木蔦(キヅタ)
2021-05-10 07:33:27
4943文字
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部屋にナニカが憑いてる話【ちょぎくに】※バッドエンド?メリバ?※ホラーまがい


ちょぎくに(ちょぎ→→→→→くに)
※ホラー風味(になるといいな)
※バッドエンド?メリバ?

一番怖いのは、ニンゲンの欲だよ。








その本丸はいわくつきだった。
審神者が失恋して自殺したとか、夜な夜な化けて出るだとか、そんな噂があった。まんばはあまり詳しくないが、短刀たちが話してた。

確かにここは中古物件で、随分安いからと審神者が買い取ったと聞いている。

最初に感じた違和感は音だった。
キーン、というか、ピー、というか、耳鳴りのような音がする気がした。

人間は疲れているとたまにそういう症状があるいう。今は人型なのだからそんなこともあるだろうと気にしなかった。

次に感じたのは視線だった。じっとりねっとり纏わりつくような、そんな心地がした。周りを見渡したが誰もいない。いるはずがない。だってまんばはひとりで自室にいたんだから。

気のせいだとその時も思った。

さすがにおかしいと思ったのは紙だった。
まんばが部屋に戻った時、文机の上に何かあり、不思議に思った。基本的に机は片付けてから出陣する。なんだろうと見てみるとそれは紙で、ぎっしりと文字が書かれていた。古風にも筆で大小様々な文字が書かれており、必死に訴えかけるそれにぞっとした。

一体これを誰が置いたのか、疑問に思った。

誰かに相談すべきかもしれない、と思い始めたのは物だった。

まんばが置いたものが微妙に位置が変わってる。思い違いかとも思ったが、確かめたくなり、場所をしっかり覚えて部屋を出た。
帰ってくるとやはり位置が変わっていた。

ポルターガイストというのを聞いたことがある。誰も触れてないのに物が移動したりする現象だ。

まんばは怖くなった。確実にナニカがいる。
まんばは霊刀ではない。そういうものは見えないし切れない。いくら付喪神と言えど自分の力が及ばない物は恐怖でしかない。

まんばは短刀たちの噂を思い出す。

『昔、審神者が失恋して、そのショックからじさつを……
『その未練で夜な夜な本丸を歩き……

ぞっとする。もしかしてまんばの部屋にいるのは審神者の霊だろうか。もしかしてまんばが使っている部屋は、その審神者の部屋だったんだろうか。

怖くなる。


だから助けを求めることにした。



最初に声をかけたのは石切丸だった。
彼ならきっと何かわかるだろうと思った。石切丸は部屋を一周した後、首を捻り「何かおかしい感覚はあるんだけどね」とだけ言って黙り込んでしまった。

次に頼ったのは太郎太刀だった。「気配はよくわかりませんが、私達の神気で清められるのなら」と次郎太刀とふたりで来てくれた。
あまり変わった様子はなかった。

次に数珠丸にお願いした。「成仏するように経をあげましょう」と言った。太郎太刀同様、変化はなかった。




そんな時に長義に声を掛けられる。

「なんでこういう時に俺を呼ばない。俺は山姥を斬ったという歴とした霊刀だぞ」

不服といった表情でまんばにそう言う。石切丸や太郎太刀でダメだったのに、長義で退治できるんだろうか。
不安ながらも、長義に部屋を見てもらう。

「今はいないみたいだね
「そ、そうか……
「大丈夫、出てきたら俺がぶった斬ってあげるよ」

曖昧な反応だった他の刀とは違い、はっきりした物言いの長義はなんだか頼もしく見えた。長義なら解決してくれるかもしれない、と根拠のない期待がかすかに湧いた。

だからまんばは油断してた。


夜、まんばは寝ていると、急に苦しくなった。息ができなくて、溺れる、と思う。もがき苦しんで、薄ら目を開けると、まんばの目の前に黒く蠢く物がいた。

まんばは咄嗟に霊だと思った。
思ったが、何もできず、そのまま意識を失った。

起きると、いつもの朝だった。

まんばは長義に昨日起こったことを全て話した。
「今までは?」
「ない、初めてだ」
「そう」
長義は少し考えた後、こう提案した。
「夜、俺もここに泊まろう。出てきたら斬る、それでいいかな」
まんばはその提案に何度も頷いた。昨日のような体験は真っ平だった。

