木蔦(キヅタ)
2024-12-15 23:04:48
1299文字
Public ちょぎくに コメディ
 

お題をクリアしないと出れない異空間 事例③【ちょぎくに】


ちょぎくに
お題をクリアしないと出れない異空間 事例③

まんばは気づくと知らない本丸にいた。そこには凄まじい数の本歌と写しがいた。

「ここはどこだ!」
「うちの本丸じゃない!」
「俺は誰だ!」
「俺は俺だ!」

これだけ同じ顔がいるのも圧巻。
システムウインドウが目の前に表示される。
「自分の本丸の長義を見つけ出せたら脱出できる。最後の1組になった場合はペナルティあり」と書かれている。

途方に暮れた。
こんなに同じ顔がひしめき合う中どうやって探せばいいのか。この部屋だけでも40振りほどいそうだ。全室こんな感じならうん百はいる。

ひとりの長義が大声を張り上げた。
「偽物くーん!この前バナナの皮で滑って転ぶ使い古されたコントみたいなことした偽物くんはどこだー!?」
「本歌!!」
すかさずひとりの写しが駆け寄る。
「なんて恥ずかしいことを暴露してるんだ!」
「良いじゃない。これでお題はクリアしたんだから」
「〜〜!」
ふたりは消えていった。

いきなりひとりの長義が歌い始めた。
「♪揺らぎ流れ巡り会う焔 相応しくあるために光放つ」
どうしたどうした、気でも狂ったかと騒つく中、ひとりの写しがそれに応える。
「♪風を纏い隠れたるおもて 現し造作を知り風を穿つ」
歌を歌って相手を探し出す、だと……

発想になかった方法で呆気に取られる。
ふたりは消えていった。

各々あの手この手でお互いの本歌と写しを見つけ出していく。

まんばは焦ってなかった。数が少なくなれば見つけやすくなる。同じ顔がごった返す中、必死に全部屋を巡る方が疲れるし、向こうと入れ違いになるかもしれない。

しかしシステムウインドウが再度表示されて驚いた。

「ペナルティはセッです」
「はあああああ??」

何を言ってる。恋仲ならともかく、ただの本歌と写しに何を強いているんだ。

まんばは死に物狂いで探した。

押し入れを開けると何故か別本丸の長義が隠れていた。
「しーっ!」
「あー!本歌!なんでこんなところに!」
「あ〜見つかっちゃったか
探し出すお題なのになぜか隠れんぼになってる組がいた。なぜ。

「何としても!最後まで残ってみせる!」
勝ち抜きトーナメントか何かだと勘違いしている長義もいた。

なんやかんやしながらも、確実に数は減って行った。

「残り10組」とシステムウインドウで表示された。

焦る。あんなにそこらじゅうに本歌と写しがいたのに、今は部屋に自分しかいない。本丸を探してもなかなか会えない。会えたとしても別本丸。

「本歌、本歌……
どうしよう。オロオロ。
本歌みたいな賢さはないし、優柔不断だし、頼りない。所詮写しは本歌ひとり見つけられない。

「偽物くん」
「!? 本歌!」
振り向くと自本丸の本歌。
心細さから解放されて感極まり、思わず抱きついた。
「良かった!本歌!」
「これはこれで……。しかし惜しかった……実に惜しかった
「?」
「しかし頼りなさげに俺を探す様はなんともよかった……
「本歌??」

まんばは本丸に無事に帰れた。
ハッピーエンド。