木蔦(キヅタ)
2022-09-12 23:18:08
4691文字
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長義の精神の中に入ったまんばと、たくさんの感情くん達の話【ちょぎくに】


ちょぎくに

ある日、長義が倒れる。審神者によると、歴史修正主義が何らかの呪いを掛けたのではないかと。
そういえば昨日の出陣で敵から攻撃を受けた時に何やら様子がおかしかった。

外傷もないし、手入れなどしても目を覚さない。内側から長義を呼び起こそうと言うことになる。
精神にアクセスすることが必要だが、長義に近しい人の方が拒否反応が出ず、適任とのこと。

しかし同派と思われた長船派は悉く拒否される。審神者曰く、同派と言えど傍流、かなり作風も違うためだろうとのこと。
近しいというのが「仲がいい」と捉えるならば南泉はどうかと提案する。
しかし南泉も拒否される。恐らく一文字だからでは、との推測。

あとはまんばしかいない、と言われる。
写しだからそういう意味では大丈夫だろうが、嫌われている。長義は精神に触れられたくないだろう。
きっと拒否される、と思ったが、まんばは難なく長義の中に入れた。

「ここが本歌の中?」
夜のように辺りは暗い。これが長義の精神状態を表しているなら、なんてブラックなのか。闇、やみ、病み……

「くにひろ!」
舌足らずな声で呼ばれる。ぎゅっと足に抱きつかれた。
「ほ、本歌!?」
「くにひろ、助けてくれ!」

それは長義だったが、見た目4〜5歳の幼子だった。
「本歌、なのか??なぜそんな姿に?」
長義が一生懸命説明してくれる。いつものツンツンさはなく、見目も相まってとても可愛らしい。

要約すると、外部の呪いによって精神が乗っ取られ掛けた。そこで長義は咄嗟に力を分散して、いくつかが逃げおおせたと言う。しかし分散したことにより太刀打ちできず、手をこまねいている、とのこと。

「矜持くんが俺を逃してくれたんだ」
(きょ、矜持くん……?精神に名前が付いてるんだな……じゃあこの子はもしかして子供心くんとか無邪気くん辺りか?)

「だからくにひろ、一緒に助けに行って欲しい!」
「言われなくてもそのつもりだ」
その後、道すがら、何人かの長義を助けていく。

べっとりとアメーバー状の黒いものが張り付き、精神を侵しているらしい。しかし国広が斬るとあっけなく消え、解放された。

しかし反撃してくる呪いもある。国広にも呪いが及んだらまずい、助けに来たのに元も子もない、と身構えるが、幼子長義が庇ってくれた。
意外と幼子長義は強く、敵に攻撃する以外は足止めや防御など手助けしてくれる。曰く、ここは長義の世界だからある程度の自由が効くとのこと。

戦闘狂くんや理性くんなどを助ける。不思議とみんなまんばに優しい。特に幼子はまんばに懐いていて、離れようとしない。
幼子は可愛らしいが、それ以外の長義達は普段と違うのが違和感で、少し気持ち悪い。妙に親切。
性欲くんを助けた時は、まんばに抱きついてこようとしてびっくりした。性欲だから誰でもいいのか。他の長義が止めてくれた。

(でも俺を嫌ってるやつがいるはずだ。本能くんとか感情くんとかだろうか?)

「矜持くんがまだいない、深層にいるのかも
「あそこが完全に乗っ取られたらまずいよ、俺たちじゃ太刀打ちできなくなる」
「あまり国広は連れて行きたくないけど
「おれはくにひろと一緒がいい。一緒じゃないと嫌だ」
「お前は……矜持くんがいないとワガママ放題だな

何やら長義会議で向かう先が決定したらしい。
長義達に案内される。

大層立派な建物の奥深くに進んでいく。
(殿様でも住んでるのかと言わんばかり……
あの長義ならこれくらい豪勢な建物でも納得かも?と考えながら進む。
最奥は禍々しい気配に包まれていた。ドロドロしたものが部屋いっぱいに溢れている。
蠢く中に、腕が吸い込まれそうになっているのが見えた。

