これくらいは生きてる間も言ってたろ?これも覚えが無いか?」
「……覚えてますけど。」
別に、もっと言ってくれて良かった。
「……おまえ、わたしがおまえに死んでほしくないと思ってたとか、考えたことないでしょう?」
また驚いた目をされた。腹立つなあ。
そのあと、死体にしては柔らかく表情筋を動かして、困ったように笑った。
「死んでから知ることになるとはな。」
「ほんとにね。」
「……生きてる間に教えてくれても良かったろ?」
「だっておまえ死ぬことばかり考えていたから。」
「確かに。」
棺桶の中から小男が詫びるように手を握って来た。冷たい手だ。こちらと同じように。
「死んだあとのおれとも、どうか一緒にいてくれないか。」
「いいよ。」
「いいのか。」
「いいですとも。」
死んだ手を紳士的に握り返した。返事は考える必要も無かった。
「おまえは死んでもワインの良し悪しが分からないということだけは分かりました。」
その揶揄いにいつも通り肩を竦めて応じた男は、立ち上がって棺桶から出た。手を繋いだ儘式場も出た。死神にこの男は遣らないことにしたから。
散らかした葬儀場の後片付けは納棺師に任せよう。後は若いお二人で、と言ってくれたのだし。
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