木蔦(キヅタ)
2022-09-12 23:29:50
3645文字
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ブラック本丸で幽閉されてる写しと触れ合いたいのに触れられない長義くんの話【ちょぎくに】


ちょぎくに
※痛々しい表現があります。(ブラック本丸)
※審神者が喋ります。

まんばは審神者の霊力により鳥籠の中にいた。刀剣男士だというのに、戦場には行けず、人質のような扱い。

今日も審神者の元に報告に来た長義を悲しげに見つめる。
ちらりと長義がまんばを見て、プイとすぐに目を逸らした。

審神者がまた無茶な要求を出した。
「新刀剣男士ね、必ず顕現させるように」
「主もわかってると思うが、あれは運だ。約束はできない」
「へぇ?俺に楯突く気なの?写しがどうなってもいいのかな」

審神者の手がまんばの鳥籠に伸びる。

それを見て、脅しは無駄だとばかりに長義は無感情のまま言う。
「何度も言うが、俺は偽物などには興味がない。どうなろうと知ったこっちゃないよ」
興味なさそうに聞き捨てる。
「へぇ?」

審神者が鳥籠を乱暴に払い除ける。
まんばは吹っ飛ばされた衝撃と床に落ちた衝撃で、籠にぶつかった。
避けることなどできず、ただ痛みを受け入れるしかない。全身が痛い。

ぴくんと反応した長義を見逃さなかったようで、審神者は溜飲が下がったような顔をした。

「お前がこいつを特別気に掛けてるのは知ってるんだよ。これ以上口答えするとこの写しがどうなるかわからないけど?」
……わかった、善処する」
「待て、本歌!俺のことは……!」
「うるさい黙ってろ!!」

長義はぐっと奥歯を噛み締めて、審神者の部屋を出て行った。




時は数ヶ月前に遡る。
監査官として長義が本丸に来た時の事だった。挑発的な事を言い、審神者を苛立たせた後、近くに控える写しに目を止めた。
静かに控えていたまんばは所々青痣があった。明らかに刀傷ではない。戦闘時の傷だとしても手入れしてないことになる。
どこかが痛むのかぐっと耐える表情をした写しに、何かの感情が湧いた。健気さにぐっと胸を掴まれたようだった。
それをめざとく審神者に見られていたらしい。

この本丸に正式に配属された後、審神者はとんでもないことを要求してきた。
「この本丸の戦績を改ざんしてこい」
長義はそんなことできないと断った。
「元政府刀だろう、何食わぬ顔で元の職場に行き、少し弄って来るだけだ。簡単だろう」
「だからそれは不正で!!」
パンっと大きな音が立つ。
近くにいたまんばの髪の毛をぐぃと掴み、机に押し付けていた。まんばは痛みに顔を歪めながらも抵抗はしない。
「な!」
「断るなら断ればいい。ただ近侍が痛い目に合うだけだ」
ニタァと審神者が笑う。長義が写しに惹かれているのを見透かされてるようだった。

写しは虐待されていた。ここはブラック本丸だった。

政府に伝手があるため長義を使えると思ったのか、審神者にたびたび呼び出された。そのたびに写しが酷い目にあった。
長義はただただ写しに興味がない振りを続けるしかできなかった。写しは長義に見捨ててくれと目で訴えかけていたが、それはしたくなかった。写しを助けたかった。
しかし長義が気のある振りをすれば写しがもっと酷い目に合う。それは避けたかった。

そのうち写しは幽閉され、審神者の部屋でしか会えなくなった。
会うと酷い目に遭うとわかっていたが、通う事はやめられなかった。一目でも会いたかった。

鳥籠の写しは弱々しくて、庇護欲が湧いた。触れたかった。
だけど審神者のせいで触れるどころか会話すらままならなかった。


ある日審神者は研修で本丸を空けることになった。不在でも変な真似はするなと強く念を押された。
長義はチャンスだと思い、審神者の部屋にそっと忍び込んだ。
そこには鳥籠でぐったりと横になっている写しがいた。

ようやく写しを直視できた。美しくて儚げで、今にも消えてしまいそうだった。
しばらくするとフルフルと瞼が揺れて、目を覚ました。しばらくはぼんやりと長義を眺めていたが、覚醒したのかハッとして辺りを見回した。
「主はいないよ」
そういうと明らかにホッとした様子だった。
「写し、俺の写し、こんなに傷だらけになって
鳥籠に触れようとすると、バチッと静電気のようなものに阻まれた。それでも構わず添える。写しが縋るように寄ってきて、それに重ねるように小さな手を這わせた。
見上げる瞳に涙が溢れているように見えて、胸が痛くなる。

