木蔦(キヅタ)
2020-12-12 14:35:24
7308文字
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バスツアー②親友二振りで参加したまんば達の話【ちょぎくに】


前作
バスツアー①おひとり様限定バスツアーに参加するまんばの話
https://privatter.net/p/6746264

※番号はありますが単発の話。単に『怪しげなバスツアーに参加する』という共通設定のみ。





まんばは他本丸のまんばと仲良し。(他んばと以降表記)やはり同位体同士気が合う。

ある日旅行に行かないかと誘われる。夜通し話したいこともあるし、と言われ、まんばは即了承した。

他んばが誘ったのはバスツアーだった。お一人様限定とのことで、格安になっている。
ふたり旅だが、現地で会って意気投合したとでも言えば何とかなるだろう。
「今時のバスツアーはこんなに安いコースまで出てるんだなぁ」
と呑気に思っていた。

集合場所に行き、他んばと落ち合う。まあバレないだろって一緒にいる。

しかしバスは席が決まっており、離れ離れになる。
コミュ障&人見知りだから知らないやつの隣はやだし、折角の旅行なのに他んばと一緒にいられないのはなんだかなーと思っていた。

他んばをチラッと見ると隣の席の長義に話しかけられて、たじたじ困ってる。

これなら格安じゃなくてもふたりでいられるツアーに申し込めばよかったなと思う。
「気になるやつでもいた?」
隣の長義が話しかけてきた。
べ、別に」
「バス乗る前に一緒にいた山姥切国広とは知り合いなの?」
あ、ふたりで参加したとバレるとチクられるのか!?そして規約違反とか言われて追い出されたり、追加料金払わされたりするのか!?と青ざめる。
「い、いや、その
「大丈夫だよ、誰にも言わないから」
まんばは少し迷ったが隠し切れることでもないか、運営にさえバレなければと思う。
「実は友人で、一緒に参加したんだ」
「どっちが誘ったの?」
「え?」
「誘われたの?誘ったの?」
なんでそんなこと聞くんだ?と思いながら答える。
「さ、誘われたんだが
「へぇ?友達、積極的なんだね」
「???」

トイレ休憩。
バスから降りる。他んばがすぐに寄ってくる。

「隣のやつ、かなりぐいぐい来るんだが!」
「そ、そうなのか?」
「ほら山姥切国広はパーソナルスペース広いだろ、だからちょっと距離縮められるだけでドキドキするのに、どんどん話しかけてくるから、俺どうしたら!同位体ならこの気持ちわかるだろ!」
「わかる」
「つらい」
「俺も隣の本歌と少し話したぞ」
「なんで話しかけてくるんだろうな。そうだ、席交換はできないだろうか。あんたと隣同士がいい」
「隣の本歌に相談してみる」

結局長義に断られてしまう。
まあ当たり前だよな、自分都合で他人の席を交換させるなんて烏滸がましいよな、と諦める。

チラッと他んばを見たが、向こうも断られたらしく首を振っていた。
そしてまたぐいぐい来られていた。同情する。

バスは目的地に到着する。このツアーは初日ぶどう狩りへ、そして温泉旅館に向かう。
ぶどう狩りでは四六時中他んばと一緒にいた。しかしおひとり様限定ツアーなのにコミュ力高いやつが多いのか「こっちに熟してるやつあるよ」とか「大変だろう、持ってあげるよ」と話しかけてくるやつが多かった。

親切は有難い限りだが、飽くまでふたりでいたかった。

他んばがこそっと言う。
「夜、あんたの部屋に行くから。そこで思いっきり話そう!夜更かししても、このツアー自由行動が多いし、なんとかなるだろ」

他んばの意見には大賛成だった。他んばとたくさん話したい。山姥切国広はコミュ障なので友達が少ない。彼は唯一腹を割って話せる存在だった。

しかし部屋で待ってても、他んばは来なかった。

部屋の場所がわからないのかと思ってLINEもしておいたが既読にならなかった。

きっと疲れて寝てしまったんだろうと思った。まあツアーは数日あるし、明日話せばいいか、とまんばも眠りについた。




朝食は大広間となっている。席は自由で、まんばは他んばと一緒に食べるつもりだった。

他んばが来る。なぜか長義と話しながら。廊下で会って、また話しかけられたのか?と思う。

他んばは少しよろけたせいで「大丈夫?」などと長義に支えてもらっていた。恥ずかしそうにしている。
まんばはそれを見てなんだか違和感を感じた。

「あ、同位体、おはよう」
「おはよう、昨日来ないから心配したぞ」
「え、あ、昨日は……
カァァァと赤くなる。きっと疲れて寝てしまった失敗を指摘されて赤くなってるのだろう。
「どうせ寝てたんだろ。薄情だな」
「そ、そうなんだ!ついうたた寝を!すまない!」
「なに?昨夜は約束があったの?」

