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木蔦(キヅタ)
2021-09-01 20:31:06
3440文字
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【サンプル】本歌様の落とし方【ちょぎくに】(多めに公開)
後ろ暗いことをしている本丸の初期刀まんばくんが、調査に来た監査官さんに色仕掛けをして誤魔化そうとするお話です。
始終まんばがドジでアホの子です。
※審神者が喋ります
※審神者が喋ります
この本丸には後ろ暗いことがあった。
悪いこととわかっていながらも、一度手を染めて仕舞えば病みつきになり、何度も何度も繰り返した。最初は審神者もビクビクしていたが、バレないとわかると徐々にエスカレートしていった。最早彼を初期刀ですら諌めない。
罪を犯してしまったのは、他の本丸よりも貧乏だった所為である。色々なことが制限されているため、どうしても報酬が少なく、余裕がない。
だから悪いことと分かっていつつも、それは日常化していった。
監査官がその本丸を訪れるまでは。
「う、うちに監査が入るってぇ!?」
この本丸に不正疑惑があるため、政府の者が直々に赴いて監査をすると言うことだった。
連絡なしの訪れに焦ったのは審神者だ。今まで監査など噂すら聞いたことがなかったのに唐突すぎる。目の前の男はスパンと言った。
「拒否すれば政府への反乱の意思ありとして、強制連行させてもらう」
「いや、きょ、拒否だなんて
……
。疑いが晴れるのであれば、隅々までどうぞ
……
!」
「ご協力感謝する。なお調査のためにこちらに数日間滞在させてもらう。突然で恐縮だがひと部屋用意してもらえるか」
「は、はい! もちろん!」
チラリと監査官が初期刀を見やる。その視線に違和感があり、審神者は疑問に思った。初期刀は身動きもせず審神者の側に控えているだけで、監査官に抵抗する素振りもない。なぜ初期刀を気にしたのだろうか。
初期刀は今日も相変わらず美しく、写しだなんだと卑屈を言うが見目は一級品だ。もしかして彼に見惚れたのだろうかと思った。
そしてふとある可能性が頭を過ぎった。
前田に部屋を用意するよう申し付け、近くにいた燭台切に監査官の案内を頼む。足音が遠かった後、審神者はひとけを確認してから初期刀にそっと身を寄せた。
「やばくない
……
?」
「まずいな」
「今までのことがバレちゃう
……
! そしたら俺豚箱行きだよ! 拷問に掛けられちゃう!」
「豚箱!? 拷問!?」
「多額の罰金で釈放されるかもしれないけど、うちにそんな金ないし」
「主、どうする?」
「俺にひとつ提案があるんだけど」
「なんだ!?」
審神者は初期刀の耳に口元を寄せ、内緒話を打ち明けるように話す。
「あの監査官に色仕掛けしてこい」
「は?」
冗談かと国広は審神者の顔を見返したが、審神者は本気だ。
「あいつ絶対お前に気がある」
「そんなわけない、俺は写しだぞ? この本丸の数ある名刀の中から、なんで俺なんだ」
「理由はわからないけどお前を見る目が違った。間違いない、俺の勘は当たる方だ」
「あんたこの前の宝くじも同じこと言ってたよな」
「アレはアレ、コレはコレだ」
土下座する勢いで初期刀に懇願する。
「頼む! お前がそういうの苦手だってわかってる! でもアレがバレたらヤバいんだ! 俺が隠蔽を図るから、お前は時間を稼いでくれ
……
! 色仕掛けして動きを封じろ! バレたら泣き落としでも何でもして、何とかこの危機を回避しろ!」
「しかし
……
」
「頼む
……
!」
初期刀
―
国広は気圧されたようにたじろいだ後、渋々頷いた。
◆◇◆◇◆
「失礼する」
国広は急須と湯呑み、茶請けを持ち、監査官の部屋に入った。彼は和テーブルの所でふかふかの座布団に正座していた。礼儀正しいことだ、品のある紳士という印象を受けた。
監査官に割り当てられた客室は二間続きとなっている。刀達の部屋より随分広く、日当たりも良い。
「主からあんたの世話を任せられた。何か不自由があれば遠慮なく言って欲しい」
「へえ? 初期刀殿自ら、ね」
国広はテーブルに持ってたおぼんを置いた。
監査官から品定めでもするようにじろじろと不躾な視線を送られる。国広はその視線に居心地悪さを感じながらも、湯呑みにお茶を注いだ。とりあえず茶菓子で機嫌を取って、時間を稼げとのことらしい。
