木蔦(キヅタ)
2020-01-04 21:57:44
10964文字
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現代まんばが刀剣乱舞の世界にトリップする話【ちょぎくに】※現パロ


ちょぎくに
・少しだけ現パロ
・審神者出張るかもしれない
・終わらないかもしれない

まんばはごくごく普通の高校生。
親からは冷遇され、友達もおらず、将来の夢や打ち込むこともなく、学生生活を過ごしていた。ただまんばは他人とどこかズレていて、壁がある、自分のことなどわかってもらえないなと思っていた。自分と彼らは違う生き物だから、分かり合えないと無意識に理解していた。

まんばは幼い頃からたびたび夢を見る。カン、カン、という金属の音、真っ赤な炎、ぼんやりとしていて顔はわからないが、古めかしい着物を着た数人の男、何をするでもなく自分を見つめる白い男
それが何を示すかはわからない。起きるといつも不思議な気持ちになる。

ある日まんばはいつものように寝た。しかし再び目を覚ました時には、違う場所にいた。
赤く燃える炎、いくつか置かれている槌、たくさんの石、そこは薄暗い倉庫のような場所だった。
まんばの目の前には顔を隠した男性と、まんばによく似た銀髪の男性が立っている。
まんばの周りにはたくさんの桜の花びらが舞っている。

まんばは自分の置かれている現状を理解できず、キョロキョロと辺りを見回した。
「山姥切国広だ!うちにも国広が来た〜!」
顔を隠した男性が喜色を含んだ声を上げる。
確かにまんばの名前は山姥切国広だけど、なぜ初対面の男が知ってるのか。
「よかったね、主」
「嬉しいな!これで本歌と写し、揃ったね。長義も嬉しいでしょ?」
「俺は別に」
銀髪の男は冷たく言い放つ。対照的だ。
「ね、ね、口上言って!」
顔を隠した男がまんばにそう言う。
「こ、こうじょう?」
「そう!口上!」
何を言えばいいのかわからない。まんばは困ってしまって、銀髪の男に目を向ける。
銀髪の男はため息をついた。
「どうやら本歌がいると、写しは萎縮して口上が言えないらしいよ主」
「ええ!そんな!俺初めて来た子の口上聞くの楽しみにしてるのに!長義、何とかして!」
「なんで俺が写しなんかの。」
「長義は国広の本歌でしょ!言わばお兄ちゃんみたいなもんなんだから、弟が困ってたら何とかしてあげて!」
「そんなめちゃくちゃな」
「あ、あの
「なに?口上言ってくれるの?」
「口上ってなんだ?それにここはどこだ?俺は自分の部屋で寝てたはずなんだが

歴史修正主義者、時間遡行軍と戦うために、刀を顕現させた刀剣達が集う本丸であることを説明される。まんばはそのために呼ばれたということも言われる。
まんばは刀ではないし、実は2020年から来たこと、ただの人間であることを説明する。
「元の世界に返して欲しい!」
「うーん
審神者は首を捻る。過去に刀を送る力があるなら、まんばを元の世界に戻すのも造作もないことでは?
「帰すのは簡単なんだけどね、ただの人間が刀として顕現するなんて今までにないことだから、大丈夫かなぁ?って。一応政府に報告した方がいいかもしれない。これで歴史改変になると大変だし」
それに人間は過去に送ったことがないので、危険かもと説明される。
とりあえず政府に問い合わせをしてくれるということで、まんばはしばらくこの本丸に滞在することになる。


山姥切国広の格好をしてるが普通の人間だ、と本丸の刀達に紹介される。

みんなワイワイ歓迎。人間なんだからってみんな優しく繊細に扱ってくれる。(人は手入れじゃ治らないか弱い生き物だと認識している)

