記憶喪失強化週間③自分に気持ちを向けさせたくて薬を盛る長義の話【ちょぎくに】


長義は最近顕現した。
その本丸は発足から数ヶ月で、ほぼ新人審神者。初期刀は写し。数少ない刀で回していた。

しかし長義は写しとの対話を間違えた。号の件は抜きにしても、地雷ばかり踏み抜き、傷つけた。
少人数の本丸なのに、そのせいで写しとの会話はゼロ。

余りに写しが可愛かったせいでもある。じっと見つめられ、ドギマギして、どうすべきかわからず変なことまで口走った。異性に慣れてない思春期男子かと過去の自分にツッコミたい。

ある日、長義は万屋街にて写しを見かける。
洒落たカフェにいた。他の長義と一緒。
写しは照れくさそうに微笑んでいる。

その時衝撃が走った。
あんな顔見たことない。数ヶ月一緒に住んでるのに。

甘えたような、心底信頼してるような、そんな顔。好意が溢れ出ている。
嫉妬に狂い、苛立ちが抑えきれない。

気を紛らわすため思わず適当な店に入る。
そこは怪しい店で、緑や青の液体などが溢れかえっていた。

そこで「記憶をなくす薬」と言うのが目に入る。本物だろうかと迷ったが、店主に凄い勢いで勧められて、思わず購入。
(これで、記憶をなくせば、アイツと破局するだろうか……

悪い考えが浮かぶ。迷った挙句に、写しに盛る。(毒ではないことは確認した)

写しは薬が入ったお茶を飲んだ途端倒れる。みんなが慌てて、手入れ部屋に担ぎ込んだり、看病をする。それを長義はなんとも言えない気持ちで見ていた。
写しに害があるのではという不安と、自分の都合で盛ってしまった罪悪感と、少しの期待。

目を覚ました写しは全て忘れていて大成功だった。
薬は本物だったらしい。
そこからは写しとふたりきりになるチャンスがあれば、なりふり構わず口説いた。

前は傷つけたこともあり、号の件で厳しい意見を向けた手前、プライドなども邪魔をして写しに好意を向けることが難しかった。周囲の目のせいもある。「あんなこと言っておいてどの口が?」と思われるのが後ろめたかった。
だけど写しが忘れている今なら関係は白紙に戻せる。他の者から写しにバレるといけないので、口説くのは誰もいない時に。一からやり直したい。
それにカフェで会ってた長義がいるから、手段は選んでられない。

ぐっと腕を引き、顔を近づけると写しは真っ赤になった。キョドキョドと目が泳ぐ。照れてるのか。前には無かった好感触。

「俺は、お前が好きだ」
「!」
「だから俺を好きになって?」

ぷるぷると震えている。逃げないように手をぎゅっと握った。
「な、何度も、からかうな……
「からかってない」
「でも……
「信じて欲しい」

真っ赤になった写しがチラリと長義を見る。信じかけてるような顔。

「これなら信じてくれるだろうか?」

長義は写しに口付けする。写しはすぐさま口元を押さえてアワアワ。
「俺と付き合って欲しい」
「ん……っ」
拒否されなかったのをいいことに、もう一度口付けをした。困ったような顔をされるが、その瞳に色が灯ったのに気づいた。啄むように、苦しくなるほど深く、何度も。

「ちょ、…………

息も絶え絶えに長義の名前を呼ぶ。他でもない長義を。そう思った瞬間全てが吹っ飛んだ。
押し切る形で写しと付き合うことになった。まだ気持ちは自分に向いてなくても可能性はある。

