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木蔦(キヅタ)
2021-12-26 12:57:55
7470文字
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本霊に頼んで再度恋刀のいる本丸に顕現したまんばの話【ちょぎくに】
※刀剣破壊ネタ、最後はハッピーエンド
※審神者が出ます。しゃべります。
ちょぎくに
まんばは不慮の事故から折れた。出陣時に仲間を庇い、そのまま
…
。誰も悪くない、だけど誰もが悲しんだ出来事だった。
まんばは心残りがあった。
それは恋刀である長義のことだった。
まんばの魂は本霊へ還る。
本霊に戻って、新たに山姥切国広として転生するだろう。しかし記憶は消え、個を失った状態になる。
『本霊、どうかこのまま見逃してはくれないだろうか』
まんばは本霊に願い出る。理由を聞いた本霊は少し考えた後、こう答えた。
『お前の願いを聞き入れても良い』
『本当か!?』
『ただし条件がある。お前はお前であることを誰にも話してはいけない。話せばお前の記憶は消え、別の個体として生きることになる。あとお前の願いが叶わないとわかっても自ら命を絶つことは許さない』
まんばは嬉しくて何度も頷く。
『約束する!』
『なら行け。本来ならば本丸は選べないが、縁を繋ごう。俺からの餞別だ。』
まんばは本霊の霊力に導かれるように、外へ向かっていく。神域を抜け、時空を越え、たどり着いた。
最初に感じたのは眩しい光だった。次にはらはらと桜が舞っているのが見える。
「こ、ここは
……
?」
「山姥切国広、ですか
……
」
目の前にはかつての主がいる。
「!ある
……
」
審神者を呼ぼうとして口を噤む。本霊にはバレてはいけないと注意されていたんだった。
だけど励起した人間を主と呼ぶのは自然なことのはず、とまんばは思い直す。
「主、呼んでくれたんだな、ありがとう」
そう告げるが、審神者の表情は曇ってる。
「刀解、刀解しましょう」
審神者が思い詰めた顔で言った。
「い!?刀解!?」
「折角来てくださった貴方には申し訳ありませんが刀解します!」
「ま、待ってくれ!」
折角再び戻ってこれたのに冗談じゃない。本霊に特例として認めてもらったのだから二度目はないだろう。チャンスを不意にするわけにはいかない。
「刀解はしないでほしい!雑用でも何でもする!書類仕事だって、遠征だってこなしてみせる!頼む!ここに置いて欲しい!!」
頼み込む。審神者は少し迷った後、そこまで言うなら、と許可してくれた。
まんばは心が弾んでいた。なんてラッキーなのか。本霊に許しを得て、再び同じ本丸へ戻ってこれた。また長義に会える。
馴染んだ建物、見知った廊下、何度も眺めた庭。感覚的には1日程度しか離れていないのに、懐かしいと感じる。
まんばは長義を見つけた。
パッと気持ちに花が咲く。1日ぶりの再会。
長義がまんばを見た瞬間、顔を歪められる。
ああ、この顔久しぶりだ、初対面の時もこんな顔で「山姥切の名で顔を売ってる偽物くん」と言われたっけ。また「偽物くん」からスタートかな、とまんばは思う。
「お前、新しく顕現したのか」
「そうだ、これからよろしくな、本歌」
「俺には近づくな、お前を見ると虫唾が走る
……
!」
「へ?」
「俺はお前らが嫌いだ
…
!視界に入るな」
憎んでいるような表情でまんばを睨む。まんばは驚いた。最初はぎこちなくても、また恋仲に戻れると思ったが長義の反発を受け、呆気に取られた。
長義は言いたいことだけ言うと去ってしまう。
まんばが期待してた再会とはかけ離れていて、呆然としてしまった。
しかしまんばは前向きだった。身体は修行前だが、心は極だった。また再び恋仲として笑い合えると信じていた。
ただまんばが考えるほど、状況は甘くなかった。
長義に話しかけても無視される、ウザがられる、邪険に扱われる。しばらくすれば前のようになれると思っていたのに、全然その気配がない。むしろ悪化している。
避けられるし、偶然会っても顔を歪められるし、さすがのまんばも傷つく。
「国広さん」
短刀に呼ばれる。
「あんまり長義さんに話し掛けるのやめてあげて」
「え
…
でも」
「実は長義さん、ついこの間恋刀を亡くしたばかりなの。だから落ち込んでて
…
。国広さんの所為じゃないんだけど、しばらくそっとしておいてほしいの」
でもそれは俺だから正体を明かせば解決するのに、と思うが本霊との約束で話せない。
再びあの関係を築きたいのに、思うようにいかない。
「悪いが、それには従えない。忠告ありがとう」
