木蔦(キヅタ)
2020-06-26 07:31:25
11216文字
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本丸襲撃で折れたはずのまんばに再会する話【ちょぎくに】※刀剣破壊あり


ちょぎくに
※刀剣破壊あり
※審神者出張ります

ある日長義はまんばから告白される。まんばの事は好きでも何でもない。でも号を奪った写しが本歌を求めるのは気分がいい。簡単に言いなりになりそう。
「いいよ、付き合っても」
長義はまんばを受け入れる。まんばは大喜び。

まんばは本丸の初期刀。しっかりしてて頼りになる。だけど長義の前だといつもあわあわしていて、弱気。長義の反応を伺っている。長義の答えに一喜一憂しているのはとてもかわいらしい。

ある日気まぐれに万屋で手土産を買う。鏡。お前はどうあがいても写しでしかないという皮肉を込めて。
持ち歩けるコンパクトなタイプ。あげるとまんばはすごく喜ぶ。頬を染めながら大事そうに胸に押しつけ、長義に言う。
「ありがとう、大事にする……
まさかそんなに喜ぶと思ってなかったから、罪悪感。皮肉を気づかれなくてほっとする。

まんばは割ったらまずいからといつも自室の引き出しに大事にしまっている。使ったところは見たことがない。

自分の施しでまんばが喜ぶのは気分がいい。小さな事ですごく喜んでるのがわかる。馬鹿な写し。

でも徐々にそれが煩わしくなってくる。イライラしてくる。無茶苦茶に傷付けたい。なんでこんなことで喜ぶのか理解できない。


長義の今日の仕事は遠征。まんばが長義の荷物をまとめている。自分でできるのに、恋人気取りかとイライラ。
「気をつけて」
まんばはそう言いながら荷物を渡す。その献身的な態度が妙に気に障る。
「たかが遠征だ、別に気をつけるも何もない。それとも遠征ごときで怪我すると思うほど俺を侮ってるのかな」
「そ、そんなことはない!」
「大体なんでこんなことまでするんだ、余計な世話まで焼いて、健気さアピールかな」
「ち、ちが……
まんばは泣きそう。それすらイラッとして長義は何も言わずに出て行く。まんばの顔は当分見たくない。


長義は遠征中もイライラ。だけどそれは本丸にいる時のイライラとは種類が違っている。
なんであんなにイライラして八つ当たりみたいなことを言ってしまったのか、自分の矜持に反する、とか、まんばを傷付けたいと思ってたのに、いざあんな顔されると後悔でいっぱいになり、そんな自分に矛盾を感じ、イライラ

とにかく自分らしくなかった、と思って、まあ機嫌取り程度に、雑草の花でも持って帰るか、とそこら辺に咲いてた花を摘む。こんなのでも十分まんばは喜ぶ。安い写し。

だけど帰ってきて呆然とする。自分の本丸は立ち入り禁止になっていた。

留守中に時間遡行軍によって襲撃されたとのこと。政府に緊急連絡が入り、駆けつけた時には遡行軍の怨嗟の念が本丸中に蔓延し、踏み込めないレベルだった。生体反応がないことから、審神者は既に死亡しており、刀達も折れてしまったと推測。例え折れてなくても、顕現が解けた状態だろうと。


既に本丸が祟り場と化してるため、折れてなくても無事では済まない。付喪神から異質な物に変質してると。政府から言われる。

長義は信じられなくて無理矢理本丸に押し入ろうとする。しかし政府の役人に止められる。

結局無事だったのは長義を含めた遠征部隊数振り。
後日、特殊な防護服で役人が本丸に調査に入る。刀はすべて折られており、無事な刀はなかった。

長義は後悔する。あれがまんばとの最後になってしまった。本丸襲撃を知った瞬間に長義はまんばへの気持ちを自覚していた。惹かれてた気持ちを無自覚にイライラだと感じていたらしい。

