木蔦(キヅタ)
2020-10-03 23:17:39
3524文字
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花吐き病③茶屋の看板娘に恋する長義くんの話【ちょぎくに】


花吐き病その③
ちょぎくに
※女体化ではありません。

政府所属の長義はたびたび甘味を食べに出掛けていた。長義は甘い物が大好き

……という設定だった。

長義の目当てはその店の看板娘お国ちゃんだった。

着物を着て給仕や販売をしてる。客商売をしてるくせに無表情。だがたまに見せる笑顔が堪らない。とても美人。
長い髪をお団子にして耳の下あたりで留めている。

長義は彼女に惚れていた。暇があれば店に来るほどだった。でれでれ。

「長義は本当にお団子が好きだな」
「まあね……
本当は君が好きなんだよ、と言えたらどんなにいいか。
長義はある日奇病を患ってしまう。これは好きな人と両想いにならないと治らない病。

急いで店に行く。

「長義、また来たのか?」

たまにしか見せない笑顔で迎えてくれた。

「今日は大事な話があって来たんだ」
ぎゅっと手を握る。
「なんだ?改まって」
「実は俺はお前が……
「うっ……、ちょ、長義、すまない……っ」
彼女は手を振り払い、口元を押さえながら、駆けて行ってしまう。

「お客さん、とんだ失礼をすみません」
「いや、構わないよ、どうしたのかな」
「お国は今、懐妊してまして、つわりが酷くて
「は……?」

長義は絶望のドン底に落とされる。

「かい、にん……?」
「ええ、恋人との子を授かったようで、もうすぐここも辞めるんですよ。まだ後任が決まってなくて。もしお客さんのお知り合いで良い子がいたら紹介してくださいね」

恋人がいるなんて知らなかった。確かにあんな美人、放って置かないだろう。長義は病に罹るまで、踏み出す勇気がなかった。その間に誰かと恋仲になったのだ。お国を手に入れたやつがいる。
それは自業自得のことだった。

長義は団子を買ってとぼとぼと帰る。その団子は同僚の山姥切国広にあげた。

「こんなに美味しい団子をいらないなんて、もったいないな!」
美味しいことは知っている。しかし食べたい気分じゃなかった。

失恋ですごく胸が痛かった。ついでに花吐き病も酷くなった。げっそり。しばらく店には足を向けなくなった。

それでも好きで、お国が今どうしてるか気になる。しかし恋人と仲睦まじい姿を目撃してしまったら耐えられない。それにお国から「結婚するからもう会えない」などと言われたら心の傷になる。

お国に相手がいるということは、長義はもう助からない。このままタヒを待つ運命だ。

逆にタヒより怖いものはないから、何でもできるのでは??

長義は傷つくとわかっていながら、お国の様子を見に行く。もしかしたら辞めているかもしれないがダメ元。

幸いにも彼女はまだ店頭に立っていた。
つわりの所為か少し顔色が悪いが、元気そうだ。

顔が見れただけでいい。話す勇気はないからこのまま立ち去ろう。長義はそう考えて、そのまま帰ろうとする。しかしお国が長義に気づき駆けてくる。

着物で走りづらそうだし、腹は目立ってないとはいえ身重なのに。長義は逃げることもできたが、転ばないか心配で、ついお国が来るのを見つめてしまう。
「よかった、長義
お国がふんわりと微笑む。この笑顔が好きだった。
「あれ以来店に来ないから、心配していた。」
「いや……それはその……
「あの、俺もうすぐ仕事上がるんだ、少し時間はあるだろうか?」
結婚して辞めるという話だろうか。そんなことは聞きたくない。

お国が長義の手を取る。じっと長義を見つめてくる。ドキドキして手汗がやばい。
「話があるんだ」
長義を握ったその手を自らの胸へ。
「え……!?」
「だから、待っててくれないか」
脳内処理が追いつかなくて、何を言われたのか理解する前に、頷いていた。

しばらくすると着物のままでお国が出てきた。
長義を見つけるとくい、と裾を引き、上目遣い。
「こっち、来て欲しい」
店内へと連れて行かれる。普段の店先や、飲食スペースよりも奥へ。個室に通される。

先程お国に手を握られた時から長義は動揺していた。

胸に手を当てられた際、女性特有の膨らみを感じられなかった。ペチャパイと言ってしまえばそれまでだが、とても違和感があった。

もしかしてお国は男性では、という考えが頭を過ぎる。

茶屋は部屋を貸し出している所もある。個室のため密会などに使われることもある。内緒話をするにはうってつけだ。

実は男性だった、と明かされるのかもしれない。しかし何のために?店を辞めるタイミングで、客に明かすメリットが何かあるだろうか?