「長義……お願いだから、俺に構わないでくれ……。あんたが手を染める必要はない
「いやだ」
「長義、もし主に見つかれば
「構うものか」
「でも」
「お前をそこから出してやる」

ぐっと霊力を込めて鳥籠に流す。バチバチと霊力同士がぶつかる音がした。跳ね返ってきた霊力が長義の肌を傷つける。
「長義……!」
流れた血を見て写しが声を上げる。
「やめろ、これを壊したら取り返しのつかないことに!主に露見する!そしたらお前も酷い目に!」
「うるさい黙れ」
力技で莫大な霊力を流し込むと、鳥籠はガラスが割れるような音と共に掻き消えた。同時に写しが解放され、元のサイズに戻る。

「長義!」
フラついた長義を写しが抱きとめる。
そんな写しもぼろぼろで、体にはたくさん痣がある。
「俺と一緒に逃げないか?」
長義がそういうと、写しは何度も頷いた。そしてぎゅっと抱きつくものだから、長義も抱き返した。

「こんなことだろうと思った」

背後から声がして、ふたりともびくりとする。
振り向けば、出て行ったはずの審神者がニヤついた顔で見ていた。

「あ、るじ……

真っ青な顔でフルフル震えている。写しを背に庇うように前に出た。
「長義は俺に逆らうわけだ、これは罰が必要だな」
「罰なら俺が受ける!長義には手を出さないでくれ!」
震えながらも写しが声を張り上げる。長義は喋るなと写しをぐっと自分に押さえつけた。

「いけないことをしたんだから、処分は免れない。ちょうどよかった、口煩いなと思ってたんだ、変な正義感なんて振りかざして」

もしかして今日留守にすると言ったのは長義を嵌めるための罠か。
「しかし俺を処分したら政府に伝手がなくなるけどいいのかな」
一か八かそう脅してみる。しかし審神者は余裕顔。
「お前より融通の効く、話のわかる伝手ができた」
「なんだと?」
「お前の好きな国広は残しておいてやる。俺の下僕だからな」
写しは長義に顔を押し付けたままフルフルと顔を振る。
審神者の元へは帰りたくないらしい。

「刀解されろ!」
審神者が端末を取り出し、ポチッと刀解確定ボタンが押した。
長義は止めようとしたが審神者の方が早く、間に合わなかった。

(消える……!)
身構えたが、刀解の気配はまったくやってこない。
「え?」
「長義……??」
「な、なぜ!?」

そこに政府の刀達が雪崩れ込んで来た。
審神者を取り押さえる。

審神者はデータ改ざんの疑いと刀剣虐待の罪で資格を剥奪され、連行された。
長義が刀解されなかったのは端末の能力が無効化していたためらしい。

『話のわかる伝手』がやってきた。
「元同僚の様子がおかしいと思って来てみれば、お前さんは大変な事に巻き込まれてるじゃないか。あとどうやら次は僕を利用するつもりだったらしいなぁ」

政府に働きかけてくれたのは彼らしい。
ほぅ、と気が抜けて、写しと顔を合わせると、間抜け顔。恐らく長義も同じような顔をしている。ぷっとふたりして笑ってしまった。



政府からの事情聴取をされ、続きはまた明日という事になり、手配されたホテルへ。(本丸は証拠保存のため、今は出入りできない)
政府である程度手入れをしてもらったため、傷はないがどっと疲れが出てきて、ふたりしてソファに沈み込む。

「ふふっ」
にやけた顔で写しがぽふんと長義の上に乗ってきた。そしてぺたぺたと肌に触れてくる。
「なに?」
「長義に触れられる。手を伸ばしたら届く。それが嬉しい」

嬉しそうにまだ触ってる。写しが楽しそうなのか面白くて好きなようにさせていたが、だんだん腹が立って来て、身体を入れ替えた。
いきなり見上げる形になって、写しは目をぱちくりさせている。
「俺だってお前にこうして触れられるのが嬉しいよ。でもお前ひとりで楽しむのは良くないね?」
「え、じゃ、じゃあ長義も触ればいい」
「じゃあ遠慮なく」


暗(@□@)転



余すところなく愛し愛され、次の日寝坊したふたりは、政府の協力者に大層からかわれることとなった。



ちょぎくにはっぴーえん〜〜!
お読み頂きありがとうございました!
お疲れ様でした!


■どうでも良い呟き
・すぐ近くにいるのに触れられない。こんなに恋焦がれているのに伝えられない、な感じをテーマに書きました。
・他の刀達はわかってるけど何もしない。近侍からの命令のため。
近侍はみんなを守りたくて。みんなは自分達が何か言うと近侍が罰を受けるので仕方なく。