なんでもっと優しくしてあげられなかったのか。後悔してもしきれない。

その後、長義と数振りは政府で働くことになる。しかし長義はまだまんばが折れた事を信じられなくて、どこか非現実的な世界にいる感覚だった。

頭ではわかっているのに、早く本丸に帰りたい、帰らなきゃという想いが心のどこかで残っていて、焦燥感なのか現実逃避なのかよくわからない感情が占めていた。

まんばのために摘んだ花は気付いたらとうに枯れていた。





数年経ったある日、長義の元所属本丸の立ち入りが可能となったと連絡が入る。祟り場と化していたが、ようやく浄化の目処が立ったらしい。

あそこには悲しい思い出しかない。しかしせめてまんばの破片を拾いたい、戒めのためにまんばをそばにおきたいと、思い、立ち入りの申請をする。

浄化が行われ、入れるようになる。そこかしこに折れた刀の破片がある。時間の経過で泥まみれや埃をかぶっていたりがあるが、数年で金属は朽ちてなくなったりしない。

長義はまんばを必死に探す。自分の写しだから、例え欠片だとしても見間違えたりしない。初期刀だったから、最期まで審神者を守ろうと審神者のそばにいたのでは?執務室近くや手入れ部屋など念入りに探す。しかし結局まんばの破片は見つけられなかった。もしかしたら隠れている所を折られたのかもしれない、そうすると探すのが一苦労。

その日は諦め、日を改めて探すことにする。

暇があれば長義は元本丸に行き、まんばを探す。だけどいくら探しても見つからない。
何回か通った時にふと思いつく。本体が無理ならせめて遺品が欲しい。長義はまんばの部屋に向かう。まんばの部屋は荒らされた形跡はない。時間遡行軍はこの部屋には来なかったようだ。初日にこの部屋も探したが、まんばの本体はなかった。机は薄らと埃が被っている。
確かまんばは自分があげた手鏡を大事に仕舞っていたはずだ。出陣時に割れるといけないからと持ち歩きはしなかった。長義は引き出しを開ける。

しかしそこはもぬけの殻で、引き出しを間違えたかもしれないといろいろ探す。場所を変えたのかもしれないと思い、押し入れやタンスなど漁ったが見当たらない。

長義は気が動転して、冷静に物事を考えられない。せめてまんばの遺品をと思ったのに、それすら手に入らないなんて、と愕然とする。
一体今鏡はどこにあるのか。まんばと共に本丸のどこかで割れてしまっているのか。引っ掛かりを覚えたが、答えは出ないまま、長義は本丸を後にする。

そして長義は次の日出張を言い渡される。正直行きたくない。出張なんて行ったら、本丸に行く機会が減る。だけど仕事は仕事だから仕方なく行くことにする。

出張先は平成。不可思議な霊力を政府のシステムがキャッチしたとかで、調査をしなければならない。時間遡行軍でなければ問題なし。

長義は反応があったと言われる場所に着く。時間遡行軍なら歴史に関わる人物が狙われるはず。この付近に出没するのでは、と潜む。

そこで長義は信じられない光景を目の当たりにする。

かつて主であった審神者と、自分の恋刀であったまんばがにこやかに歩いていた。

まんばは布を被っておらず、平成の服装に合わせたパーカーとジーンズ。審神者は本丸で着ていた巫女服ではなく、女性らしいワンピース。

まるで二人は恋人同士のように腕を組んで歩いている。

まずまんばと審神者が生きてることに驚いたし、なぜ、どうして、という思いが強い。頭の中は混乱。

混乱しながらも、長義は思う。まんばをもう離したくない。長義はまんばの腕を強引に掴む。
まんばが長義を見て、目を見開く。その反応だけで長義は自分の恋刀だったまんばだと確信してしまった。人違いではない。
「は、離せ!」
まんばは長義を振り切り、審神者の手を引き、駆けていく。長義は追いかけたが、途中で見失ってしまった。


長義は考える。仮説。
まんばと審神者は襲撃のさなか、仲間達の助けもあって、なんとか逃げ遂せる。まんばはその時大事にしていた鏡を持ち、審神者と共に時空移動する。辿り着いた先は平成。咄嗟のため、政府への連絡手段もなく、ここに滞在している。