しかし長義だけは違って、まんばに厳しく当たる。


「俺の写しなんだ、稽古をつけてやる」
「い、いや、俺は剣道すらやったことがないから無理だ!それに俺は刀じゃない」
「俺の写しのくせに、逃げ腰なのは良くない」
刀じゃないという主張は聞く耳を持ってもらえない。人間だというのに、手合わせをさせられる。まんばは刀を握ったこともないので、コテンパンにされる。

「もうへばったのか。意気地が無い」
「俺は刀じゃない!人間だ!そんなに体力あるわけないだろ!」
「お前は俺の写しだ。こんなことでは先が思いやられる」

やっぱり長義は聞く耳を持ってくれない。
まんばのことを刀だと思い込んでる。

「いずれ戦場に連れて行く。今のままだと太刀打ちできない。それまでは俺が稽古を付けてやるから
まんばのことを野蛮な血生臭い戦の場に連れて行くという。真っ青になる。
「無理だ、斬れない!殺されるのがオチだ!怖い!」
「俺の写しのくせに情けないことを言うな」
「写し写しうるさい!俺はあんたの写しじゃない!」
そう言った瞬間、長義が少し悲しそうな顔をする。
まんばはなんだか悪いことをしてしまった気分になって何も言えなくなる。

「まあいい、明日はこってりしぼってやる。覚悟しておけ」
長義は去って行ってしまう。




次の日も次の日も手合わせをさせられる。
まんばは嫌でしょうがない。早く元の世界に帰りたい。

長義は自分の仕事・出陣もあるから、その合間を縫ってまんばに稽古を付けている。
まんばは、人違いなんだから勘弁してくれ、誰か本物を連れてきてほしい、きっと本物なら長義の期待に応えられるはずだ、と思っている。

そんなある日、長義が重傷帰還する。
まんばはそれを見た瞬間頭が真っ白になって、ショックを受ける。
怖い怖いとは思っていたが、怪我した姿を目の当たりにすると実感が湧いてきて、自分が異世界に飛ばされて夢心地でいたことを自覚する。
そしてまんばより遥かに強くて怪我なんて縁遠そうな長義が重傷で運ばれて行ったことも衝撃的だった。

(死なない、よな?)

刀は手入れで治ると聞いた。
だからあんなに酷い怪我だとしても、治るに違いない、そうであってほしい、とまんばは思う。
不安で不安でしょうがなくて、審神者にも他の刀にも大丈夫と言われたが、信じられなくて、手入れ部屋の外で終わるのを待っていた。


「お前、そんなところで何してるんだ」

翌朝、怪訝そうな長義が部屋から出てきた。昨日の怪我は見当たらない。
「長、義
「お前、自分で人間だっていうくせに、そんなとこで寝てたら風邪引くんじゃないか?」
「もう、大丈夫なのか?」
「平気だ」
まんばは本当に大丈夫なのか信じられない。
「刀は、しなないのか?」
「死なない。ただ、折れることはある。人間で言う死だ」
そう言われてまんばはまた怖くなる。自分のことではなく、長義が折れるかもしれないと思うと怖くなった。
「少しの判断が、破壊に繋がる。そういう世界だ。そうならないために、お前を鍛えてるんだよ」
「はかい
「まだお前には早かったかもね。お前は軟弱者だから」

まんばはいまだ怖いという思いはあるものの、強くならなければと思うようになる。
今までよりも少しだけ真剣に手合わせに取り組む。

しかしまんばは元の世界に帰りたいという願いは変わらないので、審神者にたびたび状況を聞きに行った。審神者からの回答は変わらず、政府からの連絡はなしとのことだった。

まんばは本丸に徐々に馴染んでくる。馬もまんばに懐いてくれた。大勢の料理を作ったり盛り付けをするのも慣れた。長い廊下の雑巾がけだってピカピカにできるようになった。

そんなある日審神者から呼び出される。政府から連絡が来たらしい。まんばは期待に胸を膨らませ、審神者の言葉を待つが、答えは元の世界に戻すことはできない、とのことだった。何らかの影響が出る可能性がある。それをわかっていて、まんばを元の世界に帰すことはできないという判断らしい。
まんばは目の前が真っ暗になる。