何故か横にいた長義が会話に割り込んできた。なんだかムッとする。

「そうだ!俺たちは夜通し話しそうと思ってたんだ!」

ふたりで話してる時は割って入って来ないように、パジャマパーティーする仲なんだってことを見せつけてやる。

「夜通し?話す?」
「そうだ、俺たちは仲がいいからな!」
「そうか」

にっこーと笑っている。正直読めなくて気味が悪い。

他んばと隣同士で座ったが、他んばのもう片方の隣はあの長義が陣取ってて、他んばに話し掛けてくるので、ほとんど朝食の場では他んばと話すことができなかった。



二日目は陶芸教室。しかも参加は自由なので、併設されてる博物館を見に行っても良いし、陶芸体験してもいい。

楽しそうだから参加しようかと言っていたのに、なぜか他んばはいない。どこに行ったのか。
もしかして調子が悪いとかでトイレに篭ってたりするのか、と心配になる。LINEすると「すまない!ちょっと参加できなくなったから、一人でやっててくれ!」と返事が返ってきた。

なんだかもやもや。他んばと一緒にいるために旅行に来たのに、全然話せない。

「どうしたの?昨日のお友達は?」
……
「喧嘩しちゃった?」
……喧嘩じゃない!」
「何かあった?俺で良ければ聞くよ?」
………

話すつもりはなかった。

しかし山姥切長義は口が上手いもので、気づけば洗いざらい愚痴っていた。鬱憤が溜まっていて、誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。つい。
「そうか親友より彼氏を取っちゃった系か……
「彼氏??あいつに恋刀なんていないぞ」
「昨日できたんじゃないかな」
「昨日?」

そう言われて思い出すのはバスで他んばと隣だった長義だ。朝も一緒だった。

「でも1日程度で付き合うなんて
「わからないよ、お互い運命を感じたら。恋に落ちるなんて一瞬だからね」
………そういうもんなのか?」
まんばは恋をしたことがないからわからない。

「あいつ、今恋刀と一緒にいたくて、俺のこと、放ってるのか……?」

気分が落ち込んでくる。一緒に旅行行こうって言ったのに、裏切られた気分。
長義が泥だらけの手でぎゅっとまんばの手を握る。
あまり親しくない、会って1日程度の刀に手なんて握られたびくつく。

「こうして話したのも何かの縁だし、その友達の代わりになれないかな?ツアーの間だけでも

まんばは思う。
長義は高慢だし、まんばを嫌ってる。それなのに彼はとても優しい。

もし他んばが恋刀とこのツアーで一緒にいることを望むなら、まんばはひとりになってしまう。
ひとりは好きだが、他んばがいるのにひとりなのは訳が違う。寂しい悲しい。

だから長義の気持ちはとても嬉しかった。

「その友達だと思ってくれていいから。気兼ねなく話してよ」

にこっと長義が微笑む。

その日はそれ以来長義が側に来てくれるようになる。いつの間にか合流した他んばは恋刀と一緒にいた。彼らが楽しそうにしてるのを見るの胸が痛むが(Not恋)すぐに長義が気を紛らわせてくれる。
とても気遣いができて、いいやつだなと思う。


次の日の朝、既に他んばは朝食の席についていた。隣には恋刀。楽しく話している。

他んばの隣が空いてるので、そこに座ればいいんだが、なんだかしょげてしまって、そんな気持ちじゃない。たぶん他まんばが空けといてくれたんだと思う。

「こっち」

いきなり手を引かれ、まんばが振り向くとあの長義。まんばを引っ張っていき、自分の隣に座らせる。

「無理にいることないよ。俺に無理矢理連れて行かれたって言えばいい」

まんばは長義の隣でご飯を食べる。チラチラ他んばを見てたけど、向こうもチラチラ気にしているようで、目が合って気まずくて、咄嗟に逸らした。

朝食後、支度をしていたら部屋まで長義が迎えに来てくれた。
まんばは感謝でいっぱい。正直ひとりで集合場所に行って、他んばをチラチラ見る空気が耐えられなかった。
それを言うと、長義はさりげなく、他んばからの視線を遮るようにエスコートしてくれた。