と、そこまで考えた。
確か審神者の血痕は見つかったが、亡骸まだ発見されていない。
これでいくら探してもまんば達と鏡が見つからなかった理由がつく。

しかし腑に落ちない点がある。なぜまんばは長義を見て逃げたのか。いくら最後に喧嘩したとは言え、恋刀を見て逃げることはないだろう。理由が読めない。


しかしまんばは生きてた。その事実だけで長義は良い。今までよくわからない焦燥感に駆られながら生きていたけど、ようやく自分を取り戻せた気がする。先程は慌ててしまったが、長義本来の冷静さが戻ってくる。

まんばの居場所はわかった。状況から他の時代に移動することはなさそうだ。
本来なら今すぐにでも捕まえたいが、まんばが逃げたことが気になる。捕まえてまた逃げられても面倒。なぜ逃げたのか原因を調べたい。

長義はこれまでの出来事が今更ながらに気になり始め、一旦政府に帰ることにする。

帰ると同じ本丸で長義と同じように引き取られた刀が声を掛けてくる。

「早かったな」
「ちょっとまだ途中なんだけどね。それよりうちの本丸が襲撃された時の報告書ってあるかな」
「え?あるんじゃないか?確かこのファイルに……
パソコンをいじり、共有フォルダから該当の内容を探す。たくさん同じような名前のファイルが並んでる。
「これこれ」
「感謝するよ」
「最近本丸に通ってるみたいだけど、何か気になる物でも見つけたのか?」
「いや、そんなんじゃないよ。あの時はこんなこと気にする余裕がなかったからね、一度目を通しておこうと思って」
「まあショックだったもんな
同僚は納得して自分の仕事に戻る。長義はファイルを開ける。

報告書は三つ。当時のもの2つと最近のもの。最近のものは浄化後に本丸内を詳しく調べたもの。当時のものは通信記録。音声データはなし。時間と内容が簡単に書いてある。あとは防護服を来て祟り場内に入った報告書。

長義はそれを見ながら引っ掛かりを覚える。本丸から緊急連絡があってから政府が出動要請を出すのが遅い。

長義も今は政府に勤めてるので内部のことはわかってる。刀達はともかく、貴重な審神者を失うのは痛い。審神者の安全を第一に考えるため、こんなに対応が遅いのはおかしすぎる。しかも真昼間。職員はたくさんいたはず。

あと長義の審神者は抜きに出て優秀。数ある本丸の中でも一目置かれていた。ますますおかしい。


『xx時xx分、第xxxxxxx号本丸の前田藤四郎より時間遡行軍による襲撃ありとの緊急連絡があった。これを受け、第xxxxxxx号に救援部隊を……
「前田?」
確かに折れた中に前田はいた。だが長義の記憶が確かなら、この報告書はおかしい。

最近の報告書を見る。審神者は死亡ということになっている。
本当は生きていると長義は知っているため、なんだか違和感。何をもって死亡としたのか。死体もないのに。

長義はもう一度本丸に向かうことにする。

長義は審神者の部屋に向かう。刀剣達の出陣などの管理や政府への連絡する端末が置いてある。案の定壊れている。充電器に繋いだが、うんともすんとも言わない。次に広間に向かう。広間にはその日の出陣や内番の予定が掲示してある。木札がたくさん吊るされている。

長義は第三部隊。遠征。奥州合戦。

本丸時間で24時間後に帰ってくるもの。

前田は第四部隊。遠征。鎌倉防衛戦。12時間。

朝ほぼ同時刻に出発したはずだから、彼が本丸に帰城するのは夜のはず。しかし昼間に政府に連絡してきたと記録がある。
(中断して、帰ってきたとか?)
古参の部隊であるため、何かあっても対応できそう。
中断は考えにくい。

襲撃を受け、審神者が呼び戻した可能性もある。それならなぜ第三部隊は呼び戻されなかったのか?

