haruon1018
2024-12-16 17:25:52
4070文字
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ホストの話

前にワンドロさんで書かせて頂いた893💊の話を膨らませたなと思い進捗
tksgさんの愛が屈託している

「レッドキャバルリー、ここか」
 外観を見て高杉は吉田が荒らした店もここだったなと思い出す。
 ホストを引き抜いた伝説の一味とバレたらボコボコにされるのではと一瞬頭を抱えたが、今の高杉と過去の高杉を結びつけるには、格好からして無理だろう。
 それに今と昔では状況が違いすぎる。
 中に入れば、認めたくはないが最強のボディーカードがいるのだ。
 ホストが束になってもきっと彼には敵わない。
「ようこそ……当店は初めてで、でしたらまずはこちらのメニューを見て頂いて、」
 中に入ると見習いだろうか初々しい蝶ネクタイ姿の青年がフロントに立っていた。
「へぇ……なるほど、好きなホストを選べばいいのか、じゃあこいつ連れてきてよ、」
 大小様々なパネルが並べられている中で、現役ナンバーワンと同じ場所に君臨する森のパネルを指さす。
 現役時代パネルを使っているのか幾らか若い彼に高杉は、不覚にも可愛いと思ってしまった。
「源さんはその……復活祭のために戻っているだけで、新規のお客様は、」
「源?あいつそんな源氏名なの」
指名したホストの名前すら知らない高杉にフロント係は怪訝な顔をする。
「長可でちょうか、なるほど、呼びづらくないか」
首を傾げて、森の源氏名について考えている隙にフロント係は電話をかけはじめた。
「どうした……ああ、こいつなら通して良い、上客中の上客だ」
 高そうな毛皮を着ているがバックを持ち歩いていない高杉を怪しんだフロント係はたまたま店にいたオーナーの晴信に連絡していた。
相変わらず赤が好きらしく艶やかな赤のコートを肩に掛けている。
「小僧を連れ戻しに来たか」
「出来ればずっとここで預かって貰った方が僕は都合が良いのだが、信長公に云われてはね……
「足下注意しろ、抱えてやろうか」
 晴信は高杉の腰に手を回そうとしたが、ぴしゃりと手を払った。
「彼に勝てる自信があるなら、」
 夢の世界を演出するためフロントとホールの間には階段がある。
 ピンヒールでは確かに下りづらいが、武田の手を借りれば森の機嫌を損ねるのは必定だ。
 彼を怒らせて良いのは自分だけだと、颯爽と階段を下りると周りが騒然となる。
 武田と歩いているのは誰だと、ホストは勿論客も注目するが高杉は一切無視した。
「長可は今、接客中だから、ここで待ってろ」
 本革の座り心地の良いソファーに座ると、シャンデリアが眩しい。
 室内でのコートは無作法だが、脱ぐわけにもいかずにじっとしていると武田に指示されたボーイが冷たい水を持ってきた。
……彼に接客なんてできるの」
「出来るというか、アイツの口説きが効かないのはお前くらいだ」
「へぇ……
最近のホスト遊びはマダムが金を使って侍らせるよりも、ソルジャーゲームのようにホストに貢いで泥沼にハマるか、泡沫の恋に溺れてずぶずぶと破滅に溺れていくものだと、
まだ大学で研究していた頃、堕ちていく女子大生を何人も目にしていた。
 妹たちにはろくでなしに引っかかるなとキツく言い聞かせたが、引っかかったのは高杉だ。
「信じてないな、俺が仕込んだのだから間違いない、」
「信長公ではなくて?」
「あいつと俺の知り合いも協力した、その御陰でうちの酒一晩で空にしていったからな」
 猛者相手に仕込まれた割に高杉には効かないと笑ってやろうと思ったが、どこからか森の声が聞こえ、思わず振り向いてしまった。
「噂をすればだ、見てみろあと、数分もしないうちに一番高いゴールデンアップル入れるぞ」
斜め向かいにいるサングラスとワインレッドのドレスが印象的な女性は森と何か会話をしていた
 客を煽るために客同士の顔は見られるが、金を渋る客にはホストの顔すら見せる価値はないと、高杉と森のテーブルの間には柱がある。
そのうちに客の付いてないホスト達が森のいるテーブルに集まり姫をもてはやす。
「復活祭おめでとう、シャンパン入れるから皆で呑みなさい」
 遊び慣れた姫は自分語りすることなく、ホスト達に酒を振る舞う。
「お前も入れるか、あの姫に勝つならシャンパンタワー五段って所か」
「何故、大体僕は金なんて持ってきてないぞ」
「武田の軍配に世話になっているから、払いはそっからで良い」
 何の仕事に使っているか知らないが、男性専用の回春薬は随分と武田の商売を助けているようだ。
「あ~ありがとな、」
「は……!」
 一通り酒がホスト達に行き渡ると、森の声がマイク越しに聞こえてきた。
 ぶっきらぼうだが温かい台詞に高杉は思わず、声を出してしまった。
 その声は歓喜するホスト立ちの声でかき消されたが、高杉の腹に芽生えた何かは消えない。
 胃がムカムカすると、高杉は用意された水を飲み干した。