帰れる方法はあるのに帰れない。理不尽さにつらくてつらくて、稽古にも身が入らない。
「どうした、折角みてやってるんだ、真面目にやれ!そんなんじゃ折られるぞ!」
なんで俺がこんなことを、と怒りが沸々と湧いてくる。
「俺は刀なんかじゃない!」
「刀だ!」
「俺は人間だ!!」
感情のままに刀を振るう。しかし大振りになり、長義に隙を突かれてしまう。
「脇が甘い!俺の写しのくせに全然だめだな!」
「写し写しうるさい!!俺は刀じゃないって何度言えばわかるんだ!」
お互い譲らず、口論しながら稽古する。まんばはがむしゃらに長義に向かって行くが、赤子の手を捻るようにいなされてしまう。
いつしか日も暮れて、星が出てきた。長義にふっ飛ばされ、寝転がる。汗でびしょびしょで、身体もくたくた。
「もう夜も遅い、終わろう。夜目も利かないだろう」
「まだ、見える
「無茶をすると体に響くだろ、行くぞ」
長義はまんばの手を取り起こす。
「そら、歩けないのか。抱いて風呂まで運んでほしいのか?」
カッとなって、まんばは立ち上がる。
※書いてなかったけど、稽古は毎回外でやってます。

足はガクガク、腕はプルプル。正直歩けないが、バカにされて崩れ落ちたりしたら男が廃る、と思いまんばは歩き始める。しかし長義に強引に下へ引っ張られた。
「なんなんだ!いきなり!」
「良いから付き合え」
「嫌だ!俺は風呂に行きたい!」
「今は粟田口が入ってる時間だから大勢いるぞ」
黙り込む。人に顔を見られるのは嫌だった。だから風呂は刀達が入ってない時間帯を選ぶ。
「そんな所は俺の写しと変わらないんだな」
くすりと微笑む。バカにされたのかと睨みつけるが、いつものコケにした笑いではなく、優しげな表情だから、呆気にとられた。
「なあ、まだ元の世界に帰りたいのか?」
「あ、当たり前だろ!」
いつもと雰囲気が違う長義だから、つい動揺してしまう。
「あちらの世界がお前は大事なんだな」
その呟きは少し寂しげで、まんばはつい罪悪感が募る。ただ、まんばは向こうの世界に帰らなければならない。
まんばを待ってくれてる人がいるから。
(あれ……?)
まんばは気づく。なぜ帰りたかったのかわからない。むしろまんばは向こうの世界に違和感すらあった。自分が異物だと認識していた。親からも冷遇され、友人もおらず
(なんで、帰りたかったんだっけ?)

疑問に思うと、向こうの世界で感じていた違和感が次々と蘇る。そしてまんばの心がザワザワする。心地が悪い。それと対比するように、ここでの生活が思い起こされ、"まるで違和感を感じてない"ことに違和感を覚える。
まんばの頭の中で、小さい頃から夢で見ていた映像が過ぎる。カンカンという金属の音、真っ赤な炎、数人の男性……
……っ」
まんばは振り払うように、頭をブンブンと振る。

「ずっとここにいればいい」
優しげな言葉に、弾かれたように顔を上げる。長義は真剣な目でまんばを見つめていて、ドキドキしてしまう。心なしか長義の顔が近い気がして、まんばは思いっきり突き放した。