この本丸は贔屓目なしで見ても強豪。刀達は個々でも強い。動きも精錬されてる。それなのに、時間遡行軍にたった一日で壊滅させられるだろうか?
どの程度の強さかはわからない。

多数の遡行軍が長い時間に渡ってくれば、確かに疲労は濃くなる。怪我もしやすくなる。
しかし最悪籠城すれば最低限の体力で対応できるのではないか。地の利はある。

そう考え始めると不思議なことが多い。
なぜ本丸が祟り場に?呪詛を扱う遡行軍など聞いたことがない。

長義の主は霊力が強い方だったが、呪詛を跳ね返すことはできなかったのか?
なぜ審神者とまんばだけ逃げたのか?

長義は首を捻る。わからない。


当時の刀に話を聞けば解決することだ。長義はそう結論付け、まんばに会いに行くことにする。

再度平成へ。しかしまんばも審神者も霊力を感じない。近くにはいない。
(逃げた?なぜ逃げる。あの時も慌てて駆けて行った)
まんばの態度がよくわからない。
政府の支給品である霊圧を感知する機械を使い、まんばを探す。広範囲に探せて便利。
まんばのいる方角がわかり、向かう。バスや電車を乗り継ぎ、だいぶ遠くまで来た。
「この辺?」
自分でも霊力を探ると確かに近い。不審者のごとくうろうろしてると人にぶつかる。
「すまない!」
「いや、こちらこ、そ?」
目の前にはまんば。
「ひっ、長義!!」
脱兎のごとく逃げられる。

そして探したり見つけたり逃げられたりを複数回繰り返す。
まんばは見つかるたびに引っ越すようで、かなり遠くに移動している。

「なんで逃げるんだ!!」

何回目かの時にようやくまんばを捕まえる。今回は審神者も一緒にいる。審神者は不思議そうに長義を見ている。そういえば審神者とは話もしてないなと思ったところで彼女が言葉を発する。

「ねえ、国広、この人知り合いなの?」
小首を傾げて、まんばの裾をくぃっと引いて尋ねる。長義はびっくりする。数年離れてたとは言え、一緒に暮らしていた刀なのに、まるで知らない人のように扱われる。
驚いてまんばを見る。まんばは気まずそう。

かつての主は気が強くて、勝気。
強かで、抜け目ない、隙がない人。人を言い負かすのが得意だった。

だけど今はぼんやりしていて、まるで別人。ぽんやり天然系。
「主?」
「あるじ?私のこと?私の名前は、」
「いや、この人の言う事は聞かなくていい。行こう」
「行かせない」
まんばの手を強く引く。
「離してくれ!もう俺たちのことは放っておいてくれないか!」
「絶対に離さない!俺がどんな思いでこの数年過ごしたと思ってるんだ!」
「そんなこと知らない!」
まんばと言い合ってると、審神者がまんばの手を引く。
「話を聞いてあげて」
まさか審神者からそんな言葉が出るとは思わず、まんばも長義も驚く。
「その人、とても悲しそう。可哀想だわ。国広、助けてあげて?」
まんばは渋そうな顔をするが、答える。
「あんたが、そういうなら
審神者は「込み合う話もあるだろうから、そこの喫茶店で待ってる」と行ってしまう。
まんばとふたりきりになる。まんばは目を合わさない。
「主は、記憶をなくしてるのか?」
……
まんばはコクリと頷く。
「あの日、何があったんだ」
まんばは少し目を泳がせた後、話し始める。
「時間遡行軍の襲撃に遭い、主が怪我をした。命からがら、この時代まで逃げてきたが、目を覚ました主は記憶がなく、同時に霊力の扱い方もわからないただのヒトになっていた」
そこで何となく長義は察する。審神者が怪我した所為で、取れる手段が限られ、あんな悲惨な結果になったのだと。
「今、主を連れ戻すのはまずい。記憶がない所為で簡単に殺されてしまう。だからここで隠れている。」
「殺される?別に政府で保護されれば安全だと思うが?」
まんばは首を振る。
「政府に裏切り者が混じっている」
長義は驚く。数年勤めていたが、そんな感じはなかった。
「俺も詳しくは知らない。しかし記憶を無くす前の主が言っていた。その裏切り者が俺達の本丸に予め呪詛を仕掛け、時間遡行軍の襲撃と同時にそれを発動させた、らしい。主の力を削ぐためだろうと言っていた。」
あれの所為で本丸に入れないほど淀んでいた。その中で戦っていた刀達もさぞつらかっただろう。しかも対抗できる審神者が怪我で頼れない。場を清めるどころか、手入れもできない。

