赤司様が気前良く御自身のプライベートを嘘偽りなく、ただたまたまごく単純に話題に上がった訊ねられた誕生日を彼は正直に答えただけだ。そうしたことにより、普通の誕生日の話題でも多少の盛り上がりを見せるかも知れない、というところを、抜群に盛り上がらせた。
その盛り上がりも収束し、しかし盛り上がろうと収まろうと我関せずと他者から存在を気付かれないという両立により、完全にその話題から外れた年長者へ、赤司は声を掛けた。
赤司に、話題に入れず可哀想に思った、などという感情はない。強いて言うならばノブレスオブリージュであり、呼吸をするように、何か感情を織り交ぜて意識することではないのだ。会話を円滑に回すことは、赤司にとって当然の所作であった。
ただ赤司は知っていただけだ。その相手が、自分でも自分のことを可哀想などと思っておらず、逆に無理に輪の中に入れては、良しとは思われないことを。
しかし先述したように、赤司にとって会話を円滑に、同じ話題を平等に振ることは当然の行いだった。それだけだ。
少なくとも、声を掛けた時は。
「千尋の誕生日は、3月1日だったな。」
「……訊く迄も無えんじゃねえか。全員分知ってんのか?」
「データを見たからな。」
「ウゲ。」
赤司がそうされたように、誕生日を訊ねる、なんてする必要は無いのだ。解答データは既に赤司の元にある。ただ話題を回すために声を掛けただけだ。
「語呂合わせで覚えるとかも、おまえには不要な手段っぽそう。」
「確かに、そういうものの覚えかたをしたことはないな。」
「ウゲ。」
一言一句違わず嫌そうな声、顔をされた。赤司に対して面と向かってされることは、ごく稀な対応だ。
「あーあ。せっかくアカシサマが覚え易い覚えかたがあるんだが。」
「それは興味深いな。千尋、言ってみろ。」
後輩に舌を打つ上級生だが、その後いつもの皮肉げな笑みに近い、しかし若干異なる悪戯染みた顔をした。
そして赤司の鳩尾辺り二回程軽く拳で触れ、あっさりとふらり立ち去って行った。
何も言われなかったが、今身に付けているのはユニフォームでもなかったが、それで赤司には分かった。
3と1、合わせて。
赤司には易し過ぎた。けれど、分かったことに対し、何か満たされたものを感じた。自分の鳩尾にナンバーが浮かぶようだった。
赤司は黛が触れたそこを自分でもなぞるように掌を当て、やがて顔を上げてその背を追った。
その先には、次番が見える。
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