夜、長義とふたり、布団を並べて寝る。まんばは不安で何度も長義がいることを確かめた。怖くて寝れなかったが、そのうち疲れて寝てしまった。

そして気づいたら朝だった。

「昨日は何も来なかったよ」

長義はそう言った。まんばはホッとしたような、何で来ないんだと憤るような複雑な気持ち。


それから3日ほど長義に泊まってもらったが、霊は現れなかった。

「すまない、寝ぼけていたのかもしれない」

さすがに気が引けて、長義には戻ってもらう。しかし一人寝になった途端、またそれは現れた。

寝ていると、苦しさが込み上げてきて、身体が金縛りにあってるように、ずしりと重い、身動きが取れない。空気が吸えなくて、必死で酸素を求める。薄ら開けた先にいたのはやはり蠢く影。

まんばは恐怖で縮こまるが、意識は朦朧としていて、保てない。やはり気を失ってしまう。

起きると朝だった。

再び長義に話す。

「もしかしたら霊刀である俺を恐れてるのかもしれないな」
「本歌がいれば現れないってことか?」
「確証はないが

まんばは長義に縋る。これが解決するまで部屋で寝起きしてほしいと。
長義はしかたないね、と了承してくれた。




その時期辺りから物がよく無くなるようになった。まんばのお気に入りのペンやタオルがいつの間にか消える。前と同じようにわざと放置しておくと、それが帰ってきた頃になくなってるので、まんばは気の所為ではないと確信した。

その事を長義に話すと、険しい顔をして、「所縁の物を集めて、お前を引き摺り込もうとしているのかもしれないね」と言った。

まんばは怖くて長義にしがみついた。

夜が怖くてまんばは思い切って長義に声を掛けた。

「本歌、その、一緒に寝てくれないだろうか?」

大の大人(?)が情けないとは思うが、霊を怖がって寝不足になり出陣に影響が出る方が良くない。審神者に申し訳が立たない。だからまんばは恥を忍んでそう頼んだ。

「いいよ」

長義は快く招き入れてくれた。長義に抱きしめられて寝るのはとても安心し、ぐっすり寝れた。

ある日まんばは思いつく。もういっそこの部屋は使用禁止にして、自分は他所に移ろう、と。
それを長義に提案してみる。

「それはやめた方がいい」
「なんでだ?」
「俺の推測だけど、霊は既に部屋ではなくお前に憑いてる。だから引っ越しても無駄だ。仮に違ったとしても別の誰かが犠牲になる。お前はそれを見過ごせるの?」
「それは
まんばの代わりに誰かが被害に遭うのは申し訳ない。

「しかしずっとあんたに負担をかけてる。だから俺は部屋を移ろうと
「気にしなくていいんだよ」
「しかし」
「それとも、俺以外に誰か頼る相手でも?一緒に寝起きしたい相手がいるのか?」

急に長義が威圧的な口調になり、まんばはびくっとする。

「い、いや、いないが……
「なら、いいだろ。霊は俺がちゃんと退治するから
「あ、ああ」



そこから長義の様子がおかしいと感じるようになる。

石切丸が「あれからどうかな、気になっているんだけど」と声を掛けてくれた時のこと。
長義が対応してくれてる、まだ解決はしてないが心強い、と話していると、ずんずんと長義が近づいて来る。
キッと石切丸を睨んだ。