「政府には通報した。しかし無駄だとわかっていた。裏切り者がいる以上、報告は握りつぶされる。だから助けは期待してなかった」
そしてまんばは審神者の手当てのために、本丸から離脱する。しかし、その時には既にほとんどが折れており、絶望的だとわかっていた。残っている刀だけでも助けたかったが、足止めをするから、すぐに自分達も向かうからと言われ、先に行った。誰一人として追って来なかったのはそういうことだろうと察していた。とまんばは話す。

「事情はわかった。俺が匿うから、主と一緒に帰ろう」
しかしまんばは首を振る。そういえばまんばが長義から逃げてた理由を聞いてない。
「なんでだ」
「あんたには何の関係もない事だ」
「はぁ!?関係ないわけないだろ!俺だって主の刀なんだぞ!?それにお前は俺の恋刀だろ!?」
「別にあんたと俺はそんなんじゃない」
まんばのいきなりの拒否の言葉にびっくりする。前はあんなに従順で控えめで長義に惚れこんでたのに、なんでそんな風に逆らうのか。
もしかしてここ数年で心変わりしたのか。
「お前、他に好きなやつができたのか?もしかして主か?」
まんばは何も答えない。長義はそれを肯定と取る。
「ハッ、主の記憶がないのを良い事に、上手く丸め込んだのか?狡賢い初期刀殿だ」
「何とでも言うがいい」
まんばは去ろうとする。でも長義は逃がしたくないからまんばを壁に押さえつける。まんばは痛みで顔を歪めてる。
「前は俺に尻尾振っておいて、今度は主か!?随分移り気だな!」
まんばを押さえつけた拍子にまんばから何かが落ちる。カシャン、と儚げな音を立てて粉々に。
それを横目でチラリと見ると長義があげた鏡だった。
「あ!」
まんばは割れたことに構いもせず、拾い上げ、懐に押し付ける。

「お前、それ……
まんばは目を合わせない。

未だに大事に持ってる理由を考える。しかもたった今割れて、ゴミと化したのに、それでも拾った。
鏡なんて、平成でも安価で買えるのに。

まだまんばの口から本当のことを聞いてない。すべて長義が邪推し、まんばが肯定と取れるようなことをしただけ。
まだまんばの気持ちは自分にあると確信する。でもまんばがなんで頑なに拒否するのかわからない。

まんばの握ってた腕を捻り上げ、まんばがびっくりした隙に鏡を奪う。
「あ……か、返せ!」
「だめだ」
「それは俺のだ!」
「確かこれは俺があげたものだな?なんで恋刀でもないと言った俺からのプレゼントを後生大事にしてるのかな?」
まんばは黙り込む。まだ喋らないまんばを責め立てる。まんばはついに涙目になって、キッと長義を睨みつけた。