それだけ短刀に告げる。
まんばは長義の部屋を訪ねる。ひとりしんみりしていたので、わっと脅かしてみた。
「勝手に入って来るな」
「良いだろ別に」
「お前に出入りの自由を許可した覚えはない」
「前の俺を思い出してたのか?」
沈黙するので恐らく図星。
「落ち込むな、そんな顔する必要はないんだ、だって
…
」
「お前に何がわかるって言うんだ!!」
払いのけられる。
「何も知らないくせにズカズカ入って来るな!無神経な奴だ!俺は
…
!まだ
…
!!」
長義が泣きそうな顔になったと思ったら、キッとまんばを睨んで、部屋から追い出した。
もう来るな、と怒鳴られた。
まんばは随分怒らせてしまったと気付く。どうしよう。しかしまんばがまんばなわけで、長義が悲しむ必要などない。こんなに側にいるのに、慰めてあげられない。
まんばはしばらく距離を置くことにする。さすがに自分自身だとは言え、無神経だったかもしれない。
だけど長義のことは心配でしょうがない。寂しい想いをしている。その寂しさを埋めてあげたい。悲しむ必要などないのだと気付かせてあげたい。
まんばは長義をそっと見守ることにする。
ある日長義がひとりで庭に座り込んでて、その後ろ姿が寂しげで、まんばはつい声を掛ける。
「邪魔するな」「ひとりにしてほしい」と言われる。
だけど今ひとりにさせたくなくて、まんばは長義後ろに座り込む。
少し土が盛ってあって石が置いてある。まんばの墓かもしれない。
墓参りをしていたのかと知る。
なんとなく、最後のお別れをしているような気がした。
「俺と、別れようとしてるだろ」
ボソリと呟いた。
「なんでそんな無駄なことするんだ」
まんばがまんばなので別れる必要などない。
「は!?部外者のお前が口出すことじゃないだろ
…
!」
「忘れる必要なんてない」
「!」
「別れるなんて、言わないでくれ
…
」
まんばがそういうと長義が黙り込んだ。
そのまま暗くなるまでふたりでじっとしていた。
長義はそれ以来少し気を許してくれたのか、悪態は吐くが、側によっても追い返すことは無くなった。調子に乗って居座ると邪魔だと追い出されるが、前よりも態度が軟化した。
しかしたまに長義がまんばを見て苦々しそうな顔をしている事に気づいてはいた。
しばらくすると長義の様子がおかしくなった。精神的に余裕がなさそうでちょっとしたことで怒鳴ったり、酷く落ち込んだりした。それを宥めようとするが、まんばが近づくと避けられた。
これもまんばが折れた所為で精神的に不安定になっているのかもしれない。ここにいるのに、言えない。
夜寝れていないのか、目の下に隈ができてる。まんばはさすがに放っておけなくて、長義の元へ訪れる。
心配だ、とか、寝れてないんだろ、と指摘すると長義は逆ギレした。
「お前のせいだろ!!」
「え
…
!」
「お前が視界に入るだけでつらい
…
!アイツのことを思い出す
……
!こんな想いしたくないのにそばにいないのを思い知らされてるようで
……
!」
まんばは同位体だし、本人だから似てるに違いない。思い出すのは当たり前。
「お前を見るたびにアイツの姿とたぶる。そのたびにつらい
……
!」
苦しめてたのは自分だったと知る。
そして自分がまた恋刀になりたいと思ってた望みは考えていたほど軽いものではないと知る。
「俺は、俺なのに
…
」
「お前はお前で、アイツじゃない。それはわかってる」
「わかってない
…
。俺は、俺なんだ」
まんばは悲しくて、長義から逃げ出す。
長義がこんなにも苦しんでる。それはまんばが顕現したからだ。
まんばが来なければ長義は恋刀のことなど忘れ、平穏な日々を過ごしていたかもしれない。
こんなにも長義を苦しめるなら、顕現しなければよかった。
まんばは自室に籠り、ポロポロと泣く。
まんばは刀解されようと考え、鍛刀部屋に向かう。まんばがこの本丸にいるだけで苦しめてしまう。長義のために戻ってきたのに、これは不本意だから、消えるべきだ。
そう思うが、部屋の扉を開けたところで、まんばは雷に打たれたような衝撃が走り、倒れてしまう。
まんばは思い出す。本霊との約束で、自ら命を絶たないと誓わされたことを。それの警告かと遠のく意識の中、気づく。
起きた時には手入れ部屋で寝かされていた。誰かが連れてきてくれたらしい。
身体は何ともない。
まんばは長義との約束のためにここに戻ってきた。それなのに長義に拒否されたくらいで落ち込んでどうする、と思う。
長義がまんばを見て辛くなるなら、辛くならないように気持ちを軽くしてあげるべきだと考える。
再びまんばを愛するようになれば辛くならなくなるはずだと思った。つまり再度恋仲に!
