木蔦(キヅタ)
2022-01-11 11:53:54
4573文字
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牡丹鍋とまんばの話【ちょぎくに】


ちょぎくに

まんばの本丸には長義がいない。聚楽第で優を取ったが、配属されなかった。他の本丸からネタバレで聞いてるから報酬だったことは知ってる。政府に抗議したが聞いてもらえなかった。

(あの怪しげな布の男が、本歌……
戦いの最中、ねっとりした視線を向けられた。

本歌に会いたい、会って認めてほしい、出来損ないの写しじゃなく一振りの刀として見てほしい。
完全に同位体からネタバレ(偽物くんと呼ばれるなど)されてるまんばはそう思っていた。

本歌が顕現した時のためにもっと修行をしておこう。
まんばはそう考えて審神者に許可を取り、山に籠る(Not極の修行)
滝行をし、崖を登り、精神や身体を鍛えた。

さて、そろそろご飯の支度をせねばなるまい。暗くなる前にご飯を確保したい。
本丸からは少しだけ持ってきてはいるが基本的に現地調達。
まんばは狩りをすべく、森に入る。
猪が取れた!✨(*´﹃`*)

興奮していたのか向こうからまんばに突進してきた。ラッキー。昏倒させ、荷物を置いたベース基地に背負ってくる。

(今日は鍋……いやしし肉カレーも捨てがたいな……
まずは臭みを取らなければと準備していると、猪が起きた。
しまったトドメを刺しておくべきだったと慌てる。猪は怒っているのかまんばの元へ再び突進してくる。
(逃げられるかもと思ったけど向かってきてくれて良かった!)
まんばはホッとして刀を振り上げる。

しかし猪は急ブレーキ。
ブヒブヒ訴えかけてる。
「??」
鍋を見てさらにブヒブヒ。
「まさか、煮込み料理じゃなく、焼いてほしいのか?こだわりがあるんだな」
プギーッと威嚇された。どうも違うらしい。
よく見ると普通の猪より一回り小さい。もしかして自分は子どもなので見逃してくれと訴えているのかもしれない。

さすがに可哀想かと思って逃してやる。
「達者で暮らせよ、牡丹鍋……大きくなって俺の腹を満たしてくれ
涙ながらに夕飯を諦める。日も落ちてきてしまったので、今日は本丸から持ってきたご飯を少量食べて過ごそう
しょんぼりしながら火を起こす。

すると何故か猪が帰ってきた。
「まさか!やはりステーキになりたいと!?」
プギーッと怒ってる。違うらしい。
ペイッと口から何かが落ちた。数個のキノコ。
採って来てくれたらしい。
「俺の、ために?牡丹鍋、お前ってやつは……!」
ぎゅっと抱きしめると何故かプギーッと怒られた。
夕食はキノコのソテー。美味しく頂いた。

朝起きるとまだ猪はいた。まんばのすぐそばで寄り添って寝ていた。丸々とした身体をきゅっと縮めている姿は可愛らしい。
「美味しそうな朝ごはん……
びくぅと猪が飛び起きた。
「ジョークだジョーク。まだ太らせるから食べない、大丈夫だ」
猪に心なしか少し距離を取られた。

朝ごはんは昨日残したキノコを少し分けてあげた。
それから猪はまんばにずっと付いたままだった。猪はまんばを親だと勘違いして懐いているのかもしれない。

「鍋、おいで」
夜寝る時は猪を抱えて暖を取る。とても温かい。猪も大人しく腕に収まっている。

そして数日が過ぎた。

「明日俺は本丸に帰る。鍋、明日でお別れだ」
ぴくっと猪が反応する。
ここ数日でわかったことだが、この猪はひとの言葉を理解するらしい。賢い猪だ。
「立派な大きい猪になって、俺の腹をたらふく満たしてくれよ」
ナデナデするが不服そう。随分懐かれていたからお別れが寂しいのだろう。

