木蔦(キヅタ)
2021-02-02 08:10:43
1002文字
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3分の電話【ちょぎくに】

小説です。

相互さんが1/30審神者就任記念日で『3分間電話の日』だと知り、「何か書けそう!書かせてください!」とお願いして書かせて頂いた。



 長義は電話ボックスをようやく発見して、中に入った。
 この時代、電話ボックスはほとんど見当たらない。携帯電話の普及のせいで数が激減しているのが原因だ。けれど災害用に一定数は残っている。人一人が入れるくらいのスペースに公衆電話が設置されており、受話器を取り、十円を入れ、電話番号を押せばかけられる。区域によって十円で話せる時間は異なるらしい。
 時の政府は本丸と通信するためにこのような通信手段を秘密裏に用意した。公衆電話に細工して時を超え、本丸に連絡できるようにしてあるのだ。遠征中も連絡できるのが便利だが、いかんせん数が少ないのが不便で堪らない。どこでもいつでもというわけにはいかない。携帯端末を使わせてくれれば便利だが、そこまで電波を乗っ取ることはできないようだ。
 長義は十円を入れて、特殊な番号コード、続いて本丸番号を押した。しばらくのコール音の後、『はい』と声が聞こえた。
「主?」
『主は今出掛けている。俺だ。何かあったのか』
「定期連絡だよ、今のところ異常なし」
『そうか、何よりだ』
「偽物くん、今一人?」
『そうだが……
「そっちは仕事頑張ってる?国広」
 わざとふたりきりでしか呼ばない名で問いかける。国広は暫く黙った後、『ちゃんと、している、長義……』と返した。ちゃんと察して向こうもふたりきりの時の呼び方だ。少し声が小さいのは聞いている者がいないか不安なのだろう。照れも入ってる気がする。電話の向こうの姿を想像して、少しニヤついた。
「俺がいなくても夜更かししてない?」
『し、してない』
「ご飯もちゃんと食べてる?」
『食べてるに決まってるだろ!あんたがいないだけでダメになるほどヤワじゃない!』
 まあ彼の性格だと大丈夫だろうなとわかっている。これはただの戯れだ。
『でも……
 続いた言葉に疑問符を浮かべ、耳を傾ける。何かあったのだろうか。長い沈黙の中、受話器からようやく次の言葉が聞こえてきた。

『あんたがいなくて寂し……

それをすべて聞くことはなく電話が切れた。








本来時間切れのブザー音が鳴るんですが、無粋なので消しました(本当は鳴ってからの秒数がわからなかった)
今は区域内で約1分だそうです。