まんばは長義に詰め寄る。
「あんたがどう思ってようが構わない!俺はあんたが好きだ!」
長義はたじたじ。
「辛い想いをしてるあんたを放っておけない!俺がそばにいたい!付き合って欲しい」
直球で言った。
「いや、俺はまだ
…
」
「構わない、今は気持ちの整理がつかなくても。仮でいい、恋刀にしてくれ!」
まんばは押して押して押しまくった。そして押し切った。見事長義に了承をもらい勝利!
これで前のような関係に戻れる。長義に寂しい想いをさせない。
と、思ったが、問題は解決したわけじゃなかった。
長義は明らかにまんばを通して誰かを見てる。誰かとは十中八九自分なのだが、それでもつらい。
自分は自分なのだと主張したい。やきもき。
一緒にいても、長義はまんば(折れた方)のことを考えている気がする。
最大のライバルは自分だった。
今を見て欲しい。過去にとらわれず、まんばと今いることを楽しんで欲しい。だけど長義には伝わらない。
たまに長義がまんばを抱きしめたりキスしてくれたりする。だけどそれも代わりなんだと思うと虚しくなってくる。
長義くんサイド
恋刀を不慮の事故で亡くした。死に目にも会えなかった。
恋刀を亡くしてからは空虚だった。ただ時間が過ぎていくのを待つだけ。
ある日、長義は信じられないものを見た。
それは布を纏った写しだった。
確か審神者はしばらく彼を顕現させないと言っていたはず。それがなぜ。
写しの顔など見たくない。傷がズキズキ痛む。失ったばかりなのになぜそんな傷をえぐるようなことが起こるのか。
そうして彼を遠ざけるような言葉を放った。
「俺には近づくな」
審神者に話しをしに行く。まんばにどうしてもと食い下がられて刀解をやめたらしい。
あんなことを言ったのにまんばは長義に纏わり付いてきた。姿など見たくもない、邪険に扱っていればそのうち離れていくだろう。そう思ったのに、彼はなかなかめげない個体だった。
布を被っているくせに、態度だけはでかく、大胆で、強引で、まるで極のような性格だった。
ある日審神者が言った。
「もうすぐ四十九日だね」
恋刀が亡くなってからそんなにも時間が経ったらしい。
「長義もそろそろあの子の事は忘れて、気持ち切り替えないと駄目ですよ」
――
忘れる
ずん、と心が重くなった。
もう恋刀のことは忘れなければいけない、忘れて前に進まなければ、そう思い墓の前に座り込む。
恋刀との楽しかった思い出が蘇ってくる。
すべて過去のことで、忘れて、元気にならなければ。
そう思うが心はずしりと沈んだまま。
すると声を掛けられた。
今は最後の逢瀬中だ、邪魔されたくない。
ふたりきりにしてほしい、と伝えたが、彼は図々しくも居座った。長義に背を預けるようにして座る。
最後の恋刀とのお別れを誰にも邪魔されたくないのに。
「俺と、別れようとしてるだろ」
核心を突いた言葉に、何も言えなくなる。
『俺』というのは『俺の同位体』という意味だろう。
長義の恋刀のことを誰かに聞いたらしい。
「なんでそんな無駄なことするんだ」
無駄じゃない、けじめをつけなければ長義は前に進めない。だから無駄な努力なんかじゃない。
「忘れる必要なんてない」
――
そろそろあの子の事は忘れて
本当は忘れたくない、まだ恋刀のことは好きで、好きなままでいさせてほしい。
「別れるなんて、言わないでくれ
…
」
絞り出すようなまんばの声が、まるで恋刀からの懇願のようで、自然と涙があふれ出て来た。
好きなままでいていい、忘れなくていいと許されたようだった。
その日は辺りが暗くなるまで、その場に座り込んで泣いていた。
精神的に余裕が出て来た長義は周りのことに目を向けるようになった。それは主にまんば(二振り目)のこと。
まんばはいつも長義のそばに来て、素っ気なくされてもめげずに立ち向かって来て健気。なんとか長義を楽しませようとあの手この手を使ってくる。そんなまんばの健気さに徐々に絆されてくる。
長義は自分がまんばに惹かれ始めていることに気づいていた。だけどまんばは本当に恋刀に似ていて、彼を投影しているだけかもしれないと思った。
彼と似ている所を見つけるたびに苦々しい想いになった。
『やはり自分を忘れて、長義だけ幸せになるんだな』
恋刀に責められている気がした。
彼を好きになるのは、不義理になる。
夜考え込むと寝れず、ようやく寝れても夢見が悪く飛び起きる。だんだん塞ぎ込んでいった。
心配そうなまんばの顔がとてもウザかった。
遂に長義はまんばに八つ当たりをしてしまった。
「お前のせいだろ!!お前が視界に入るだけでつらい