「俺のこと恋刀だなんて思ったことないくせに!」

長義は目を見開く。

「俺が、気付いてないと思ったのか!?全部知ってんだ!あんたに気持ちがないことも!むしろ俺の事を煩わしく思ってたことも!」
長義は昔を思い出す。確かにまんばのことをうざがっていた。イライラしてすぐに八つ当たりした。でもまんばは怒ったりせず、従順だった。
嬉しそうにしてたから、気付いてるなんて知らなかった。
「だからあんたから離れようとしたんだ!もうあんたとは一緒にいたくないから!」
知っててあんなに献身的に長義の傍にいたのか、と思うと心が痛む。まんばには酷い事をした。
「それは、その、すまない」
「別にいい、気にしてない。わかったなら帰ってくれないか」
「いや、そうじゃない!もちろんお前にしたことも申し訳ないと思っている!だけど違う、俺はお前の事が、その……好き、なんだ!」
まんばが顔を歪める。
……無理しなくていい」
「無理とかじゃない!あの時ようやく気付いたんだ!ずっと後悔してた!お前の事が好きだったのに、自分でまったく気付かなかった気持ちに気づくのが遅いと馬鹿にするならすればいい。ただ、疑うことだけはよしてくれ!」
プライドかなぐり捨てて、必死。まんばは黙ってる。
「お前が折れたと聞いた時、つらかった、生きた心地がしなかった!ずっと空虚で、どこにいてもお前の姿を探してしまっていた!お前なしじゃもう生きられない!傍にいてほしい!」
まんばは渋そうな顔をする。
「折角俺から解放されたのに、なんでそうなるんだ。俺が傍にいるのは、邪魔だっただろう」
当時は、邪魔だと思っていた。お前がいるとイライラした。だけど、そのイライラこそ勘違いで、その、ちょっとこんなこと言うのはむず痒いが、お前が愛おしくて、お前が微笑むたびに感じたことがない気持ちが込み上げて来て、それが何なのかよくわからず、お前に八つ当たりしていた。」
……
呆れただろうか。自分の惚れた男はバカだったと」
「いや」

まんばは少し考え込む。そして長義に言う。
「すまない、個人的感情をまじえ過ぎた。主の初期刀としてイチ個人の感情で判断すべきことではなかった。俺を含め、主の保護をお願いしたい」
淡々とまんばから伝えられる。話を逸らされたと気付いてはいたが、まんばを傍に置けるならそれでいい。喜ぶ。

「主の所へ行こう」
ふたりで喫茶店に向かおうとする。しかしそこを横切ったのは時間遡行軍で、ふたりとも目を丸くする。
長義は咄嗟に抜刀し、追い掛けて切り捨てる。まんばも本体を出現させて、抜刀。斬る。しかし何振りか仕留め損ね、審神者の元へ行ってしまう。

何も知らない審神者はきっと遡行軍を見て驚く。抵抗もできないまま殺されてしまう。

政府の記録で審神者が死亡となっていたのは、政府が審神者を探して保護するのを防ぐため。歴史修正主義者は審神者にスパイの存在を知られたため、抹殺せんと追っていた。

長義がまんばに接触。そしてまんばが審神者から離れたのを好機と見て、襲ってきた。

「主、危ない!!」

喫茶店の外から良く見える位置でお茶を飲んでる。ガラス越しに聞こえるわけない。だけど叫ばずにいられない。
時間遡行軍は窓を破って中へ。店内騒然。
ガラスの破片が舞い散るが、なんとか審神者は怪我なく無事。だけどそこに時間遡行軍が迫る。刀を振り上げる。
「主逃げろ!」
まんばも長義も他の遡行軍に足止めを食らう。すぐさま斬り捨てるが、間に合わない。遡行軍が刀を振り下ろすのが早いだろう。
審神者は信じられないものを見るような目で時間遡行軍を凝視してる。
「主!逃げてくれ!!」
まんばの声も虚しく、審神者が動けないまま、遡行軍によって刀が振り下ろされる。

その瞬間、強風とも感じる霊圧が出現。その場を支配した。
「小賢しい真似を」
すくっ審神者が立ち上がる。彼女を中心に強い霊圧が放出されている。
時間遡行軍はその霊圧に中てられて動けず、身体を痙攣させてる。ついに膝まで着いた。
「あ、主?」
「国広、さっさと滅しなさい」
「え、あ、ああ」
その場の遡行軍を全て斬り捨て、終わる。
「主もしかして記憶が?」
「ええ、そう。まったく不本意だわ、記憶がなかったとは言え、こんなフリフリワンピース着せられるなんて。国広の趣味?」
「チガウ」
あと怒るところはそこなのか。
「さぁ、政府に参りましょ。私の刀達を折った報いを受けてもらうんだから」
長義も呆気に取られてるが、審神者が戻ったことで絶対的な安心感。審神者、無敵モードに入ってる。
敵に回したくない。gkbr