長義は今まで男性に恋していたわけだ。しかしお国が男だと知ってもドキドキが治らない。別に長義はホモではないはずなのに。

奥の部屋に通され、お国がお茶を用意してくれる。ついでに店のお団子も出してくれる。

ドギマギしながら長義はそのお茶を飲んだ。

お国はもじもじしてて顔が赤い。意を決したのかお国が切り出した。

「一晩でいい、俺を抱いてくれないか!!」

口に入れた茶を全部吹き出した。

「ちょ、長義?大丈夫か?」
「待って」

ゲホゲホしながら考える。

確かに茶屋の個室では男女の色恋沙汰あれそれで使われることもある。遊女を呼んで宴会とかもあるらしい。

でもまさかお国からそんな誘いをされるとは思わなくて、咽せてしまった。完全に性別の件だと思い込んでた要因が大きい。
「な、なんで、いきなり
「ダメか……?」

涙目でこてんと首を傾げられ、長義の理性は崩壊した。

結婚するのに、とか、もうすぐ自分はタヒぬのに、とか、頭の中からすべて吹っ飛んでいた。

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長義の横にはお国が寝ていた。

昨夜は懇願され、ご奉仕され、積極的なお国に長義は内心驚いていた。とてもかわいかった。
疲れ果てたのか、まだ起きない。

いつもお団子にしていた髪の毛は布団に広がってる。きらきらとした金髪に触れる。さらさら。

髪が長くて気付かなかったが彼は自分の写しだ。
山姥切国広と言えば、クソ生意気な同僚の顔がチラつくが、お国はそれと似ても似つかないほど謙虚で可愛らしい。

しばらく寝顔を眺めているとお国が起きる。
「あ……っ」
昨日の痴態を思い出したのか真っ赤になる。慌てて服を引き寄せる。

「俺、帰る……!」
「待って、どうしてこんなことを……
「それは……あんたのことが、好きだから……

恥じらいつつ、そうお国が言う。
長義は何かが食道を這い上がってくるのを感じた。お国の前で吐くわけにはいかない、と我慢しようとしたが、それは叶わず、目の前で吐き出してしまう。
それは百合だった。

「え!?」
「え!!」

百合は完治の証。完治するには両想いにならなければいけない。

「もしかしてあんたも、花吐き病を……?でも百合って確か……?」
「治った……!お国のお陰で花吐き病が治った……!!」
「え、だって治るには両想いになるしか!」
「そうだよ!俺たち両想いだったんだ!」
「!?」

お国も百合を吐き出す。完治


「でもお前は結婚するんだろう?」
「へ?結婚??」
「だって店主から妊娠したから辞めるって聞いて……
「ああ。いや、あんたを想って花吐き病がどんどん酷くなって、もういつ折れてもおかしくないから辞めるつもりだったんだ。『こんな体調だから』ってボヤかして言ったから、つわりと思われたんだな……それにしても店主は俺が男だと知ってるはずなんだが?女装を強要してきたのもヤツだし。」
「な!?」

いろいろ明るみになった事実に、ホッとしたり、怒りを感じたり……




お国はその後仕事を続けて、長義くんと共に末長く幸せになりましたとさ〜!

おしまい!

お疲れ様でした!お付き合いありがとうございました!






どうでもいい設定
・この同僚のまんばは、①の同僚の極んばです。
・長義は甘いものが苦手。店の商品で唯一美味しいと思ったのが団子だった。
・「抱いて」発言はもうすぐ自分が折れるから、思い出つくりに。(男なので拒否されても仕方なしと思ってた。)
・店主はまんばを女性だと思っている。初対面から。
・あんなに低音ボイスなんだから女性なわけないだろ!しかも顔お前と一緒だろ!気付け!!
・お国ちゃんは最初は「本歌だー……」程度だったんだけど、徐々に長義くんとの何気ない会話が増え(※長義くんは口説いてた)気付いたら好きになってた。そして発病。
・好きになったのは長義くんが先なんですが、発病したのはお国ちゃんのが先なので症状が重い。