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木蔦(キヅタ)
2020-11-23 21:23:59
5074文字
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長義にシュトーレンを与えられるまんばの話【ちょぎくに】
ちょぎくに
シュトーレン
「偽物くん」
長義にちょいちょいと手招きされる。まんばは一体何の用だ??と訝しげに長義の部屋に来る。
そこにあったのは白い20cm~30cm程度の塊。
「なんだこれ?」
「シュトーレンだよ」
「すと
…
?」
「お菓子だよ、お前に食べさせてやろうと思ってね」
長義は大胆に真ん中をぶった切る。
「え、半分こか??」
「そんなわけないだろ」
真ん中を切った後、そこから1cm程度スライスする。
「シュトーレンは真ん中から端に向かって切るんだ。さあお食べ」
まんばは口に突っ込まれる。甘くておいしい。
もぐもぐごくん。
まんばは目を輝かせる。もっと食べたい。キラキラと長義を見る。
長義は二つに割ったシュトーレンの切り口をくっ付け、サランラップで巻いた。
「え、もう食べないのか??」
「また明日」
「明日??ケーキだろ?早く食べないと腐る」
「早く食べたい?」
「食べたい」
「じゃあ明日が早く来いってお祈りしな」
「はぁ??そんなことで早く来るわけないだろ!それに腐る物は腐る!」
「はいはい、明日またこの時間においで」
腐る腐ると主張しても長義は聞く耳持たない。
次の日来ると紅茶が用意されている。長義は昨日と同様、切れた真ん中から少しだけ切り、まんばに差し出す。
まんばは長義の手から齧り付く。
「こら、行儀が悪い」
「昨日は無理矢理俺に突っ込んだじゃないか」
「ほら、紅茶もお飲み」
ごくごく。紅茶も香りが良くてとても美味しい。
シュトーレンが甘いから、紅茶と合う。
「シュトーレンはどうかな」
「??美味しいぞ?」
「うーん、そうか~」
なんだか期待する答えじゃなかったらしい。だけどなんと答えれば正解なのかまんばはわからない。
シュトーレンはまた同じように仕舞われる。
「今日で全部食べるんじゃないのか?」
「明日ね」
「腐るぞ!」
「はいはい」
やっぱり流される。
次の日もまんばは長義の部屋に訪れる。
「来たね?」
「早く食べたくて」
まだ湯を沸かすところだったらしい。紅茶の葉を用意している。まんばはそわそわと座った。
シュトーレンが出てきて、また同じように切り分ける。
シュトーレンは焼き菓子。
周りには粉砂糖がたっぷり固められている。
中にはドライフルーツやナッツが入っている。香りも良く、生地もしっとりしている。
今日も長義の手からぱくりと食べた。美味しい。
「また残すのか??」
「続きは明日ね」
「いつもそうじゃないか!いつになったら全部食べるんだ!」
「早く明日になれって願ってれば、早く食べれるんじゃないかな」
「むぅ
…
」
まんばはしぶしぶ出て行く。
次の日、また同じ時間に長義の部屋に訪れる。
「はいあーん」
長義の手にはシュトーレンがある。素直にまんばは口を開ける。
だけど、一向に甘いものが来ない。長義を見るとじっとまんばのことを見つめている。
素直に口を開けた自分が馬鹿だった。からかわれた。
かちんと来たまんばは身を乗り出す。
「本歌ひどいぞ!アホ面だって思ったんだろ!お菓子食べたい!」
長義の身体に乗りかかり、シュトーレンに噛み付いた。
お望みの物をゲットし、満足。ニコニコとシュトーレンを咀嚼し、紅茶を飲む。美味しい。
「味はどう?」
「美味しい」
「うーん。」
「???」
長義が何を答えて欲しいのかわからない。
「美味しいからもう一つほしい」
「だーめ。これは明日の」
「早く食べたい!」
「明日ね。早く来いってお願いすれば早く食べれるよ」
「長義はそればっかり!嘘だ!」
「なんで嘘だって思うの?」
「なかなか時間が進まない!ずっと願ってるのに、すごく長い!前は一日なんて早かったのに、今はすごく長く感じる!」
「そう、長く感じるの
…
」
「だから早く食べたい!」
「ダメだよ、これは明日の分」
「そう言って明日の分だけじゃなく明後日の分と明々後日の分とさらにその次とその次とその次の分なんだろ!」
「なんだ、わかってるじゃないか」
「なんでそんな意地悪するんだ!もういい加減腐るだろ!」
「じゃあ腐ってないか、明日はよーく味を確かめて食べてね」
腐ると勿体ない、捨てないといけないだろ、と思いながら渋々帰る。
次の日まんばは同じ時間に来る。早めに来たにも関わらず、お茶は既に用意されている。
「じゃあ切るね」
切ったシュトーレンをまんばの口へ。
また昨日みたいにからかわれたらいけないと、じっと見つめる。案の定すすすっとまんばから遠ざかる。
「その手には乗らない
…
!」
まんばは長義の身体に乗り上げ、腕を掴み、引き下げた。
ぱくっと食べる。美味しい。
「ほら、腐ってないか味わって」
そう言われて思い出す。
そうだ、腐ってないか調べなければ。
もぐもぐ味わって咀嚼する。しっとり生地とフルーツが相まってとても美味しい。腐ってるわけがない。
「今日も美味しい!」
「そう、それはよかったね」
(中略)
長義がシュトーレンを切る。まんばは気づいた。前より薄い気がする!
