木蔦(キヅタ)
2020-05-28 23:23:28
4531文字
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口下手な本歌さん【ちょぎくに】


ちょぎくに

長義くんはまんばが好き。
なんとかして好かれたい。接点を持ちたい。話したい。

だからことあるごとにまんばに話し掛ける。ちなみに『偽物呼び』もまんばの気を引きたいため。

「やあ、偽物くん」
「写しは、偽物とは違う

相変わらずかわいいなと思う。

ボロ布を被ってるのにこんなに輝いて見えるのは不思議だと感じる。
「偽物くんは代わり映えしないね。そんなみすぼらしい格好して、お見それするよ」
「それは悪かったな」
まんばはムッとした表情。何か怒らせるようなことを言っただろうか?と疑問に思う。
それにしてもまんばがおしゃれしたらもっとかわいくなるんだろうかと思う。
「偽物くんはもう少し身だしなみに気を使ったらどうなのかな」
「余計なお世話だ」
さらにムッとした表情。どうかしたのかと「??」を浮かべる。
もしかして本歌たる自分に釣り合うか不安に思っているのかと気づく。

まんばはどこからどう見てもかわいい。自分の横に置いても見劣りしないほどかわいい。
「心配せずとも、俺とは比べ物にならないよ」
「当たり前だろ、写しと比べるなんて
まんばの声が暗くなり、トボトボと去っていく。その後ろ姿を見送りながら、満面の笑み。
今日はたくさん会話できた。嬉しい。


まんばが怪我した時も心配で手入れ部屋にお見舞いに行く。
「全く、なんであの時突っ込んで行ったんだ」
「すまない」
まんばは危険な戦場なのはわかっていたのだから、もう少し慎重な行動をしてほしかったと思う。
「一体何年、人の身体をしてるのか、いい加減考えて行動することを覚えてほしいな。お前には学習能力というものが皆無みたいだね。俺は何度も注意しろと言ったつもりだけど?」
よし!かなり優しく注意できたぞ!と内心思う。
まんばは顔を曇らせて「すまない」と言って黙ってしまう。
「今度同じことがあったら、お前は部隊から外してもらうよ」
まんばには怪我してほしくないから、危険な戦場の場合は審神者に考慮してもらおうと考える。
まんばはぐっと唇を噛む。
「肝に銘じる

そんな日々が続き、長義的にはまんばとかーなーりー交流を深めたと思っている。仲良くなれた。




非番の日、まんばを見かける。まんばも非番らしく出かける準備をしていた。

最近まんばと会える機会が少ない。きっと本丸の人数が増えたからだろうが、がんばって探しても、なかなか見つからないことが多い。

久々にまんばに会えてラッキーだと思う。
「おい!偽物くん!」
嬉々として話し掛ける。まんばは長義を見た瞬間、顔が引きつる。

「偽物じゃない。な、何の用だ
「どこか出かける気かな?お前は非番でもやることなさそうだもんね」
うるさい」
まんばは目を逸らす。
もしかして自分に会えて照れてるのかもしれない。人の顔を真っ直ぐ見ないのは失礼だが、照れてるなら仕方ない。許してやろうと考える。

もし万屋に行くなら一緒に行きたい。あわよくばデートしたいと考える。

何か口実をと思い、長義は提案する。

「そうだ、俺も買いたい物があった!一緒に行くよ」
「はぁ?」
「今日は荷物持ちがいるし、気兼ねなく買い物できるな」
まんばの荷物を持ってあげるよと言う旨を伝えたが、なぜかまんばは青い顔をしていた。


二人で万屋への道を歩く。まんばは少し後ろを歩いている。デートみたいに並んで歩きたい。
「偽物くん、何ちんたら歩いてるの。」
「す、すまない!」
慌てて駆け寄ってくる。急かして横並びになる作戦成功。にっこり笑顔。
まんばは恥ずかしいのか顔をずっと俯かせてる。そりゃ本歌とデートなんて写しにしてみれば赤面案件だろう。(*´∀`)ニコニコ