次の日お別れを済まし、下山したが付いてくる。
「お前には帰るところがあるだろ?困るんだが
押し返そうとしても戻ってくる。
じっとつぶらな瞳で見つめられて、ついにまんばは根負けする。

「わかった

本丸に着いて早々、猪は兄弟達に歓迎された。
「美味しそうであるな!」
「僕に任せて!腕によりをかけて作るよ!」
堀川がしっかりと猪を抱き上げる。
「兄弟楽しみにしてる」
兄弟の料理は絶品。きっと牡丹鍋も立派な牡丹鍋になるはず。
猪はプギプギ抗議してる。やはり調理法に拘りがあるらしい。
「牡丹鍋はもう少し太らせる予定なんだ。大きくなったら本丸みんなに振る舞おう」
「わかった、しばらく馬小屋を間借りして飼育しようか」
堀川提案で馬小屋へ。
しかし再びブヒブヒ抗議される。
「馬が大きいから怯えてるのか?」
「精神的ストレスがあるとそんなに大きくならないかもね」
「それはいけない!別の場所にしよう」

結局どこもNG(本人的にor審神者的に)で困ってしまう。
「こんなに兄弟に懐いてるんだから兄弟の部屋で飼うとかどうかな?昨今はミニブタを飼ってる人もいるし」
「なるほど」

堀川が猪を全身洗ってくれて、まんばの部屋にトイレや飲み水も用意してくれる。


本丸で育てるが全然大きくならない。
食べ物は用意した物を食べず、まんばと同じ物を食べたがる。仕方なく今は一膳だけ猪用に用意してもらってる。
猪は意外と綺麗好きで、用意したトイレにはせず人間用のトイレで用をたす。あと寝床に犬猫用のクッションも用意したが、毎夜まんばの布団に入って来た。山での名残かもしれない。

本丸の仲間に猪を紹介する時に、牡丹鍋を楽しみにしててくれと告げると「ペットじゃないの!?」とツッコまれた。ペットではない。
ペットではないが、徐々に情が湧いて来てしまう。まんばの後ろをついてくる姿はとても可愛らしい。
そして後ろから見るプリプリしたおしりはとても美味しそう。(*´﹃`*)楽しみ

一緒にお風呂に入っている。
馬と一緒に洗おうとしたら怒った。まんばが風呂に入る時についてくるので、一緒に入れてみたら気に入ったのか、習慣になった。
ちなみに風呂中に「出汁を取ってる」と言うと怒る。



ある日、特命任務の指示が下る。再び布を被った謎の人物(ネタバレのため本歌だと知ってる)が来て説明をして行った。
「今度こそ報酬はもらえるんだろうな?」
「戦績次第だ。もちろん優を取れば政府からそれ相応の褒美が出る」
それはもしかして『前回の戦績は報酬を与えるに相応しくなかった』ということだろうか。だから本歌が配属されなかった。今度こそ頑張らなければ。

まんばは再び聚楽第へ出陣するために、部屋に一旦戻り荷物を整える。

フガッと猪が寄って来た。
「鍋、しばらくお留守番だ。俺は本歌に認めてもらうため頑張ってくる!」
寂しいのかプギプギ抗議している。
「今度こそ本歌を賜れるんだ!絶対にこのチャンスをふいにはしない」

猪が暴れ始める。何か不服があるのか。
ぴょんと机の上に乗った。
「あ!机に乗るのはお行儀が悪いぞ!兄弟に叱られる!」
「プギーッ」
「怒ってもダメなものはダメだ!」
降ろそうと近づく。
猪がまんばに向かって突進して来た。
「わっ!」
受け止めきれず、弾き返すこともできず、まんばは思いっきり顔面を打つ。
「っつ……!鍋、一体どうし……

顔を上げるとまんばの本歌である長義が立っていた。

全裸で。

( °Д ° )!?