「本歌!もう少し厚く!前はもう少しあった!」
「お前は!なんでそういうことには気づくかな!」
「わざとなのか!?本歌ひどい!」
「分厚く切ると明日の分がなくなるよ!」
「それは嫌だ!」
でもまんばは気づく。
早く食べたいから明日の分がなくなってしまっても構わないのでは??
「ほら、今日のを味わって食べな」
「んぐっ」
口に突っ込まれる。
最初に食べた時はもう少し分厚くて、フルーツも
……
と思いながらもぐもぐしていると、ふと気づく。
こんな味だっただろうか?
味が違う気がする。でも腐ってるわけではない。フルーツが馴染んだような、深みが増したような
…
。
それを素直に長義に伝えると、長義は嬉しそうにうんうんと頷いた。
「それでこそ俺の写しだ」
「???」
これを言わせたかったんだろうか??とりあえず長義が満足そうだからいいかと思う。
どんどんシュトーレンは無くなっていく。もう数日もない。端っこと端っこが残ってるだけ。もうこれは2日分では?と思うが長義はそれすら薄く切る。
「はい、今日の分」
端っこだから背も低いし、薄いし、物足りない。まんばは一口で食べる。
美味しいけどまだ欲しい。
「本歌、もっとほしい
…
」
「だめだよ」
「本歌ぁ
…
、足りない
……
」
「
………
」
「本歌??」
「だーめ」
「けち」
まんばは長義の部屋を出る。その足で街に出る。ケーキ屋さんに通りかかるとクリスマスケーキの予約をやっている。
あと数日でクリスマスかと気づく。今年も燭台切がケーキをたっくさん作ってくれるに違いない。
そう思い、店に入って並んだケーキを眺めていた。美味しそうなケーキがあれば今日のうちに燭台切におねだりすれば作ってくれるかもしれないという打算だった。
ふと、振り返ると、棚には焼き菓子が並んでいた。
まんばはそこにシュトーレンが並んでいるのを発見してしまう。
「こ、これは
…
!」
本歌の物と負けず劣らずの大きさの白い塊かそこにどーんと置いてあった。サランラップらしきものでぐるぐる巻にされ、さらにラッピングして、「Happy Christmas」と書かれたシールが貼ってある。
食べたい
……
!
まんばはその一心だった。
いつも一切れだけで、物足りない。もっと食べたい。最近はかなり少なくなってる。齧り付いたらどんなに幸せか。
値段はそんなに高くない。まんばでも買える。
「これ、ください
…
!」
まんばはシュトーレンを買ってしまった。
お腹いっぱい食べたい。
まんばはそう思って自室に戻るなり、シュトーレンを剥き出しにし、そのまま齧り付く。
甘い。
けどおかしい。
美味しくない。
まんばは不思議に思って、もう一度齧り付く。美味しくない。
生地は固いし、フルーツのゴロゴロが邪魔だし、砂糖がたっぷり付いてて、ただ単に甘いだけ。砂糖の甘味
…
。
美味しくない。
試しに切り分けてみる。
切ると違うかもしれない。齧り付いたせいであんなことになったのでは、と思う。
ぱくりと口に入れるが、やたら甘くて美味しくない。
紅茶だ、紅茶が足りない!