審神者の霊力で政府まで飛ぶ。平成の世で事件起こしちゃったけど、隠蔽は政府に丸投げする。

審神者は呪詛を掛け、罠にはめた犯人の目星は付いていて、それを告発する。政府は死亡したはずの審神者が突然現れびっくり。話を聞き、犯人を捕らえる。
芋づる式に協力者が出てきて、全員お縄。めでたしめでたし。



新たな本丸を与えられ、審神者はまんばを連れてそこに移り住む。審神者の希望で、前の本丸で折れた刀達の破片を集め、新しい本丸の庭に供養。

あの時生き残った遠征部隊も政府に残るか審神者と共に本丸に行くか希望を聞く。すべての刀が審神者の元へ行くと回答。数は少ないが、かつての仲間と共に
再度共同生活をすることに。




「国広、おはよ」
寝てたまんばを長義は揺り起こす。ぽんやり。
「ほら、起きないと、今日は朝から主と政府に行くんだろ?着替えここに置いておくよ」
「は!?き、着替え!?そんなことまでしなくていい!」
一気に覚醒する。長義に勝手に箪笥の中漁られた。
「こ、恋刀だからって、余計な世話まで焼くな!」
「いいから。俺がお前のためにやりたいんだよ」
「ううう
まんばは本気で頭を抱えてる。そんなところもかわいい。
まんばの部屋にはこの前積んできた花が飾られてる。ただの雑草。あの日長義が渡せなかった、枯れてしまった花。
「じゃあ気をつけて」
「たかが政府へのお使いだ、別に気をつけるも何もない。」
「はいはい、行ってらっしゃい」
「うー。行ってきます」

そしてちょぎくには幸せになった。(魔法の言葉)




本当に本当に長い事お付き合いありがとうございました!お疲れ様でした!ちょぎくにハピエンです!
お読みいただきありがとうございました!




■どうでもいい設定
・まんば達が帰らなかったのは、3つ理由がある。
 ①審神者が霊力を扱えないため戻れなかった
 ②本丸も政府も安全な場所じゃないため戻りたくなかった
 ③長義を解放してあげたから戻りたくなかった
・まんばは、長義が遠征に行ってたため、恐らく無事だろうと思っていた。確定ではないため、無事であってほしいと日々祈っていた。
・記憶がない審神者はまんばと本歌さんのやりとりを見て、色恋沙汰かな?って思って自分は退散することにした。
・長義くんにとって、恋をイライラと勘違いしていたのは恥。でもその恥を明かしてでもまんばのことを繋ぎ止めたかった。
・鏡の皮肉には気付いてた。だってまんばは鏡なんて使わない。だけどそれを差し引いても初めての贈り物で嬉しかった。
・システムが平成の世で感知した霊力はまんば。
・記憶がない審神者に、まんばは弟だと主張。天然ぽんやり審神者はそれを信じていた。
・長義が元本丸へ行って端末を調べたのは出陣・遠征記録を見るため。結局壊れてたため、掲示板で確認。
・鏡の割れた部分だけ取っ払って、周りを囲ってたケース(?)だけを持ってる。
・政府で本歌さんと話してた元本丸の仲間は獅子王。(一応政府内なので本人が少し意識して、言葉遣い丁寧にしゃべってる)
・ラストシーンは冒頭のちょぎくにシーンの対比。セリフはほぼ一緒だけど受け答えが違う。あとちょぎくにも交代してる。まんばが尽くす感じだったのが、長義くんが尽くす感じに変わってる。


まとまりが良いからこういう終わり方にしたけど、あの後すぐにまんばと本歌さんはくっ付いてない。

まんばはまだ本歌さんの気持ちを疑ってる。だけど、少し信じてもいいかなと思ったので、あの時「保護してくれ」って言った。共同生活を始めてから、長義が献身的に愛を伝えるので耐えられなくなった。
そしてまんばが押し負ける形で、元鞘に戻る。長義は嬉しくて嬉しくてもう離さない。(これラストかなりさわやかに書いたけど、隠れヤンデレ化してます。まんばに何かあったら怖いので、まんばの服とかに御守り縫い付けてます。)