木蔦(キヅタ)
2022-01-29 13:22:15
4984文字
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魔性の刀のまんばの話【ちょぎくに】


ちょぎくに

長義はある本丸に顕現する。そこにはもちろんまんばがいて、当然回想のやりとりをする。

「本歌は、俺のことが嫌いなのか?」

じっと見つめられ、うっとなる。
頼りなさそうに揺れる瞳、下がった眉尻、長義の裾をきゅっと掴んだ手。
「そ…………ういうわけではないが
「よかった
なんだか心臓がうるさい。顔が熱くて「???」となった。

それからまんばの事が気になって仕方ない。なんなのかよくわからない。

たまにまんばに話しかけられる。ちょっとした用事で手伝って欲しいとか。
そんな事俺に頼むなと一蹴したいが頼られるとつい応えてしまうタイプなので、手伝ってしまう。

ある日審神者に呼び出される。まんばが好きなのか、まんばにあまり近付くなと釘を刺される。
別に長義が近づいているわけじゃなく、まんばが話しかけてくるだけなのに。
そこで長義は気づく。審神者はまんばのことが好きなのでは。
もしかしたら既に出来ているのかもしれない。

長義は当たり障りのない事を言い、その場を逃れた。
まさか審神者がまんばに入れ込んでいるとは思わなかった。

「あ、長義」
まんばに呼び止められる。
内容はどうでもいいこと。長義を頼って声をかけた。

長義はじっとまんばを観察する。
まんばにはどこか色香がある。際立って魅力があるというわけではない。目立たないが人を惹きつけるような何かがある。

「長義?」
艶めいた唇、肌触りが良さそうな頬、長義を見つめる瞳。
なるほど、これが審神者を夢中にさせた刀か。

長義はごくりと息を呑む。
意識するとひとつひとつがなまめかしく感じる。長義の手を取る仕草でさえ、妖艶さを感じる。まるで長義を誘っているような。

「長義」
まんばに見つめられるとおかしくなる。吸い寄せられる。

気づいた時にはキスしていた。
「!!」
「あちょ、長義?」
戸惑ったまんばの顔。驚いて目がまんまる。長義自身も戸惑っているはずなのに、まんばの表情に目が離せない。惹かれる。
再びちゅっとキスをする。
「ん
まんばは逃げない。抵抗もしない。
再び離れるとまんばの目は潤んでて、もっとと乞うように長義を見つめる。物欲しげな表情。

その後は止まらなくて、何度も何度キスをした。




何してたんだ俺は……

部屋に戻り、長義は後悔する。なんであんなことをしてしまったのか。
あの時は何かに乗っ取られたように夢中であんな事をしてしまった。まんばにキスするなんて。
しかも審神者に釘を刺された直後に。
審神者とまんばは付き合ってるのか?
そんな雰囲気はなかった。むしろ少し距離を置いているようにも見える。

もしかしたら秘密の交際なのかもしれない。バレないようにわざと表では距離を置いている。

審神者とまんばはもうキスしたんだろうか。それ以上のことも
そう考えると焦燥感で胸がいっぱいになった。しかし長義はその気持ちに気づかないふりをする。

しかし今日のは浮気だ。なかったことにしよう。
それなのに次の日長義は窮地に立たされる。

まんばに呼び止められ、蔵に荷物を運ぶことになる。蔵に荷物を置いたら、まんばに引き留められる。
「長義

きゅっと長義の裾を引く。目をウロウロさせた後、目を閉じ、長義に顔を向けた。

これは、キス待ち顔

長義は戸惑う。彼は審神者と恋仲だ。それなのにキスしていいわけがない。昨日反省したじゃないか。

ぐっと抑える。

まんばのことを引き離す。
「長義……?」
悲しそうな顔でまんばが見つめてくる。
そんな顔を見たらぎゅっと胸が押しつぶされそう。

「ちょうんん」

気づいた時にはキスしていた。
昨日は例えるなら切なく求めるようなキスだったけど、今日は無理やり奪い取るような。

角度を変えて何度も何度も。
審神者のことは遠に頭から消えていた。



それからは隠れて何度もそういうことをした。

大抵まんばに誘われて。
物欲しげな表情で見つめられると抗えない。いけないと思いつつもなし崩しにそんな関係が続いていた。

審神者から声をかけられる。
まんばのことを好きになってないよね、という確認。
ぎくりとする。
「なってない」
誤魔化した。声が少し上ずったかもしれない。審神者は気づかず、ならいいと言った。