万屋に到着。まんばは審神者に買い物を頼まれたらしく、メモを見ながら商品を物色している。
特に買う宛もない長義はブラブラと店内を見て回る。

そうだ、写しに何か買ってやろうと思い至る。
アクセとかは着けなさそうだし、実用的な物の方がいいだろうか。いやしかし身に付ける物がいい。そうだ、根付はどうだろうか、と商品を眺める。

ああでもないこうでもないと考えていると買い物を終えたまんばがやってくる。
「本歌は根付を買うのか?」
「偽物くんはどれがいいかな?」
「俺なんかの意見など
「良いから教えなよ」
「うーん本歌なら、やはりこれじゃないか?」
まんばが欲しいものを聞いたのに、思ってもなかった答えが返ってきた。長義のだと思ってるらしい。
「へえ?良い趣味してるね」
まんばが選んだのはカイヤナイトという青い天然石が付いた物。緑ベースの組紐。まるで長義とまんばを思わせるようで、チョイスは㊝
……
褒めたのに眉を寄せて黙り込んでしまった。長義は何か喋らなくてはと、それと対になる根付を手に取り言う。
ちなみに長義が選んだのはアマゾナイトという明るい緑の天然石の根付。
「お前にはこれがお似合いだよ」
……!」
まんばは傷ついたような顔をして、「そうか」とだけ言って先に店を出ていく。慌てて長義はその二つを買ってまんばを追いかける。


ふたり並んで歩く。折角のデートなのだからもう少し一緒にいたい。そうだ、茶屋はどうだろう。まんばは食いしん坊だし、きっと喜ぶ。
「ちょっと休んでかないか」
「疲れたのか?」
「いや、そういう訳じゃない。だんごでも食べたらいいんじゃないか?お前すぐ腹を空かすだろ」
「な、そんなことない!食い意地張ってるみたいな言い方はよしてくれ!」
「でも腹が減ったんじゃないか?」
「減ってない!」
まんばはプリプリと怒ってしまう。なぜ怒ったのかよくわからない。だんごを勧めただけなのに、お腹が減ってなかったんだろうか?
しかし、ぐぅ、という大きな音が聞こえた。
「ほらやっぱり減ってるんじゃないか!なんで意地張ったんだ。これだからお前は世話が焼ける……
やれやれと長義が呆れてるとまんばがブチ切れる。
「うるさい!もう俺に近づくな!毎回ネチネチ嫌味言ってきて!もううんざりだ!俺に話しかけて来ないでくれ!」
まんばはダッシュで行ってしまう。
待ってと言いたくてあげた行き場のない手。虚しい。
(嫌われた!?なぜ!?)
まんばとはかなり仲良くなれたと思ったのに。最近毎日話してない所為で、疎遠になってしまった?

悲しい。どうすればいいんだ。謝りたいけどなんで怒ったのかよくわからない。折角だんごを食べさせてあげようと思ったのに。
しょげつつ、本丸に帰る。

にゃんせんくんに今日のことを話す。
にゃんせんくんはポカンとしてる。こんなアホに話した自分が馬鹿だった、と立ち去ろうとする。
「いやいや待て待て!悪いけど、もう一回言ってくれ、にゃ」
「猫殺しくんは人語が理解できなくなったのかな?可哀想に」
「うるせー!そういうとこだよ!」
にゃーにゃーうるさいので、答えてあげる。
「偽物くんが怒って帰った」
「その後!」
「なんで怒ったのかわからない。こんなにも仲がいいのに、何が気に障ったのか?」
「そこ!」
「どこ」
何かおかしなこと言ったのかと首を捻る。もしかして『なんで怒ったのかわからない』の部分だろうか。第三者から見たら一目瞭然?
「わかった顔して良い気になるなよ猫殺しくん。俺がわからないからって馬鹿にするのはどうなのかな」
「なんで逆恨みするんだ!人に物を頼む態度か!」
「良いからとっとと吐け」
脅す。