…
!アイツのことを思い出す
……
!」
こんな惨めな姿をさらしたくなんてない、こんな言い方をしたらまんばが落ち込むとわかっているのに、つい口から出た。
まんばが傷ついた顔をして飛び出していった。
長義はすぐに後悔した。
まんばは何も悪くないのに、なんであんな言い方をしてしまったのか。
追いかけようか迷い、今行けばまた変な事を口走ってしまいそうだと諦めた。少し頭を冷やすために散歩する。夜の冷たい空気を感じながら、はや数時間
…
。自室に戻りたくなくて、ぐだぐだしている。
するとまんばの姿を見かける。
鍛刀部屋の扉を開けた。何をする気なのかと思った時、まんばは倒れてしまう。長義は慌てて駆け寄り、抱き上げて手入れ部屋へと連れて行った。
その数日後、再びまんばが長義の部屋を訪れた。長義はこの前のことを謝りたくて切り出す。
「あの、この前はすまない、お前に八つ当」
「そんなことはどうでもいい!」
「そんなこと
…
!?」
「あんたがどう思ってようが構わない!俺はあんたが好きだ!」
告白された。
「俺がそばにいたい!」
――
ずっとそばにいるから。
そんな守れない約束は聞きたくない。
「いや、俺はまだ
……
」
断ろうと思ったがぐいぐい押され、結局気付いた時には頷いていた。
付き合うようになってからは、酷くなった。
ふとした瞬間に仕草だったり表情だったりが恋刀と重なる。閨での反応すらそれがだぶって、困惑してしまった。
でもまんばのことを一層恋しく思っているのは本当だった。まんばを抱きしめている時だけがほっと安心する。
まんば視点
一振り目は自分なのに長義は自分を見てくれない。一振りは自分自身だからどうしても勝てない。恐らく長義の中では美化されている。
ちょっとした日常でも比べられている感じがする。まんばはそれがとてもつらい。緊張する。
以前のようになりたかったのに、これは全然違う。今は無理でもいつかはきっと、と信じていたが、もしかしてこの比較がずっと続いていくのかもしれない。
そう思うとぞっとした。
まんばは耐え切れず、ついに長義に別れを切り出す。
「なぜ?」
「
……
俺は、俺だから
…
」
そうとしか言えない。
本霊との約束だから例え長義と言えど話すわけにはいかない。
「俺は、俺なのに
…
!」
なんで上手くいかないのか。
「もうそばにいられない」
がばりと抱きしめられる。いきなりのことで目を白黒。
「好きだ」
「は」
「好きだ、お前が好きだから、だからそばにいてほしい」
「だが」
「ずっとそばにいると約束してくれ
…
!」
「でも、前も俺が破ったのに、そんな約束
……
!」
ハッとする。まんばは口を押さえた。
「前
……
?」
不審そうな長義の顔。
「なんで、俺と国広しか知らないことをお前が知ってる?」
まんばが戻ってきた理由はその約束を果たすため。そばにいると言ったのにひとりにしてしまった。だから本霊に頼み込んで再び長義の元へ来たのに、こんな状況になってしまった。
以前の関係には戻れない、そう諦めた所だった。ひっそりと彼を見守って過ごそうと。
「お前、もしかして、国広か
…
?」
長義は二振り目のことを「国広」とは呼ばない。これは一振り目のことを指す。
(
……
バレた
……
!)
記憶が消される、まんばの前の記憶も今のも。
ぎゅっと身構えた。
しかしそれはいつまでもやってこなかった。
(なんで
……
?バレたのに
……
??)
「否定しないってことはお前なんだろ
…
!」
「そ
……
」
そうだと肯定しようとして、全身に痛みが走る。刀解されようと思った時に感じた痛みに似ていた。
(警告
……
!?じゃあやはり許されたわけではない
……
?)
まんばは本霊との会話を思い出す。
『お前はお前であることを誰にも話してはいけない。』そう言われたはずだ。まさか
――
。
「そうだと言ってくれ
…
!国広なんだろ
…
!?」
縋るように長義が言う。まんばは長義の口元に指を当てた。そして困ったように笑い、自分の口元で人差し指を立てる。
案の定身体はなんともない。
そしてちょぎくには幸せになった。
おしまい。
長いお話でしたがお付き合いありがとうございました!お疲れ様でした!
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・自分から言わなきゃOKという本霊からの抜け道
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