このままでは良くない。改めてそう思うが、この関係に踏ん切りをつける事ができないままでいた。
そんな時まんばが言った。

「シて、ほしい」
それが何かわからない長義ではない。
誘われたのは食糧庫でキスしている時だった。まんばが悩ましげな息を吐いた後、そう言った。

長義は一瞬迷いがあった。審神者のことがある。だけどまんばに「あんたがほしい」と言われた瞬間、我を無くした。

気づけばまんばに壁に手を付かせ、腰を打ち付けていた。食糧庫にはまんばの嬌声が響いていた。

二度目は空き部屋だった。廊下を歩いていたら所で部屋に引き摺り込まれ、誘われた。周りに聞こえないよう息を殺して行為に及んだ。

三度目はまんばの部屋だった。
すれ違い様に「今夜俺の部屋に来て欲しい」と言われ、忍んで行った。そして何を言うでもなく布団に押し倒し、行為に耽った。

そうして何度も体を重ねた。

そしてついに審神者から呼び出された。
もちろんまんばとのことだった。

まんばのことは諦めろと言う警告だった。
審神者と恋仲なのであれば、と言いかけるとそうじゃないと否定された。

まんばと関係はなかったらしい。ホッとした。
しかし別の事実が明らかになる。

「あの子は魔性の刀だ。何振りもあの子に魅了されてダメになっていった。だからうちで引き取ったんだ」

それを聞いた時衝撃が走った。まんばは今まで何振りもの刀を誘惑していたらしい。
そして今は長義に狙いを絞っている。そういうことだ。
「お前があの子に惚れたと言うなら、あの子はうちでこれ以上預かれない。他所に行ってもらう。それがお互いのためだ」
長義はびっくりする。
「す、好きになんてなってない!」
慌てて否定する。
「あの子のことは、好きじゃない!」
審神者は疑わしい目つきで長義を見ていた。

思えば手慣れていたと思う。男を誘う仕草、文句、その気にさせる眼差し。
ドキッとさせられ、気づけば夢中になっていた。

あれは弄んでいたのか、それとも暇つぶしか性欲処理か
何にしても裏切られた。
もうこれ以上まんばにのめり込んではいけないと思う。





まんばに誘われたが、素っ気なくする。まんばが縋ってくるので言ってやった。

「今までそうやって何振りも誑かしてきたんだろ」

まんばはびっくりした顔をする。今まで何振りの男にこうやって足を開いたんだろうと思うと虫唾が走る。
「お前には失望した。もう俺に話しかけるな」

長義はそれ以来まんばを避けるようになる。顔を合わせたくない。合わせればどんなことをしてしまうかわからない。
怒鳴るかもしれない、責めるかもしれない、逆に許したくなるかもしれない。何をするかわからない。

そしてしばらくしてまんばが別の本丸に移ると言う話を聞いた。長義はびっくりする。
まんばと会えなくなると思うと胸がぎゅっとなったが、顔を合わせなくていいとホッとする面もあった。

審神者に声を掛けられる。
まんばから出て行きたいと審神者に申し出たらしい。審神者は引き留めたが、本人の希望ならと了承した。
「次の所では上手くいくといいけど」
「どうだか」
どうせ次の所でも男を誘惑するに決まってる。
「あの子はいろんな子から言い寄られて悩んでたから、うちで匿ったんだよ。他所で上手くやれるか心配」
「え?」

言い寄られてとは?
出来心で誘惑したら本気で言い寄られて、という意味か?