にゃんせんくんが渋々話し始める。
「お前いっつも写しにキツイ言葉掛けるだろ」
「キツイ?偽物くんとは楽しく会話してるつもりだけど?誰の物差しでキツイって判断してるの?」
「いや俺は普通だからな!?物差しって!俺が過激派クレーマーみたいに!」
「偽物くんにキツイ言葉なんて言ったことないけど」
「じゃあ想像してみろ、にゃ。俺がお前に声を掛ける。『よう、化物切り、今日も相変わらずぼんやりしてるにゃ!』」
「馬鹿にしてんのかと思う」
「『また手入れ行ってたのかにゃ?お前は間抜けだにゃー!』」
「煽ってるよね」
「『その空っぽの脳味噌では覚えられないかにゃ?』」
「叩っ斬る」
柄に手をかけた長義ににゃんせんが焦る。落ち着け落ち着けと身振り手振り。
「これ全部お前が言ってたことだけど??」
「猫殺しくんから言われると無性に腹が立った。やっぱり斬りたい」
「にゃんでだー!!」
どうやら長義の言葉のチョイスが良くなかったことをようやく自覚する。たぶんお出かけでも、それが原因でまんばを怒らせた。

原因はわかったので、仲直りしたい。長義はまんばの部屋に行く。まんばは嫌そうな顔。

「すまなかった、偽物くん。お前を傷つけてるなんて気づかなかった」
まんばは困った顔をしている。本当のことなのか疑ってるのかも。
「つい思ったことを素直に言ってしまっただけなんだ、他意はない」
「じゃああんたは普段から俺のこと小馬鹿にしてるってことだな?」
「いやそういうつもりじゃない!」
「思ったことを素直に言っただけなんだろ?」
まんばに指摘されて押し黙る。
「あんたが俺を疎んでいることくらい知ってる」
出てってくれと言われる。長義は誤解されたくなくて、必死にまんばに言う。
「お前は勘違いしてる!思い込みだ!」
「被害妄想だと?」
「いやそこまで言ってな、事実じゃない、その、そうだな!お前の被害妄想だ!だからその、お前とは楽しく会話してるつもりで
「お前とはもう口も聞きたくない」
「なんでそうなる!?」
「いや逆になんで疑問に思うんだ!」
長義は本当に困ってしまって、まんばの腕を掴み迫る。
「信じてほしい、俺はお前のことが嫌いなわけでも、からかってるわけでもない。ただ仲良くなりたいだけなんだ」
まんばはぽかんとしてる。長義はチャンスと思って、万屋で買った根付を差し出す。
「お前に何か買ってやりたくて、その、これを
まんばは長義と根付を交互に見て、おそるおそる言う。
「これを俺に?」
「そうだよ、そう言っただろ?」
「なんで?」
「何か与えたいと思うのは変?」
「なんで俺に?」
「え、その、それは、親しくなれたと思って、その……
長義がもう一つの自分用の根付を出す。
まんばが選んだもの。
「まさか、あんた、不器用か?」
「ん?手作りの根付がほしかったってことかな?」
「いやそういうことじゃない」
「手先は器用な方だと思うんだけど」
「いやだから違う」
まんばは少し考え込む。
「俺を嫌ってるんじゃないのか?」
「嫌ってない!」
まんばは根付を受け取る。
「もらってもいい」
「!?受け取らない雰囲気だったのに、なんで急に気持ちが移ろいだんだ!?」
「言い方」
「好みの根付だったのか!?物に釣られたのか!?」
「言い方💢」
そしてその後ふたりは徐々に仲良くなっていって、まんばも長義が何を言わんとしているのか読み取れるようになり、ついには通訳にまでなる。

というのがこの話の結末。