「俺は!絶対に帰るんだから!!」

そう言い捨て、長義を置いて駆け出した。くたくたでもう動かないと思った足は、逃げることだけは一丁前だった。





まんばは数日間長義を避ける。本当は毎日稽古していたが、今はなんだかんだと言い訳して逃げたり、別の刀に稽古をつけてもらったりしていた。
ここ数日、まんばはずっと考えていた。戻りたいとは言ったものの、あの夜から戻りたいという気持ちよりもここに残りたいという気持ちの方が強くなっていた。
なぜ残りたいかと考えると、長義の顔が浮かんできて、まんばはブンブンと首を振る。残りたい理由が長義にあるわけではない、決して。
そしてまんばは、いつもより優しげだったあの夜の長義を思い出し、真っ赤になって思考停止してしまうのだった。
ある日、政府からの要請でまんばが出陣しろと言われる。まんばが人間だと政府はわかっているのに、なぜ、と疑問に思う。審神者は「もしかしたら異分子を正当な理由で始末してしまうために、出陣して死なせようとしてるのかも。普通の人間なら時間遡行軍に太刀打ちできるわけがないし」と推測を話す。
まんばは真っ青になる。日々鍛錬してるが、実戦経験はないし、刀はあるが本当に誰かを斬ったことはない。(稽古では木刀)
無理だと審神者に主張するが、断れば強制的に政府からの権限で出陣させると書かれていると言われる。
まんばは怖くて絶望する。
審神者はごめんね、ごめんね、と何度も謝ってくるので、審神者が悪いわけじゃない、とまんばは言う。明日出陣することになった。
明日死ぬのかとまんばは重苦しい気持ちになる。部屋で一人膝を抱えていると長義が現れた。
「なぜそんな顔をしている」
まんばを見下ろし、突き放した言い方をする。

まんばは避けてたことも忘れて呆然と長義の顔を見てる。そして、明日のことをぽつりぽつりと話し始めた。初めての戦で不安なこと、政府が始末しようと考えてること、異形の敵とはいえ斬ることが怖いこと、きっと上手くいかなくて斬られるに違いないこと。


元の世界云々はわざと話さなかった。もう帰りたいと思ってなかった。



長義は黙って聞いていてくれた。こんなこと言ったら「俺の写しのくせに弱音を吐くな」と言われるだろうかと思ったが、吐き出さずにはいられなかった。
長義はまんばの頭を抱え込むように抱き締める。
「大丈夫だ、俺が守ってやるから」
!」
「それにお前はずっと稽古に耐えてきた。刀の付喪神とは言え、素人がよくやったと思うよ。だから自信を持て。本歌である俺が言ってるんだ」
まんばは今まで大変だったことを思い出す。つらかったし、厳しかったけど、本歌にそう言われると今までの日々が良かったと思えてくる。
「俺は刀じゃない」と否定することも忘れ、ドキドキしてる。長義に抱き締められて、ようやくまんばはあの夜以降、長義のことを男性として意識していたことを自覚する。
「初陣、無傷で帰らせてやるから、大船に乗った気でいろ」
翌日、まんばが戦の準備をして、外に出る。既に他の刀達は揃っている。
「うち、まだ発足して間もないけど、なるべく強い子揃えたから!」
……すまない」
「いや謝るのはこっちだよ、危ない所に行かせるなんて、ごめんね
審神者が見送ってくれる。レベルの高い子達で出陣。

まんばはドキドキ緊張してたが、みんなが強いので、まんばの出番は殆どなく、進んでいく。このまま無事に帰れそうな感じだった。
一度出陣してしまえば、政府は一応は引き下がってくれるだろう。もしかしたら次の要求があるかもしれないが、一旦は退けられる。
初陣はこのまま無事終わる、かに思えた。

検非違使が出現し、部隊はピンチに陥る。まんばを守るために練度の高い刀達を揃えたのが仇となった。しかも検非違使に先手を打たれ、次々と刀達が怪我を負っていく。
「俺の側を離れるなよ!」
「けど!」
大太刀がまんば達を狙って刀を振り下ろす。長義はそれを受け止めた。
まんばがいなければ避けるだけで良かったはずだが、長義は後ろにいるまんばを守るために受けるしかなかった。
「俺がいるとあんたの身動きが取れない!長義、俺に構わず普通に戦ってくれ!」
「守ると決めたのに、違えるわけがない!」
まんばの言う事は一切無視でまんばを庇って戦う。
長義が庇うものの、どうしても攻撃を避けきれず、まんばは怪我が増えていく。
「国広!戦え!それでも俺の写しか!」
「でも!」
「俺が必ず守るから!必ずお前だけは本丸に帰してやるから!」
その瞬間、長義は敵に吹っ飛ばされてしまう。地面に叩きつけられ、ピクリとも動かない。
まんばは頭が真っ白になる。検非違使がまんばに迫る。