でもなんだか他んばを避けてるみたいで、ちょっとつらい。

その日は1日長義が側にいてくれて楽しかった。

明日は最終日で帰るだけだ。夜、バスから降りると運営から伝達があった。

気になった者がいれば紙に書くように、と。そしてボックスに入れなければならないらしい。

気にしているのは、正直他んばのことだ。このツアーに参加して、なんだかギクシャクしている。悲しい。
まんばは、部屋に荷物を置いて、机に向かう。他んばの名前を書きかけて、やめた。

ふう、と息を吐くと、来客があった。
それは他んばだった。

「同位体すまない、あんたと旅行にきたのに、ずっと、自分のことばっかで……
開口一番他んばは謝る。そして、途中勢いを無くし、口籠る。俯く。

思えば他んばはチラチラ見ている時何か言いたそうな顔をしてた。
あれは謝るチャンスを探してたんだなと思う。ずっとまんばのことを気にしてくれてたのに、まんばは気まずくて避けてた。

恋刀が出来て、構ってもらえなくて拗ねてた気持ちだったけど、少し気持ちが浮上する。

「いや、恋刀が折角一緒なんだから、別に俺のことは放っておけば良い。俺たちはいつでも話ができるんだし、旅行なんてまた行けば良い。しかし恋刀のことは今ガッチリ気持ちを掴んでおかないとだめだろ?最初が肝心だ」

まんばは本当は寂しかったくせに見栄を張ってそんなことを言う。

「ほら、今もひとりにしておいていいのか?寂しがってるんじゃないか?」

そう言って他んばを焚き付ける。

「すまない」

他んばは笑顔で出て行った。
友人の幸せは祈ってやらないとな、と思う。でもやっぱり少し寂しい。

そして続いて来客がある。次は長義だった。

「荷物、まとめた?」
「へ?帰るのは明日だろ?」
随分気が早いなと思う。
「帰るのは明日だけど、ほら今夜は」
「今夜何かあるのか?」
「紙は書いたの?」
「え?いやまだ

長義が机の上をめざとく見つけて、手に取る。

「どういうこと?」
「え?」
「友達なんじゃなかったの?」

紙には他んばの名前を書きかけて、グリグリ消してある。

「あ、いや、その……、俺が今一番気にしてたのは、同位体だったから
「でももう彼には恋刀がいるよね??」
「??そうだな?」
「それなのに好きなの?」
「へ??恋刀がいたとしても友人には変わりないだろ?」
「は?」
「俺が今一番悩んでたのは、同位体とどう接するべきかなんだ。恋刀がいるから、いつもみたいに遊べなくて悲しかった。ずっとあんたがいてくれたから平気だったけど、今後どうやって友人として接していけばいいかわからなかった。そこには、気になってる人を書くんだろう?俺は同位体とどういう友人関係を築くべきなのか悩んでた。だから書いた。」

長義はぽかんとしてる。そんなちっぽけなことで悩んでたのかと呆気に取られているのだろう。

「でもさっき同位体が来て仲直りしたからもう平気だ。長義、いっぱい俺を気遣ってくれてありがとう」

長義は呆気に取られつつも、「あ、ああ、構わないよ」と答えた。よかった、本歌は懐が広い。

「ねぇ、じゃあお願いがあるんだけど」
「なんだ?」
「ここに俺の名前書いても良い?」
「なんでだ?」
「お前の悩みは無くなったんだろ。だからここに書くべき名前がない」
「そうだな?」
「全員提出なのに、書けないと困るだろ」
……そうか」
「だから俺の名前を書けば良い」
「わかった!」

そう言われてまんばはサラサラと長義の名前を書く。

「じゃあボックスに提出しに行こ」

ふたりで出しに行った。








夜、運営が部屋に来て、移動するよう言われる。まんばは急なことで慌てる。

(そうか、最終日に部屋替えがあったのか!だから荷物まとめてないのかって本歌は聞いてきたのか)

まんばは慌てて荷物をまとめて、運営について行く。

案内されたのは使っていた部屋よりも少し広い所だった。
部屋に備え付けの露天風呂もある。
部屋の電気は付いてないが、置き提灯がポツポツとあり、暗くはない。二間続きの部屋で開放感もある。
奥には一組布団が敷いてある。