そう思い、慌ててお茶を用意する。紅茶を飲んだが、変わらない。
長義のシュトーレンは違った。砂糖の甘さと、生地のしっとりさと、フルーツの甘みが絶妙にマッチしていた。一口で食べるともっともっとたくさん食べたくなるような味だった。
まんばはショボンとする。
とてもじゃないが、甘すぎて自分ひとりじゃ消費できない。
まんばはシュトーレン(齧り付いた部分はちゃんと切り離した)を持って長義の所へ行く。
「本歌、すまない。我慢できなくて、余所でつい」
事情を話すと長義は、はぁぁぁ、と深いため息を吐く。
「まさかそんなことをするなんて
……
」
呆れさせてしまった。さらにしょんぼりする。
「すまない、俺が焦らしすぎたね
…
」
「へ?」
「シュトーレンはクリスマスまで、毎日少しずつ食べる物なんだ。だんだんドライフルーツが熟成されて、味が変わっていくのを楽しむ物なんだよ」
ああ、だから味が前と違うなと感じたのか、と思う。
「シュトーレンが残ってれば、お前がクリスマスまで通ってくれるって思ったんだけど、我慢させて返って良くなかったね」
長義はまんばが持ってきたシュトーレンも一緒に仕舞う。
「新しいシュトーレンもあるし、明日は今までのやつを全部食べよう」
「え?いいのか??」
「いいよ、それにお前が買ってきてくれたお陰で、面白いこともできるし」
「???」
「さあさ、早く明日になるように願ってな」
まんばは部屋を出される。
「???」
てっきり怒られるかと思ったが、謝られて、しかも明日美味しい方のシュトーレンを最後まで食べられるらしい。
次の日まんばはわくわくしながら長義の部屋へ行く。
「はい、これで最後だよ」
残りのシュトーレン全部と、あともう一切れまんばの皿に乗っている。
「これは?」
「お前が買ってきたシュトーレン」
「で、でもこれはあんまり美味しくないんだ
…
!」
「そんなことないよ、俺もそこで買ってきた」
「は?」
同じ所のシュトーレンなのに、なんであんなに違うんだ?と思う。
「昨日言っただろ、何日も熟成されたシュトーレンと、まだ日の浅いシュトーレン。食べ比べてみなよ」
もしや日の浅いシュトーレンは美味しくないのか?と思う。
まんばはおそるおそる一口齧る。
「美味しい!」
昨日食べた物と変わらないのになんで??と思う。
「こっちも食べてごらん」
「美味しい。こうして食べると味の違いがわかるな」
「だろう?」
でもなんで昨日と違ってこんなに美味しいんだ??不思議に思う。
長義に聞くときょとんとしている。
「当たり前じゃないか、たくさんあればすぐ飽きる。物足りないと思うくらいがちょうどいいんだよ」
でもまんばは一口目からもう美味しくなかった。
「これだけ砂糖が付いたものを口いっぱいに入れたら、甘ったるすぎるだろ」
「!?」
「それにね、ここで食べるシュトーレンが美味いのは、いつもお前が早く食べたいって願ってるからだよ」
あの願いにそんな効果が???
「待ち遠しいほど食べたいって思った物が美味しく感じないわけない」
「だからそんなこと言ってたのか
…
??」
そう聞くと長義は照れてそっぽを向く。
「それはたまたま
…
。本当は、俺の事を思い出して欲しかったから
……
」
「本歌を?」
「わざわざ日持ちするシュトーレンを食べさせたのだって、同じ理由だ」
「???」
数日後、シュトーレンは全てなくなった。もう長義の部屋に通う必要はない。しかしまんばはあの時間になり、つい足を向けてしまう。
「本歌、おやつ
……
」
長義の部屋を覗いて、まんばは控えめに言う。
「おいで」
もうおやつはないと思ってたが、長義が手招きするので、パッと明るくなる。
新しいおやつを用意してくれたらしい。
そっと差し出された物がおやつではないと知り、まんばは驚く。
その日はクリスマスだった。
ちょぎくにハッピーエンドー!
お付き合いありがとうございました!お疲れ様でした!
まんばがおやつもないのに、長義の部屋を訪れたってことはOKのサインだと長義くんは捉え、この後ごにょごにょ
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