まんばの中で音が鳴った。カンカンという金属が打ち付けられる音。そして目の前に燃え盛る炎が現れる。自分を囲う複数の男性、しゃがみこんで自分を覗き込んでいる。男性の持つ槌が自分に振り下ろされた。それに合わせバチっと火花が飛び散る。
その槌はリズムよくまんばに振り下ろされる。痛くはない。むしろ自分から不要な物がどんどん取り除かれていく感覚がして、心地いい。
ふと、部屋の端を見ると、白い着物を着た男性が壁にもたれかかっていた。何をするでもなく、まんばのことをじっと見ている。髪は銀髪、目は澄んだ青。


(ああ、これは俺の親と―――
まんばは今まで見ていた夢の意味を察する。

検非違使が目前に迫る。刀を振り上げられ、直感的に避けられないとわかる。まんばは刀を抜いた。カンっと金属がぶつかり合う音がした。なんとか敵からの攻撃を防いだ。
まんばを庇うために味方は重傷を負っており、すぐにまんばのフォローはできない。長義のように意識を失っている者はいないが、立てないほどの傷だったり、素早く動けなかったりする。しかし彼らが戦ってくれたお陰で、敵は目の前の二体のみとなった。
二体いっぺんに相手にするのは不利だ。それはわかっている。しかしまんばがやらなければ、部隊が敗北することは目に見えていた。
もう一体から後ろから斬られ、まんばは崩れ落ちそうになる。しかしこのまま力を緩めたら、目の前の敵の刀も受けることになる。怪我で力が入らないが、必死に耐えた。動かないまんばを良い事に、敵は再びまんばを斬る。
嬲られるだけの状況にまんばはタヒを悟った。

(やっぱり駄目だ俺なんかが無理だったんだ、こんな、こんな

現代に生まれたまんばではこんな血生臭い戦場で生死を掛けて争うなんて無理だった、まんばが刀を扱う事などできない。そう思った瞬間だった。
――戦え!それでも俺の写しか!
長義の声が聞こえた。そうだ、今までなじられながらもやってきたことはなんだったんだ。毎日写し写し口うるさく言われ、身体がくたくたになるまで稽古し
このままタヒんでしまうかもしれない、だけど最後まであがいてみてもいいかもしれない。折角血がにじむような稽古をしてきたのだから、今ここでその成果を発揮しなくては、いつするのか。

「俺を写しと侮ったこと、後悔させてやる!!」












審神者は部隊重傷の知らせを受け、慌てていた。こうならないよう強い刀で固めたつもりだったが、失敗だったようだ。人間である国広は無事なのか、心配になる。
人間は手入れでは直らない、政府の病院に緊急搬送しなければならなかった。

部隊は敗北、全員重傷、審神者による強制帰還だった。
審神者が門に辿り着くと、地面に倒れ込んでいる者や背負われている者など、血だらけの者が5振り。まさか、と審神者は真っ青になる。ひとり足りない。
周りには本丸にいた子達が怪我人を運ぼうと囲んでいる。やはり怪我人は何度数えても5振りしかおらず、まんばの姿はない。
「ああ国広!」
「なんだ?」
すぐ横から返事があった。
「え!?」
驚く。まんばがそこにいた。
「え!?え!?うそ、幽霊じゃないよね??」
「いや、俺も何が何だか」
まんばは重傷ところか、無傷。ケロっとしてる。
「それよりも、長義が大怪我してて、早く治してほしい!」
「え!?あ、そうだよね、わかった!」