「最終日だから、良い部屋してくれるっていうサービスか?」

あんなに格安なのになぁ、と思う。
すると背後で、ススススと襖が開く音がした。
振り返ると長義が立ってる。

「え?同室?」

まあそりゃそうか、こんなに良い部屋をひとりで使わせるわけない。あんなに格安な料金しか払ってないんだから。
あれ、でも布団が一組しかないぞ?足りないと思った。

長義はにっこり笑う。

「まずお風呂に入ろ?」
「え、ああ

長義に促され、部屋の露天風呂に入る。




暗 (`・ω-)▄︻┻┳══━一 転







長義は政府主催のバスツアーに強制的に参加させられた。人数が集まらないなら中止にすればいいものを。

無理矢理参加させられた政府の刀が何振りかいる。でも出勤扱いになるし、費用も政府持ちだからいいか、と考えた。
適当にやって帰れば良い。旅館の美味しいもの食べれるし、と思う。
しかし待ち合わせの場所に行くと、長義は衝撃を受けた。己の写しである山姥切国広がツアーに参加していた。

山姥切国広と言えば、コミュ障だし、審神者にモンペも多いのでなかなかこう言うコミュニケーションが必要な場には出てこない。レアだ。

そして長義は彼を見た瞬間、心臓を撃ち抜かれた心地がした。

ぶっちゃけ恋に落ちた。

彼は他の同位体と楽しそうに話している。友人同士連れ立ってツアーに参加したのだろうか?もしかしたら友人の付き添いで参加しただけかもしれない。

そして幸運なことに長義はバスでそのまんばと隣同士だった。
そして探りを入れた所、やはり彼はただの付き添いのようだった。

(でもまあ、俺がその気にさせればいいか)

それには、向こうの山姥切国広が邪魔だな、と思う。

政府主催なので参加している同位体が多い。やはり長義たるもの、写しは意識するらしく、まんばを狙っているやつが多い。ぶどう狩りでは、たくさんの長義がアプローチしてきて、牽制するのが大変だった。

それにまんばは四六時中友人と一緒にいる。なかなかひとりにならない。

風呂上がり、ふと見るとまんばの友人の隣に座っていた長義がいた。彼は友人狙いだろうと睨んでいる。

長義は同位体に聞こえるような声で、すぐそばにいた南泉に話しかける。ちなみにこの南泉は知り合いでも何でもない。
「そういえば、俺の写しが二振りも参加してるって珍しいよね」
「へ??そ、そうだにゃ??」
「あのふたり、自由時間一緒にいたし、一日目で既にデキてるのかな」
「はぁ?しらねーし
「山姥切国広って内気だから、結構気の合う同位体に惹かれることが多いらしいし、なんか夜部屋に行く約束してたみたいだったな~」
……それがなんなんだ、にゃ?」

同位体がピクリと反応し、そそくさと去って行く。それを見届けた。
「おい、お前何か碌でもない事考えてるだろ」
「いーや?」
長義の目論み通り、彼は友人まんばに夜這いを掛けたらしい。随分頑張ったのか、彼はよろよろしていた。

その所為でツアーに参加できなかったようで、まんばがひとりで陶芸体験をしているのを発見する。そして事情を何も知らないまんばに何食わぬ顔で話しかけ、事情を聞く。

それからはもう友人と疎遠になるように働きかけるだけだった。

そして最終日の前夜にこぎつけたのだった。



何も知らない純粋なまんばを手に掛けるのは少々忍びなかったが、こんなに警戒心がない子を放っておけば、誰かに盗られる可能性がある。
だから、既成事実というものを作ったのだ。

はい、暗転暗転。










最終日、まんばは困惑していた。
昨夜一体何が起こったのかわからない。今朝は全然起き上がれなくて、長義にご飯を食べさせてもらった。
朝食も毎回大広間だったのに、なぜか今日は部屋まで運ばれてきた。

まんばは長義に支えられながらバスに乗り込む。
「お前の主にも挨拶に行かないとね」
何の?


そして見事、まんばと長義は交際することになったのだった。

ちょぎくにハッピーエンド!お読みいただきありがとうございました!お疲れ様でした~!



■どうでもいい設定
・まんばの本丸に長義は顕現してません。それ故、警戒心や敵対心が薄いです。
・このシリーズ一貫して言えることですが、政府ちょぎの場合、無意識に写しを求めています。そのため恋に落ちやすく、何としても射止めようとします。好意は隠しません。
・他んばもツアー内容は知りませんでした。そのため最終日のお膳立てで驚きます。そしてツアーの意図をその時初めて恋仲の長義から聞きます。




バスツアー③レア刀剣と出会いたくて参加するまんばの話
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