「矜持くん!」
「まずい、矜持くんが取り込まれたら!かなりの割合を占める精神なのに!あ!?」
「うわっ!」
「危ない!」

触手のような物が長義達を襲う。足を取られ、強い力で引っ張られる。呆気なく性欲くんや理性くんが飲み込まれた。

「こいつ!ここを乗っ取って力をつけている!」
他の長義も抵抗するが、どんどん吸い込まれていく。
まんばが咄嗟に幼子長義を庇ったから無事だったが、力が削がれているのか、前のように防御などはできない様子。
まんばは刀を抜くが、触手にまとわりつかれて身動きできなくなる。
「くにひろ!」
パンっと触手が弾け飛ぶ。腕が解放された。
「本歌!」
「これくらいなら俺でも!」

なんとか触手を避け、まんばが呪いを斬ろうとした瞬間、呪いは標的をまんばに変え、襲いかかってくる。
しかしそれを幼子長義が庇い、蠢く呪いの中に引き摺り込まれていく。

「本歌!」
「くにひろ、にげ……

逃げるわけにはいかない。まんばは長義を助けに来たのだから。

しかし長義達を全員取り込んだ呪いは強さを増す。空間が揺らぎ、平衡感覚が奪われる。ぐにゃりと視界が揺らぐ。

「ぐ……っ」
気持ち悪い。
まんばは直感のままに呪いに向かって走る。まっすぐ向かっているのか、明後日の方向なのかがわからない。長義のすべてが乗っ取られたのだろう。

(本歌……!)

長義達の顔が浮かんでは消える。助けなければ。

ぴょこっと飲み込まれたはずの小さな手が見えた。
(本歌!?)

しっかり握り、引き上げようとするが、びくともしない。まんばは長義を傷つけないように注意しながら、刀を突き立てる。

「本歌!本歌……!戻ってこい……!!」
「くに、ひろ……?」
「本歌!」

力強く斬り裂くと、幼子長義が飛び出してくる。慌てて抱き止めた。
無事なようでホッとする。が、それと同時にカッと辺りが光に満ちた。






まんばは目を覚ます。気を失っていたらしい。

視界一面星空で、たくさんの流れ星が地平線へ向かって落ちていく。その軌跡がまるで銀色の雨が降っているかのようで幻想的。

(そういえば、本歌の精神内も夜空だったな

ハッ本歌は!?と起き上がる。
「偽物くん、ようやく起きたのかな。ったく、人の精神でぐーすか寝やがって。随分神経が図太いようで」
「本歌」

いつもの嫌味な長義だ。
「え、小さい本歌は!?あとたくさんの本歌達は!」
「すべて習合した」
「お、俺の小さい本歌が!!(;□;)」
「だ、誰がお前のだ!!」
「あんたと違って、くにひろくにひろと慕ってくれたんだ。情が移らないわけないだろう」
…………
なぜか顔が赤い。
「アレのことは忘れろ」
「なんでだ!というか他の長義は俺に親切だったのに、本体のお前はその態度ってなんなんだ!絶対、俺が会ってない本心くんとか感情くんとか嫌悪感くんとかが俺を嫌ってるんだろ!」
「なななな!違っ……いや、それは
「どうなんだ」
……偽物くん!」
「?」
「俺は精神体で嘘がつけない。つけるがすぐ露見する」
「はぁ
「助けてくれたことは感謝する。だがこれ以上俺の中身を暴かないでほしい。俺はお前にだけは吐露したくないことがあるんだ」
「とろ?🍣」
「『言いたくないことがあるんだ』💢」
「ああ、そうか。誰にでも知られたくないことはあるもんな」

まんばはさっさと長義から出て行こうとする。

「ああ、そうだ。最後に教えてくれ、小さい長義は結局お前のなんだったんだ?」
長義は苦虫を噛み潰したような顔をする。
「それは、言いたくな────」
その言葉に被せて、別の長義の声が響く。