「えと、これは茶葉は鶯丸が選んだ逸品もので、たぶん美味いは
……
」
ず、と続くはずだった言葉は口の中に消えていった。監査官の前に茶を置く際に国広は躓いた。何もないところで。
そして監査官に熱々のお茶をぶっかけた。
「あー!! す、すまない! 大丈夫か!? 火傷は!?」
湯呑みは床に転がり、監査官の布はぐっしょり濡れている。国広は真っ青になった。
「いや、問題ない」
「や、火傷はなくても、中まで染みてるんじゃないか? 着替えた方がいい! 浴衣を渡すから、タオルで拭いて
……
いやいっそ風呂の方がいいな!」
「いや、別に
……
」
慌てて彼を風呂へ連れて行く。ぐいぐいと腕を引き、風呂場へ押し入れた。踵を返し、すぐさま浴衣とタオルを取りに行こうとする。
「ぎゃん!」
慌てすぎて自分の布を引っ掛け転倒した。その時に思いっきり顎を打ってしまった。
「大丈夫か?」
監査官が廊下に顔を出し、国広の様子を伺っている。中まで聞こえるくらい大きな音だったようだ。
「いひゃい
……
。舌噛んだ
……
」
「慌て過ぎだ、もう少し冷静に
……
。そら、見せてみろ」
素直にべ、と舌を出す。舌の様子をじろじろと見られて、羞恥が湧いた。
「少し血は出てるが、大丈夫そうだな」
「うう
……
」
打った顎を撫でる。恥ずかしくて堪らない。まるで落ち着きのない子どものようなところを見せてしまった。
国広は痛みと羞恥心に耐えつつ、浴衣とタオルを取りに行った。
「あれ、どうしたの国広?」
着替えを運ぶ途中で審神者に声を掛けられた。監査官と一緒にいるはずの国広を不審に思ったんだろう。「監査官にお茶を掛けてしまった」と思わず出かかった言葉を飲み込んだ。国広が醜態を晒したなどと報告するのは避けたい。
「いやちょっと、いろいろあって、監査官は今風呂に入ってる」
「風呂!? すごい国広! 順調じゃん!」
「順調
……
?」
「それなら背中流してきなよ!」
「は!?」
「前戯ってやつだよ! 国広に身体洗われたら喜ぶよきっと! 人払いはしとくからさ、やってきて!」
「ええええ
……
しかし裸になるのは
……
」
「布付けてていいからさ! ほらチラリズムも男の浪漫だし!」
「俺も男なんだが??」
(中略)
(良かった
……
)
結果から言えば、審神者の隠蔽が間に合ったらしく不正の証拠は出なかった。
対象となったのは資材の保管庫で、不正入手したものがないかの調査を受けた。くまなく隅々まで探していたが、問題なかったようだ。
しかし調査はこれだけではない。過去の記録なども対象になっていると聞いた。そこには確実に見られてはまずいものが載っている。なんとかしなければならない。
ただしそれは大量のため明日以降にすると言われ、猶予が少しだけ延びた。
それにしてもこれはまずい。色仕掛け役として力不足だ。
(なんとか、足止めをしなければ
……
)
悩みに悩んだ挙句、宗三の部屋を訪れた。
「男の落とし方?」
一部始終を話し、彼に色仕掛けの方法を指南してもらうよう頼んだ。彼は驚いたように国広を見ている。
「
……
なんで僕なんです?」
「詳しそうだから」
「完全に先入観で物を言ってません? 僕は魔王の刀であって魔性の刀ではないんですけどね」
「でも傾国の刀だろう」
「まあそう言う人もいますが
……
。しかし、貴方がねぇ
……
」
じろじろと頭から足の先まで見られる。居心地が悪いが、こちらが頼んでいる身であるためじっと耐えた。
「まあいいでしょう、楽しそうですし」
「聞き捨てならない台詞を聞いた気がするが」
「教えてもらう立場で文句が言えるんですか?」
「イエ、アリマセン」
「僕が責任持って監査官を落とさせてあげますよ」
「! なんで急に協力的に
……
!?」
「いやあのすかした男の表情崩してやりたくて。ぎゃふんと言わせますよ」
-----------
という感じで宗三さん指導の元、監査官にアレコレ仕掛ける話となっております。
続きは12/12(Dozen Rose Fes.2021 ちょぎくにオンリー)発行予定の本で。
約50p程度 / 500~600円(イベント価格) / 文庫サイズ
通販はフロマージュ様委託予定
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