「え?え?なんで……、本歌?本歌の本物??本当に本当??」
「国広、知らなかったとは言え随分今まで可愛がってくれたね?とっても感謝してるよ」
にっこり笑ってるがなんか寒気がする。
「え?かわいが??本歌をなんて、してな

ずんずん迫ってくる。怖くてずーりずり後退るとすぐに壁。
「え、本歌?なんで、どこから?帰ったんじゃ
「やだな、ずっとお前と一緒にいたじゃないか。それに同位体と俺を間違うなんて、ちょっと許せないな」
「ずっと??」
「お前が可愛がってた猪、いるよね?」
「牡丹鍋のことか?」
「お前はいつも俺に言ってたね、早く大きくなって俺の腹を満たしてくれって」
「え、ああ……?」
でもそれは猪に言った言葉で長義ではない。

「望み通り、満たしてあげよう。お前の腹を俺で、いっぱいに」



暗転




「おはよ」
キラキラしい長義が横で寝てる。優しげな眼差しでまんばを見てた。もしや寝顔見られてた?
「え、と、本歌?その
布を被ってないことに気づき慌てて顔を隠す。
「お前のことは隅々まで見てるんだから今更隠すことないよ」
「す!?」
ボッと赤面して布団に顔を押し付ける。
「そういえば出陣!」
「昨日お前が寝た(≒失神した)後に主に拝謁したんだけど、その時お前を外すように伝えておいたから大丈夫」
「しかし聚楽第で本歌が俺を待ってるんだ!」
「この状況で他の男の話はやめろ。お前の本歌は俺だ」
まだ頭が混乱している。
「本歌は本歌じゃなくて、本歌は別の本歌で、牡丹鍋が本歌……?」
「そうだよ」
「なんで
「聚楽第の報酬で俺は本丸配属になった。しかし本丸に一歩踏み込んだ途端、みすぼらしく小汚い屈辱的に醜く卑しい猪の姿になってしまった。」
「俺の鍋を侮辱するな」
「こんな姿では人に会うことなどできない。俺は咄嗟に本丸近くの山に逃げ込んだ」
そしてまんばと会い、今に至る。
「なぜ本丸に入った途端
「政府顕現から審神者所有に移る時、俺の練度はリセットさせるようになっている。その時に霊力云々が一旦切れるから、その隙間を狙って呪いがかかったに違いない。」
そういえば長義は山姥を斬った逸話があった。その影響からか畑から嫌われると聞いた。(ネタバレ)
「猪は山の神の化身や遣いに例えられることがある。一方山姥は山の神やその巫女という一説もある。その関係で俺が姿を変えられたんだろ」
「はぁ
「猪としての生活は不満ばかりだったが、お前の横は悪くなかった」
「はぁ」
「俺は寛容だからね、お前を名前で呼んであげよう。お前に文句を言いたいこともあったけど、俺の身の回りを手助けしたご褒美だよ」

あれ?これって偽物じゃないって認めてくれたってことでは??

「山姥切の号も、俺の写しゆえに名乗っていると考えれば納得もいく。つまりお前は俺のと言うことだ」
ん?ちょっとよくわからない。

きょとんとしてるとごろんと転がされる。
「お前は食いしん坊だから、そろそろ次が欲しいだろ?また俺で満たしてあげよう」
「は!?ぇ、あ、まだ、入っ!」

はい、暗転暗転



ちょぎくにハッピーエンド!お読み頂きありがとうございました!お疲れ様でした!




どうでもいい設定
・カエルの王子様モチーフ。オヒメサマのキスで元に戻る。
・政府に長義が来てないことを抗議したが、政府は「一振りだけじゃなくもっとたくさん寄越せ!」的な苦情だと勘違いし一蹴した。
・火を怖がらない獣という点でおかしいことに気づくべきだった。
・山で暮らしているうちに汚くなるのか不満だった。風呂に入りたかったから、本丸に来れた時洗ってもらえて満足満足。
・本丸のみんなは「本当に食べるの?」「ってか牡丹鍋って名前www」「可愛がってるし本気で食べないだろうな」の3パターンに分かれた。ちなみにまんばは本気で食べる気だった。
・こんなに冷静に会話しているアサチュンシーンですが、入ったまま話してる。