「あの子は人を惹きつける魅力がある。本人に自覚はないみたいだけど他人を自然と引き寄せる。その所為で無理強いさせられそうになったり、狂気じみたstkに遭ったり、大変だったみたい」
「え、だって、自分から
「うん、自分から話しかけるなんてしないのに、目が誘っていたとか、仕草がそれだったって言い掛かりをつけられるんだって」

長義は今までのことを思い出す。いつもまんばから声を掛けられていた。いつも誘うのはまんばからだった。淫靡な雰囲気で長義を誘っていた。

審神者の話は信じられない。自分の知るまんばと全然違う。

確かめなくては、と走り出す。まんばの元へ。

まんばは部屋で荷物をまとめていた。長義を見てびくりとする。悲しげに目を伏せた。
そんな顔をさせているのは長義の所為だと思うと、胸が締め付けられる。

潤んだ瞳、不安げにフルフルと揺れる睫毛、頼りなく落ちた肩。
衝動に突き動かされて、長義はまんばをぎゅっと抱きしめる。
「ちょ、長義!?」
するすると撫でるように手を滑らせる。敏感な部分に辿り着き、ぴくんとまんばの体が跳ねた。
くるくると押すように撫でると、まんばは熱い吐息を吐く。ちらりと長義を見た。

その瞳は欲に染まっていて、その先を期待していた。
唇を重ねると悩ましげな吐息が漏れる。とろりとした瞳で長義を見つめている。それは長義がほしいと語りかけていた。

角度を変えてキスを深くする。まんばは長義の首に腕を回し縋った。
そしてどちらともなく、身体を求め合った。

長義はまんばに狂っていると無意識に気づいていた。
気づいていたからこそ会いたくなかった。真実など放り投げてまんばを求めてしまうとわかっていたから。

怒鳴ることも責めることも許すこともせず、ただそこにまんばがいればいいと、今があればいい、過去も未来も知らないと思ってしまうから。

そのままお互いを求め合った。



( ´ - ` )暗転



まんばの過去は真実かわからない。でも彼の目が長義を愛おしい愛おしいと言っている。それだけで十分だった。
長義はそれほどまんばに入れ込んでいる。もう後には戻れない。手放せない。そばに置きたい。
もしかしたら過去にまんばに執着した男の中で1番厄介かもしれない。

「長義
ちゅっとまんばが啄むようなキスをする。
ふふっと微笑んで、さらに物欲しげな眼差しを向けられる。

長義はそれに抗えない。まんばに覆い被さり、目一杯キスをした。応えるまんばのひとつひとつの仕草が指先までも艶めかしい。

審神者が言ったことが真実なら、どんな天性の才能だと思う。
狙わずにこんなに上手く男を誘う刀があっていいものか。

そして長義はまんばにのめり込んでいく。




ちょぎくにハッピーエンド〜!
お疲れ様でした!ありがとうございました!

この後ふたりは審神者に報告しに行ってまんばの本丸移行の話は立ち消えになります!
審神者もまんばが本心から長義を好きならと納得します!

真実が有耶無耶になりましたが、審神者が言ったことが真実です!
まんばは天然でそういう仕草が多く、それゆえ勘違いされがちです。暗闇に連れ込まれ、あわやということもありました(未遂)
口下手なため、相手がどんどん自分なりに解釈して行き、まんばにのめり込んでいきます。
ついにはstk化したり、廃人になったりして刀として使い物にならなくなります。
本人にその気はないのに、何振りもの刀が魅入られて、ダメになりました。

そして見兼ねた審神者がまんばを安全な所に避難させようと知人の審神者(本編中の)に送ります。

まんばは顕現した長義を見た瞬間惚れます。
今まで見たどの刀よりも、誠実で欲に溺れなさそうな印象。
その証拠にまんばを見ても攻撃的な言葉を放つ始末。

長義ならばあんな風になったりしない、と盲目的に信じるようになります。そして恋刀にするなら長義がいいと思います。

しかし長義とあまり関わりはないため、まんばは積極的に声を掛けます。卑屈なまんばには珍しい行動。
そして本編に至る、という経緯でした。



本文中で出てきてないけど、まんばに酷いことを言った件はちゃんと長義くんが謝罪してます!暗転後の翌朝ですが!