木蔦(キヅタ)
2023-02-04 13:35:26
3245文字
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バスツアー⑤仲の悪い伯仲が一緒に旅行することになる話【ちょぎくに】


ちょぎくに バスツアー⑤

バスツアー①おひとり様限定バスツアーに参加するまんばの話
https://privatter.net/p/6746264
バスツアー②親友二振りで参加したまんば達の話
https://privatter.net/p/6792602
バスツアー③レア刀剣と出会いたくて参加するまんばの話
https://privatter.net/p/6792656
※バスツアー④は本のみの収録

※番号はありますが単発の話。単に『怪しげなバスツアーに参加する』という共通設定のみ。



長義は自本丸の写しと仲が悪い。生意気で長義に反発ばかりしている。顔を合わせるといつも口喧嘩が絶えない。

「もっと優しい本歌が欲しかった!」

「それなら他所の本歌の写しになれば良い!俺だってこーんな可愛げのない写しは嫌だ!」

見かねた審神者がふたりに旅行を勧める。というか少しは仲良くなれと強制される。

「なんでお前なんかと」
「こっちのセリフだ」

命令だから仕方なく参加する。

しかし集合場所に向かうと何故か写しとバラバラのバスの座席になる。一緒に参加なのになぜだ??

長義の隣は同位体で「君は写しと一緒に来たの?贅沢者だな。でも良い出会いがあるといいね」と言われた。何のことやら。

写しの隣も他の長義で、同位体率が高いな?と思った。

写しは人見知りするタチで、いつもの威勢はどこへやら、隣から話しかけられてタジタジしていた。

バスは酒蔵に着く。
酒蔵見学、そして試飲させてもらえた。写しをちらりと見ると大吟醸ソフトクリームに舌鼓を打っていた。甘いものに目がない。

隣にはバスで一緒だった同位体がいた。ニコニコと写しに話しかけている。
少し腹の奥がもやもやした。

見ているとバチっと写しと目が合う。フンとそっぽを向かれたので、こっちもぷぃと顔を逸らした。

しばらくいろんな酒を試飲していたが、ふと写しを見るとフラフラしている。うちの写しは酒に弱かったと思い出した。

「おい無様な様を晒すな。こっちに来い」
「は!?何が無様……!」
「酔ってるだろ、こんな公の場でみっともない」
「うるさいっ」

呂律が回ってない。スタッフに言ってバスで休ませてもらうか、と思ったら隣の長義が割って入ってくる。

「俺が見てるから大丈夫だよ。ね、あっちで少し休もうか」
写しを連れて行ってしまう。呆気に取られる。
「なんで部外者がああやって口を挟むんだ……!」
「あれって君の写しなの?」
「ああ、うちの本丸の写しだ!」
「なんでそんなに怒るの?嫌なら連れてこなきゃ良かったじゃない」
「は?それは、どういう?」

集合時間だとスタッフに呼ばれたので、その話の続きは聞けなかった。

次の日、大広間で朝ごはんをとるのだが、写しは例の同位体と連れ立ってやってきた。昨日よりも少し打ち解けた様子。写しも時折笑顔を見せる。
腹の奥がまたもやもやする。

その日は蕎麦打ち体験が組まれていて、始終そのふたりは一緒にいた。長義のことなど見向きもしなかった。

次の日の朝はさらに仲良くなっていて、例の同位体からのボディタッチが激しかった。

イライラして、ついに長義はブチ切れた。

「主からのめいを忘れたのか!そんな浮ついた態度だと、本歌である俺の品位が疑われる!」
「はぁ!?俺のどこが浮ついてるって言うんだ!それにあんたの品位は関係ないだろ!」

「いーやあるね!うちの刀なんだから!どこって、お前の締まりのないデレデレした顔のことだよ!」
「ああすまない、あんたと違って、優しくて頼りになる本歌だったからな!つい甘えてしまったのかもな!」
「俺のどこが頼りないって!?」
「全部だ、全部」