 お前はそんなやつではなかったはずだ、信長公に忠義を突くし、荒々しい仕事を楽しんで高杉を弄ぶ。
 そんなやつが、簡単にに安っぽい声をかけるなと溢れてくる感情を抑えていると武田が、ぽんと肩を叩いた。
「どうした高杉、」
 表情は変わらずに揶揄っていることを楽しんでいる顔だが、かける言葉は優しいいどうやら虐めすぎたと心配しているようだ
……シャンパンコールとやらやってやろうじゃないか、勿論彼ではなく、そうだなこの店のナンバーワンで頼む……
 武田に頼めば森がこのテーブルに来るのは分かっているが、それではこの感情が晴れない。
 彼の悔しがる姿が見たいと高杉が言葉を吐き出すと晴信はため息をつく。
「お前その性格苦労するな……
……?どういうこと、タダなんだろう」
 何に苦労するのだと高杉はルールも曖昧な遊びに参加した。
「指名ありがとう、渋谷ビートル、よろしく」
「君がナンバーワン?ああそいえば、アイツのパネルの隣にいたな」
武田が連れてきたのは如何にもホストという顔の男だったが、興味のない高杉はちらっと顔を見ると視線を合わせずにいた。
「指名してくれたのにショック~お兄さん?あっその格好だからおネェさんの方が良い」
「どっちでも、」
 興味があるのはシャンパンタワーだけでこいつはオマケだ。
 サッサと先ほどの客のように持ってこいとフロアの端を眺めていると渋谷は高杉の太股に触れる。
「ちょッ……
 コートの下からドレスの布地に渋谷は思わず、鼻の下を伸ばし下心を漏らす。
「エロッ、普段からそんな格好なの、お兄さん訳ありってオーナーから聞いたけど、おっさんとはどういう関係?」
「おっさん?ハハ、確かに君から見ればじじいだろうな」
 森の正確な年齢も、本名も知らないが目の前にいるホストよりは幾らか年上なのは分かる。
 恐らく信長と同世代の晴信は兎も角、頬に傷はあるが人懐っこそうな永倉をジジイと呼んでいる彼が、他人からおっさんと揶揄されているのは小気味よい。
「ようやくこっちを見てくれた」
「手を退かせ、彼との関係か、契約関係だよ。僕の全てをあげる代わりに彼は全力で僕の大切な者を守るんだ」
 笑いを提供してくれた礼だと高杉は森との関係を話した。
「重い、でも指名しなかったよね、」
 二人の関係をありのままに伝えると高杉をメンヘラだと察知した渋谷はさっと手を離した。
「別に良いだろう……タワーってそんなに時間かかるの」
「まだ五分も経ってないよ、お兄さん、疲れたんだね」
「は?まぁここに来るまでに随分と遊ばれたからね、だから話しかけるな」
 タワーが来るまでの時間を目の前にいるホストで潰すのも退屈だと高杉は先ほどのテーブルに視線を移したが、すでに森の気配はない。
 高い酒を振る舞って満足したのか姫もテーブルにいない。
『悪女になるなら月夜はおよし』
突然机に舞い降りたカードを手に取る。
有名な曲のサビだがどこから来たのだろうかと高杉は辺りを見渡した。
「ッ……
カードの主は森の客だった。
階段にいた姫は妖艶な唇に指を置くと微笑していた。
「お兄さんもあのお客さんがタイプ~、あの人は元々別のホストの姫だったけど、そのホストが参加しなかったから長可のところに来たんだって」
……話しかけるなって云ったよな」
 森とあの女性がどんな関係だろうと関係ない。
 それよりもこんなにべらべら喋る奴が本当にナンバーワンなのだろうか。
「ごめん~お兄さんって超タイプだからお喋りしたいな、ね、良いでしょ」
「僕をまた笑わせてくれたらね、」
「調子に乗るなよ……
「あのさ、君の所のオーナーがなんて云ったか知らないけど、僕はアイツがあわてふためく様を見たいだけで、君はオマケだ、オマケならオマケらしくそこで座ってろ」
 ギッと目をつり上げてホストに凄んで見せたが、どうやらそういったプレイが好きな性癖を持っているようで、恍惚の表情を浮かべている。
「あ~面倒くさい」
 森との会話は森が高杉を刺激しなければ会話はスムーズに流れるし、黙れと云えば黙る。
 ヤクザですら当たり前のことが出来るのにと高杉が目の前にいるゴミに困り果てていると、晴信が席に戻ってきた。
「そこまでだ、お前は他所の店に行け、そっちのほうが稼げるぞ」
「オーナー?だってこいつ、長可のおっさんのお気に入りで」
「小僧のお気に入りなら、どう扱えば良いか分からないような奴は店に入らない。そもそも、席に座った時点でお前は用済みだ」
……また利用されたのか、」
「悪かったな高杉、小僧のところに案内する、」
「利用するなら先に云って欲しい、」
「敵を欺くにはまず味方だろう、」
「ッ待ってください、俺は……
 別の店というのは恐らく男娼を置いている店だろう。
 高杉も運が悪ければそこに売り飛ばされるルートもあったが、運が良いのか悪いのか森に囲われている。
「あのさ、君が相手にしていたのは鬼武蔵、……長可で調べてみろ」
 水商売の世界にいても森の本当の姿を知らないホストにアレの恐ろしさを教えてやろうと、渋々だが高杉は森の名前を口にした。