手入れが済む。まんばは長義のそばについていて、心配そうに見てる。長義はまだ眠ったままで、意識はない。
「国広、どういうことなのか説明してほしいんだけど
「俺もよくわからないんだ。やらなきゃって思って刀を振ったんだが、気づいたら無傷でひとりだった。たくさん怪我したはずなのに。敵もいなくなってて、みんなは重傷で倒れてた」
「うーん???」
審神者は腕を組み考える。怪我したのに無傷で帰ってくるとは?
「刀だから」
寝ていたと思っていた長義が言う。長義は起き上がる。
「国広が人間じゃなく刀だからだよ」
「へ?それってどういう?」

「内緒で御守りを持たせた」
「え!」
「あれが発動したに違いない。部隊が敗北したのであれば、検非違使が去った後、時間差で国広が折れたことになる」
「ちょっと待ってよ、うちに御守りなんてないよ。うち貧乏だもん!」
「俺の自腹で買った。心配だったからな」
「自腹!しかも御守り極を!?」
まんばは御守りがなんなのかよくわからないが、長義に助けられた事だけはわかった。そして口ではあんなに厳しいのに、いざとなると守ってくれたり、御守りをくれたり、かなり過保護にされてたことを知る。
(それも、俺が写しだから、か??)

「前から言ってたけど、国広は刀だ、本歌だからわかるよ」
「それ早く言ってよ!」
「感覚的な事だから証拠を出せと言われても何もない。それに政府も感知してると思ってた」
「なんで!?」
「政府も審神者以外の人間が本丸にいると感知できるから」
「え!なんでそれ政府は教えてくれないの!」
「社外秘なんじゃない?」
「適当な回答すぎない!?」
未だに掴めてないまんばに長義が説明してくれる。
「御守りは刀が折れた時、復活させるものだ、それをお前に持たせていた。それが発動したということは、」
まんばはぞっとする。人間で言うタヒだと聞いた。一度タヒんだのか、と思う。
長義がなだめるように頭を撫でてくれる。それだけで安心した。
「じゃあ向こうの世界にいたのは?」
「それは知らない、だけど国広はここの刀だ、それは間違いない」

審神者は長義から言われた話をひとつひとつ整理すると、「政府に報告してくる」と部屋を出て行った。まんばと長義だけになる。

「国広、すまなかったな」
「え!?」
長義に謝られることなど何もないはずだとまんばは思う。むしろ感謝したいくらいなのに。
「守ると大口叩いておきながら、このザマだ」
「でも、長義はたくさん庇ってくれたし、御守りまで持たせてくれた!こうなったのは、俺に覚悟がなかった所為だ、戦う覚悟が……
「しかしお前は刀とは言え、平和な世界で育った。こういうことに抵抗があって当たり前だ。それはわかっていた。しかし刀である以上、戦いは避けられない。
人間などと報告したら政府が刀だと証明するために何からの手段を取ることは危惧していた。政府は恐らく、怪我したお前を手入れで直すことで、刀であると証明したかったんだろう。予想外に危険な出陣となったが」
長義はそこまで話し終えると息を吐く。
長義がまんばの頬を撫でる。つらそうに見つめる。
「無事で良かった」
まんばはカッとなった。頬が熱い。
「お前が折れたと知った時、後悔した。俺がもっと強ければ、危険な目に遭わせずに済んだかもしれないのに。検非違使さえも薙ぎ払う、強さが。御守りだって持たせてはいたが、不安で仕方なかった
まんばは首を振る。
「折れたのが、俺でよかった」
まんばは長義を見てられなくて、目を伏せる。
「本当は長義が御守りを持つことだってできたんだ。それを俺なんかに渡して……。あんたが折れてたらどうするつもりだったんだ!俺はあんたが折れることの方が怖い
まんばは強引に長義の布団の中に引きずり込まれる。
「国広、そんなことを言うと閉じ込めて、一切出陣できないようにしてしまうよ?他の本丸でのお前は出陣が生きがいのように過ごしている。お前もいずれそんな気持ちになるかもしれない。だけど俺はお前が傷つくなんて耐えられないから、大事にしまっておきたいんだ。だから折れて良かったなんて、言うな」
まんばは困った顔をする。だってまんばにとっては長義が折れることの方がつらい。長義もそう思ってくれてるなら、お互いにそう思うだけではダメなのだろうか。なぜまんばだけが庇護下に置かれる立場なのだろうか。