「え」
「ああ、くそ……!」
「待て、あんなにも俺にくっついて慕って離れたくないって
「だからお前にだけは言いたくないって言っただろうが!!」
「あれがお前の、本心?」
すごく不服そうな顔をしているが、長義は肯定した。

「いや待て、俺じゃなくてもあんな感じになったはずだ、南泉とか」
「猫殺しくんは別に親しいわけじゃない。そもそも彼がここに来ても弾き返すと思うよ」
確かに南泉はここに入れなかった。一文字だからじゃなかったのか。
「お前は誰にでも親切だし
「それはコミュニケーションを円滑にするための処世術だよ」
……
あれが長義の素直な気持ちだって??
サァと青ざめる。

「ああもう、こんな所で言うつもりはなかったのに
頭を抱えていた長義がキッとこちらを見た。なんとなく後退ったらバランスを崩して、ころりと倒れ込む。

視界が満天の星が広がった。それにぐっと長義が入り込む。


「お前のことが好きだ」



ちょぎくにハッピーエンドー!イエエェェェェ!!

お疲れ様でした!お読み頂きありがとうございました!



■どうでもいい設定
・幼子長義は、素直な心、本心、子供心、純粋な思いなどを司ってます。
他の長義とは別格で、幼子長義くんに敵うのは矜持長義くんしかいません。
・矜持長義くんは他の感情くん達と同等の身分ですが、一番力を持ってます。山よりも高いプライドを持ってるので、それだけ強いです。
・矜持長義くんが幼子長義くんを逃したのは、幼子くんが別格だからです。取り込まれたらこの世界は終わりと察し、自身を犠牲にしてでも逃しました。
・幼子くんは純粋にまんばを好ましい、好き、一緒にいたい、慈しみたいという思いを持ってます。
・恋心くんも出せば良かったな……(頂いたマシュマロを見て思った)
・幼子くんは「〜したい」という純粋な気持ち(ストッパーがいない)つまり欲望の塊。それを理性くんや矜持くんが抑えつける役割をしてます。
・感情くん達の粒度が揃わず、一貫性がないですが、ご容赦くださいませ💦所詮お祈りですよ💦
・長義くんが歯が立たず、まんばが呪いをどんどん浄化できた理由は、長義くんにぴったり合った呪いを掛けられていたため、弱点というか、相性の悪い霊力だった。長義くんには強いが、外部の者には対応できないため、まんばの攻撃には弱くすぐに浄化していた。
・ラストシーンが書きたいがためにお祈りをしていたと言っても過言ではない。だからここだけ情景描写がある。この話をもし小説とかにするとしたら、間違いなくタイトルは『銀色の雨』
・天啓を受けた時は、折れた長義くんが悲しむまんばを慰めるための星空の雨だった。
でも刀剣破壊は地雷なので回避。
長義くんの精神の中ということに変更。それに合わせてストーリーも変更。(つまりすべて変更)




■矜持くんが書きたかったけど、まんばくんと会えなかったので、If設定でもし会っていたら。

まんば達が駆けつけると、長義がひとり、呪いと対峙している。こちらを見て不快そうに顔を歪めた。普段接してる長義にそっくり。

「君達、偽物くんなんか連れてきたの?」
矜持くんは長義の中でも大きな割合を占めていると道すがら他の長義から聞いた。

(俺を嫌っているのは矜持くんだったんだな!)
他の長義は優しいが大部分を占めている矜持くんから嫌われているなら、いつもの態度は納得できる。

「偽物などに施しを受けるなど、俺が許さん
(高慢!)

「しかもこんな危険な場所にノコノコ連れてきて、偽物くんに何かあったらどうするんだ!」
(は?)
「だって一緒にいたかったんだ!いつも矜持くんに反対されるから!」
「弱々しい写しなんて連れてきて瘴気にあてられたらどうする」
「う……
心配されてる?いや馬鹿にされてるのかも??どっちだ??