いつものように喧嘩をしてしまう。

「そんなに他所の本歌がいいなら他所に行ってしまえ!」
「ああそうさせてもらう!口うるさい本歌がいなくて清々する!」

プイッとそっぽを向き、お互い違う方向へ。

しばらくまんばへの怒りがおさまらなかったが、時間が経つと例の長義に慰められている写しを想像し、もやもやイライラしてしまう。

しかしその夜長義はこのツアーの目的を知る。

これはいわゆる『婚活バスツアー』だった。

出会いの場として組まれ、気に入った者がいれば最後の夜にアンケートに書く。見事マッチングすればカップル成立という。

紙を配られ、長義は焦った。

きっと写しは例の長義の名前を書くだろう。あれほど仲良くなったのだし、しかも自分とは大喧嘩をしてしまった。例え好きでなくてもヤケを起こす可能性がある。

あのふたりが一緒にと考えただけで不快感。

しかもマッチング成立した者は最終日に同室になって一夜を共にするという。

あの子が?他の男と?

アンケートが回収され、ぼんやりしていた。自暴自棄。

今頃写しは部屋に案内されているだろうか。そして布団に押し倒されて……

そう考えて、いても立ってもいられなくなる。

長義は写しの元へ走る。

写しはちょうどスタッフに案内されていたところだった。写しの手を無理矢理引き、逃げ出す。

「へ!?え!?なん……!?」

写しは戸惑いながらも引っ張られるままに付いてきた。
自分の部屋に戻り、写しを引き入れる。

「長義?なんで……

言葉は出てこない。他の本歌に奪われたくないとか、自分のそばにいろとか、いろいろ想いはある。けど何も言えない。

「一体、何なんだ」

怒った写しの声。気まずい。何か言うべきか、ああ、そうだ八つ当たりしたことを謝らなければと思って口を開いた。

「こ、今夜はここにいろ……

でも素直に謝れなくて、絞り出すようにそれだけ呟く。
写しは、はぁ、とため息。

「今夜は豪華な部屋に案内されると聞いて楽しみにしてたんだが」
「そ、それは……!」

例の本歌との夜を楽しみにしてたと言われ、ショックを受ける。ふたりは既に愛し合っていたのか。

突然コンコンとノックがした。

それは運営スタッフで「マッチングが成立しましたので荷物をまとめてください」と言うものだった。

「は?マッチング?成立?」

パッと振り向くと写しがぶっきらぼうに「行くぞ」と歩き始める。

いやだって、アンケートの名前は、俺を指名してなければ……

ぐるぐる整理できてない情報が頭を回る。

ハッピーエンド°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°

お疲れ様でした。お付き合いありがとうございました。

まんばは自本丸の本歌の名前を書いた。スタッフが来た時点で、マッチングが成立したのは知ってたので、長義も自分の名前を書いてくれたことはわかってた。

この後ふたりは夜通しウノをします。

実は長義くんはあそこまでいっておきながら、恋愛感情を自覚してません。
「自分の写しなのに他人に取られるのが嫌!」というただの独占欲の不快感だと思ってます。

(薄々気づいてるけど恋心を認めたくないというのが正しいかも)

まんばは自覚済みです。
他所の長義くんと話してて、思いっきり自分の言いたいことが言えなくて、やっぱり長義じゃないとと思い、自覚に至りました。

長義と一緒にいたいなとチラッチラッとしてましたが、長義くんは妙な態度で遠巻きにしているので、寂しく思っていました。

ふたりはしばらく恋人未満の状態が続きます。喧嘩仲間のまま数年過ぎて、ある日突然、長義くんが自覚して恋仲になります。

それまでセッもチューもなしです。

今回の旅行の件をまんばが審神者に報告したけど、審神者は驚く。
まずそんな変なツアーに申し込んでしまったのもだし、ふたりが少しでも仲良くなれば良いなと思ってたのに、恋を自覚して帰って来たので。



バスツアー⑥バスツアースタッフのまんばの話
https://privatter.net/p/9747151