「俺は長義のことを守れるようになりたい。長義が怪我するところなんて見たくない。あんたが倒れたのだって、心臓が止まるかと思った」
「それは俺の方が強く思ってるよ」
「いや、俺の方が!」
………やめよう、埒があかない」
言い合いになりかけたのを長義が止めた。沈黙が落ちる。

「少し、眠くなってきた
「え、あ、病み上がりだから。すまない、すぐに出て行く
まんばは布団から抜け出そうとしたが、長義に抱き込まれた。
「ちょ!」
「うるさい、責任とってお前も付き合え」
「何の責任だ!」
「あー大声出されると怪我に響くな」
「怪我は全て治したって審神者が言ってたぞ!」
「バレたか
「そこまで鈍くない!」
「お前がそばにいないと怖くてゆっくり眠れない。俺の寝てる間に出陣してないか、折れてないか、心配でおちおち寝てられるか。大人しく腕の中にいろ」
まんばはなんだこの過保護はと思ったが、一応病人(?)なんだし、今日だけは従うか、と抵抗をやめた。

長義は居心地が良い位置を探し、まんばを改めて抱き込んで本当に寝始めた。まんばも抱き込まれているせいで温かくて、その温かさが眠気を誘い、うとうとしてきて寝てしまった。





ここまでお読みいただきありがとうございました!ここで終わらせてもらいたいと思います!今回かなり長いお話になりすみません、お疲れ様でした!



■どうでもいい設定
・これ以降、長義は過保護を隠すことはしません。審神者に交渉し、まんばの出陣決定権を得ます。殆どまんばは出陣できなくなります。そのことにまんばは途中で気付きますが、(ごにょごにょ)
・作中では、出てきてませんが、まんばの転生のカラクリは鍛刀の失敗です。
発足当初、まんばは本丸の3番目の刀の予定でしたが、審神者が鍛刀を失敗し、別時空に飛ばされてしまいます。そこでまんばは人の子として生まれ、育てられます。(空の腹に刀の付喪神が宿り、さも人間の子のように生まれてきたという設定)
時間の流れの早さが違うため、まんばは17年間、人として生きましたが、本丸時間にすると数ヶ月という。何らかのキッカケで本丸に戻ることができ、今回の話に至ります。ちなみに審神者はこの失敗のことを覚えてません。指摘すると「そんなこともあったような?」と曖昧な返事が返ってきます。
・まんばは常識とか知識とかは人間に近いです。
・長義くんは最初こそ斜に構えてますが、「山姥切の名で顔を売ってない」自分の写しをすぐに気に入りました。表面には出してませんが。
・この本丸は発足数ヶ月の若輩ですが、聚楽第を制圧できる程度の力は持ってます。
・星のシーンで長義くんが無理矢理まんばを座らせるのは、「歩けなさそうだな」って判断したから少し休ませてから、移動させようと思ったため。側から見ると行こうと言ったり座れと言ったり、人を振り回す我儘男になってしまった。(もちろん気遣いはまんばに伝わってない)
・手入れ部屋のシーン、まんばは気づいてませんが、まんば、襲われかけてます。「布団に引きずり込まれた」って表現されてるけど、それは鈍いまんば視点だからその表現であって、第三者視点であれば「押し倒されている」。隣の手入れ部屋には別の刀が寝てます。