写しが別れを切り出せないようにしてしまえばいい。外堀を埋めて、長義のことが好きだと言い聞かせて、写しが何か疑問に思っても別の事に気を向けさせた。

絶対にあの長義には渡さない。
次第に写しも心を開いてくれるようになった。微かに長義に微笑んだのを見て飛び上がる気持ちだった。

しかし同時に罪悪感が積もる。

本来国広が好きなのはあの長義で、それを無理に捻じ曲げてこの状況になってるわけで、これは国広の本意ではない。

「記憶がなくなる前から長義のことが好きだった気がする」
「前もこう言う関係だったのか?」
「そばにいると安心する。あんただからだろうか」

そう言われるたびに「それは別の長義のことだ」と口から出そうになる。

本来はこんな関係じゃない。
そしてついに、罪悪感でいっぱいになり、写しの記憶を戻そうとする。

記憶喪失になる薬を買った時に解毒剤も付いていた。
写しに飲ませる。
「え、あ、ええ……??」

信じられないような顔。目を見開いでガクガク。想像してたとは言え、こうまで嫌われているとは思わなかった。
写しが逃げ出す。
慌てて追いかけた。

写しを見失ってしまって、キョロキョロ。万屋街までやってきた。

そこに例の長義が現れる。極の国広と手を繋いで歩いてる。明らかに恋刀な雰囲気を醸し出している。

こっちは叶わぬ恋に身を引こうとしたと言うのに、相手は浮気していたのだ。ブチ切れた。

「貴様……!写しを弄ぶなんて!」
「はぁ!?いきなりなんなのお前は!」
「お前なんか写しに好かれる価値ないんだよ!!」
「お、落ち着いて、人違いか何かじゃないかな?」
「無価値になった重要文化財」
「国広は黙ってて!」
「浮気なんかしやがって!」
「浮気?俺が浮気相手ということか?俺が本命では?というかお前この長義と付き合ってたのか?同位体を抱く趣味が?」
「だからややこしくなるから国広は黙ってて!」
「はぁぁ??うちの写しが浮気だったってこと!?」
「あーもー!落ち着いてって!!」

そこに写しが現れる。

「パパ!!」
「パパ!?」

写しが例の長義に抱きついた。
「パパ!助けてくれ!!」
「パパってなんだ!パパ活か!?」
「間違ってないな、よく甘やかしてるし」
「だーもう!お前たちは少し黙っていろ!誤解を受けるだろ!!」

〜しばらくお待ちください〜

話を聞いたところ自分達の審神者と、彼らの審神者は親子関係にあるらしい。

新米本丸の初期刀である国広は、父親の本丸の初期刀極んばによく相談をしていたそうだ。極んばの恋刀である長義もよく同席していたらしく、国広のことを我が子のように猫可愛がりしていたとのこと。
あまり親に頼るのは良くないと、最近では本丸ぐるみの付き合いはなかったため、長義は知らなかった。

『パパ』というのは『(主の)パパ殿の本歌』を略したものであり、普段はちゃんと呼んでいる。

「お、俺は国広がいるから浮気なんてしないよ!」
「してもいいぞ。その代わり別れるからな」
「冗談でもやめて……!」
「大体娘の初期刀だからと言って甘やかしすぎなんだ、誤解されたのは十中八九あんたの態度が原因だと思うぞ」
「でもひよこみたいな写しが困ってたら与えたくなるじゃないか」
「それが甘いと言ってるんだ。少しは反省しろ、……それに俺も妬かないわけじゃないんだぞ」
「国広〜〜〜!」

(°台°)……
ナニヲミセラレテイルンダ

「パパ殿の本歌と同位体、この後相談いいだろうか?」と写しが頼んだが「何の相談かはわかるがダメだ」と極んばにすげなく断られていた。デートだからか?

写しと一緒に本丸へ帰る。
写しは気まずそう。少し悲しい。

「記憶がない間につけ込んだは悪かった。俺の嫌な印象を覚えてなければ、俺を好いてくれるかと思ったんだ」
「好……!?なん…………
アワアワ。

「あの、長義、なんで……その、つ、つきあっ……
「お前のことが好きだからだよ」
………っ!?」
赤くなったり青くなったりしている。好かれていたのは恥ずかしいが、相手が長義なのは嫌だと言うことだろう。

「お、俺も、どうしたらお前に好かれるかずっと考えてたでもわからなくてパパ殿の同位体にずっと相談してたんだ

そうだったのか

え、これはもしかして両想いでは!?

「俺はお前のこと、その、恋愛的に好きなのかはわからない」

ワカラナイー!!

「でも記憶がない間、お前にされたことを振り返って、嫌じゃ、なくて……

そこまで言って、国広は黙ってしまう。顔から湯気が出てそう。

「じゃあ改めて言う。お前のこと、必ず好きにさせるから、俺と付き合って欲しい」

ちょぎくにはっぴーえん!!
お疲れ様でした!お読み頂きありがとうございました!