国広の手を引き、部屋に連れて帰る。
「他に頼ろうとしたの?」
「え?俺は別に、」
「他の助けは必要ない!俺だけで十分だろ!!」

怒鳴られた。
まんばは霊刀としての矜持を傷つけてしまったと気づいた。
「すまない、そんなつもりじゃないんだ。石切丸が気にしてくれていたから、状況を話していただけで、別に頼ろうとは」
「お前には俺いれば十分なんだから」

ぎゅうぎゅうと抱きしめられた。
まんばは困惑したが、長義がそれで鎮まるならと思うようにさせた。

次におかしいと気づいたのは音だった。

キーン、とか、ピー、という耳鳴りのような音がずっとしている。自室にいる間ずっとだ。これは霊の仕業だと思っていた。

ある日、押し入れから扇風機を出した。そろそろ暑くなってきたから必要だろう。そしてコンセントに付けようとした時だった。

既に穴には別の物が刺さっていた。
(なんだろう)

小さな箱のような形がコンセントに刺さっており、どの電化製品にも繋がってない。こんなものつけた覚えがない。

耳を澄ませれば、いつもの耳鳴りの音はここからすると気づいた。

(じゃあ、少なくともこの音は霊の所為じゃなかったのか!)

人工的なものだった。ほっとする。

まさかと思い、他も探した。
見知らぬコンセントがありそれを辿ると小型カメラが見つかった。視線の正体はこれだ。

よく考えてみる。
他の現象は物が別の所にあったり、なくなったり、置き手紙があったり。実際に動く瞬間、消える瞬間、現れる瞬間を見たことはない。人間でもできる。

あとは夜の蠢く影。それだってまんばは意識が薄らとしかないため、霊だと見間違えることもある。

これは長義に報告しなければ、と思う。重要な内容だ。

長義は出陣していて今いない。

まんばは紙を見つめる。そこにはぎっしりと墨で「愛してる」「好きだ」「俺の物にしたい」などと書かれている。

そこからは執拗さが窺えて、ただの悪戯にしては気味が悪いと思う。

ふと、最近の長義の異常さが気になった。まんばが他の者と話していると目の色を変える。ギラギラとまるで憎悪を燃え滾らせるようにまんばを見つめる。それが少し怖い。

それはこの件で長義の矜持を傷つける発言をしてないか気にしているのだと思っていた。

しかしもし違ったら?

まんばはその考えに確信が持てなくて、長義の部屋に向かう。すまないと心の中で謝りつつ、そっと中へ入った。

彼の押し入れからはまんばの私物が出てきた。無くしたと思ったペンやタオル、下着が出てきた。

そしてよくわからないモニタや機械もあった。電源をつけると、まんばの部屋が映し出された。

まんばは震える。
まさか、と思う。

スススス、と障子が開く音がした。まんばは振り返る。






「何を、してるのかな?悪い子だね」






お読み頂きありがとうございました!
ホラーの話、改め、stk長義くんの話でした!お疲れ様でした!

・コンセントに付いてた機械は盗聴器です!やっぱ映像も見たくなってカメラも取り付けました!
・長義くんの気持ちをたっくさん込めて手紙を送りました!
・蠢く影は夜這いですね。まんばはちゅーされて酸欠状態で気絶します。
・石切丸が感知したのは良くない気が漂ってる!です。ドロドロした欲望の気配に反応した。
・まんばくんを抱きしめて寝れるならこういうのも悪くないなぁ(´∀`*)と思う本歌様。
・霊はいません。
生きてる者の欲の方が余程怖い。本歌様の欲は底なしのごとく深く、まんばの全てを欲します。手に入れても、もっともっとと。
・長義くんは霊を装うつもりはなかった。だけど自分の都合のいい方へ向かっていたため利用することにした。一緒に寝起きする時は手が出せなかったが、堂々とまんばの隣で寝顔を眺められるのは気分が良かった。まんばが一緒に寝たいと言ってきた時は天にも昇る気持ちだった。


そういう話!°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°